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27話 騎士と冒険者

 あたし達は迷宮へ向かう街道の入り口で待っている。何を待っているのかと言うと……


 朝一番、あたし達のパーティに、ギルドから冒険者ギルドから召集が掛かったの。で、その要件っていうのが。

「シェンカー辺境伯からお前達『フォートレス』に指名依頼だ。騎士団から何人か見繕うから迷宮探索に同行して色々と教えてやってくれ、だそうだ」

 ギルドマスターのケーニヒさんから直々に言われてしまった。しかも、領主様から指名依頼とか。あたし達のパーティって凄くない!?

「……出来ればお断りしたいのだが」
「ボクも遠慮したいですねぇ……」

 だけど、ウチのお姉さま方は浮かぬ顔。それを見て首を傾げていると、なるほど! と思わせる理由が返ってきた。

「シルト。騎士団というのはエリートの集まりなんだよ。総じてプライドが高い」
「そうそう。他人を見下す傾向が強いし、こっちの言う事を素直に聞いてくれないと思うよ?」

 ふうん? 二人とも騎士さんにはあんまりいい印象がないんだ? でも!

「ケーニヒさん。その依頼はあたし達に『教わりたい』んですよね?」
「あ? ああ」

 あたしの問い掛けに、ケーニヒさんは怪訝な顔をする。

「なら力尽くで言う事聞かせちゃいましょう!」
「ふっ、ふふふ。シルト。君というヤツは」
「ギルマスが責任取ってくれるならボクも力尽くで依頼受けまーす!」

 だってさ、教わる方が態度デカいとか有り得えないでしょ。あたしの方針にはメッサーさんもラーヴァさんも賛成みたいで、途端に表情が嬉々としてきた。

「はぁ……分かった分かった。責任は俺が持つ。だがな、辺境伯は随分いい笑顔だった。おそらく一筋縄じゃいかねえ連中だぞ?」

 あたし達の表情を見たケーニヒさんはそう言うと、やや温くなった紅茶を一息で飲み干した。

「ふん、我々の言う事を聞かずに我を通すなら迷宮で死んでも責任は取らない。それで依頼失敗というならそれも仕方ないな」

 領主様からの指名依頼って結構大事だと思うんだけど、メッサーさんもケーニヒさんも、冒険者の仕事というものを安売りするつもりはないらしい。

「ま、それで構わねえだろ。取り敢えず宜しく頼む」

 ケーニヒさんから言質は取った。それであたし達は依頼を受ける事にした。まあ、相手が領主様でも、『責任を取ってくれるギルドマスター』の事は信頼できるというのもあるわね。

*****

 という事があって、その騎士団の人達を待っているんだけど……待ち合わせの時間を結構過ぎてるのよね。

 あ、あれかな? 女騎士が三人。いかにも騎士っぽい、ガシャガシャと金属音を響かせながら近付いてくる。

「お前達がフォートレスとかいうヤツか? 今回は精々我々の壁となってくれ」

 何この人達! 遅刻してきて態度デカいし! しかもすっごく失礼だし!

「……お前達は誰だ?」

 うっわ、メッサーさん、激おこだよ! 魔力練ってるよ!

「そうそう、時間に遅れて名乗りもせず、『壁になれ』とか頭おかしい人達? 関わりたくないねえ……」

 あちゃー、ラーヴァさんもキテるよ! 一触即発だよ! あ、あたしも挑発しなくちゃダメなのかな!?

「そうそう、失礼な人は嫌いだよ! べーーーだ!」

((シルト……))

 あれ?憐みの視線?

「くっ……いいだろう。冒険者風情が死にたいらしい。やれ!」
「「はっ!」」

 リーダーらしき人の命令で、他の一人が抜剣した。もう一人は弓に矢を番える。
 やる気だね? よーし、気分悪いからちょっと泣かしてやるっ!

 勝負は一瞬だった。

 リーダーらしき人が剣を抜いて斬りかかって来たんで、あたしは盾で受け止め前蹴り。腹を蹴られて吹き飛んで、仰向けになったところを顔面ギリギリを狙ってモーニングスターを叩き込んだ。あちゃあ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃね。やり過ぎたかしら?

 メッサーさんは相手の弓士が放った矢を風魔法で押し返し、さらに弓を切り刻んだ。弓だけ切り刻むって凄いと思うのよね。

 ラーヴァさんの相手は盾持ちの騎士さん。ラーヴァさんの炎を纏わせた大剣は相手の盾をバターの如く切裂いてしまい相手は戦意喪失だ。

「三人共そこに座れ」

メッサーさんの氷点下の一言で三人の騎士は綺麗に正座した。

「言い忘れていたが、私達は冒険者ギルド所属の2級パーティ『フォートレス』。リーダーの1級冒険者、魔法使いのメッサーだ」

「……切裂き魔!!」
「ボクは3級冒険者、魔法剣士のラーヴァだよ!」
「……火葬屋!!」
「あたしはタンクで3級冒険者のシルトです!」
「……星球撲殺少女!!」
「「「……」」」

 騎士団にまで不本意な異名が広まっている事に、あたし達三人は愕然としてしまった。暗い表情で俯くあたし達に謎のプレッシャーを感じたのか、三人の騎士は土下座した。

「「「申し訳ありませんでした!!」」」

 っていうかね、この人達なってないのよ。そもそも食料や薬品、寝袋やその他消耗品、何にも持ってきてない。その事についてまたメッサーさんが雷を落として街に買いに戻らせた訳。そしたら保存食じゃなくて普通の食料買って来てまたメッサーさんがダメ出し。

「ふう……あのまま迷宮の中に置いて帰りたい……」

 メッサーさんが弱音を吐いた!

「重ね重ね申し訳ありませんでした。私が小隊長のアインです。剣士です」
「私は重装騎士のリャンです」
「私は弓士のミィです」
「「「宜しくご指導お願い致します!」」」

 漸く準備が整って、騎士さん達が自己紹介を始めた。
 なるほど、きっと縦割り社会なのね。上下関係をはっきりさせてやれば素直になるんだ。

「貴殿らは冒険者のやり方を学びに来たのだろう? 進みながら基本を話すから頭に叩き込んでくれ」
「「「はい!」」」

 三人共、今年見習いから昇格したばかりの新人騎士で、いずれも貴族や騎士の家系だそうだ。同期の中では出世頭の三人はちょっとばかし天狗になっていたようで、いい薬になったと言ってたわね。

「メッサーさん。十匹います」

 多分ゴブリンとかコボルトとか、その辺かな。魔力が視える。

「ではアイン隊長。私達の戦いを見ていてくれ」

 まずはお手本って事で、あたし達が対応して見せる事にする。しかし、敵の数の多さにアインさんが心配そうな顔だわね。

「し、しかし敵は十匹……」
「問題ない。行くぞシルト!ラーヴァ!」

 だけど、メッサーさんはそんなアインさんの言葉を一蹴し、号令をかけた。

「「はいっ!」」

 敵はコボルト。率いてるのは上位種のコボルトナイトね。よおし! 騎士のお姉さんたち、見てなさいよ! 冒険者の戦い方ってものを見せてあげる!
 

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