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「汝、力を求めるか?」
聞き覚えのある老人の声が優の耳に入る。
「え?」
優は戸惑う。
「汝、力を求めるか?
我に従うのなら……
我が主に力を授ける」
「力を……?」
老人が答える。
力……
優は考える。
力とはなにか。
それは授かるものなのか……
その力を得たらまた暴走しないか。
不安が溢れる。
「もう一度問う。
汝、力を求めるか?」
優は小さく答える。
「いらない。
力は、自分でつける」
「……」
老人の気配が消える。
その瞬間、優の身体が中を舞う。
そして落ちる感触。
ドスン!
その音とともに身体が地面に叩きつけられる。
熱い……
「優大丈夫?
痛いの痛いのとんでけー」
ピノが優の身体を撫でる。
「大丈夫ですか?」
田中が心配そうに優のそばにかけよる。
「痛い……だけど大丈夫です」
優が答える。
「何があったのですか?」
田中の質問に優が答える。
「お爺さんに力を求めるか尋ねられました」
「え?」
「でも、断りました」
それを聞いた田中は優の頭をなでる。
「よくできました」
「よくできましたシールいる?」
ピノもそういってシールを優に貼った。
「どういうことですか?」
「それはフィサフィーの仕業です」
「フィサフィー?」
「貴方が消えてから、現れるまでの時間で得れた情報ではそれに同意した場合。
燃えます」
「え?」
「何人か亡くなりましたね。
亡くなったのでその人が同意したかどうかはわかりませんがね。
燃えた人の生き残りでは、同意しちゃったみたいですね。
そして、力を得た人は案の定暴走してますね。
昔の貴方みたいに……」
田中の言葉に優が疑問をぶつける。
「僕、消えていたのですか?」
「はい。
3日行方不明でした。
ピノは泣いていたのですよ?」
「あ……」
優がピノの方を見る。
「ピノのこと嫌いになったのかと思ったんだからねー」
優は、少しだけ心の何かが明るくなった。
「大丈夫だよ。
僕はピノちゃんのファンだから」
「えへへー」
ピノが小さく笑った。