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第44話 蟻のままに、ハーグ・ワン 「冷たい方程式」ていうか「冷たくていい方程式」

 氷だけで出来上がった山。まるで永久凍土の上に出来た氷山だった。その一部を削って作った氷の城が中腹に聳え立っている。それは1ダースベイゴマの巨大なガスマスクの顔を基本デザインに、幾本かの尖塔が建ったアヴァンギャルドな城「氷結城」である。白井雪絵はそのホールに座っていた。
『私は、一体何のために生まれてきたんだろ。白彩で店長に砂糖で作られたけれど、時夫さんの話では、伊都川みさえさんの生き写しで、まるでその身代わりのようだった。どういういきさつだったのか。東京には本物のみさえさんが居る……。だとしたら私は、時夫さんにとって一体何なんだろう』
 雪絵は、城内を自由に行き来することが出来た。全てが冷製の食事も出されている。なかなか美味しいのだが、石川うさぎが作ってくれた鍋のように、身体を温めてくれるものはない。そして城の外には出られない。雪絵は囚われの身、ここは凍りついた牢獄なのだ。
『……このまま地下へと連れて行かれて、サリー女王に捕まってしまったら、恋文町はサリー女王の思い通りになってしまう。皆が楽しく暮らしてた町が、永久に失われる! ありすさんも、うさぎさんも、時夫さんも、私を助けようとして今、一所懸命がんばっている。いつもいつも、私、皆に迷惑をかけてばかり』
 その事を考えると、雪絵は居ても立っても居られなかった。
『アパートでは、あんなに張り切ってたのに、いざっていうと何も出来ない』
 だが、ダークスター国はどういうつもりだろうか、雪絵のポップコーン機関銃をそのままにしていたので、それは今でも雪絵の手元にあった。おそらく、定刻軍のバンバン人たちは、茸人ではないにしろ、それに類する者たちなのでところどころ抜けているのだ。1ダースベイゴマにしたところで送水口ヘッドと同様かもしれなかった。
 この機関銃こそ、雪絵の中に唯一眠った炎、情熱の象徴だった。いつか、あの黒い兵隊達が雪絵を地下へと連行する時がやってくる。ここはつかの間の牢獄に過ぎないのだ。それを、ただ刻々と待っていていいのか。いいはずはない。
 ザッザッザッと足音がしている。回廊を、あの黒装の兵士たちが隊列を組んで歩いてくる音だ。
『バフンウニ♪ バフンウニ♪ バフンウニマンヂュウ♪』
 変な歌を輪唱している。間近に見る彼らは、全員が黒いガスマスクをつけ、まるで蟻んこか何かを髣髴とさせた。彼らの会話によれば、「ダークトゥルーパー」という名称らしい。
「……いけない。こんなんじゃ! 私は……私は」
 雪絵はすっと立ち上がった。幸い、白井雪絵にとってこの国は寒くもなんともなかった。いいや、そうではない。雪絵にとって寒さは障害ではなかった。逆に生き生きとして、自分に活力を与える気がする。スネークマンションに入る前、寒さで凍えていたわけではない。ただただ、体力を消耗していただけだった。だが、今は違う。その白魚のような右手には、ポップコーン機関銃がしっかりと握られている。
「蟻の~~、ままに~~ッ!」
 雪絵は大声で突然歌い出した。雪絵作曲「蟻のままに」のロックVerである。片手にマシンガン、片手を広げてくるくるろホールを踊る。その動きに、ダークスターの兵士達はビクッとなってホールに入る手前で固まっている。
 ガチャ! スチャ!
 雪絵はポップコーン機関銃を肩の高さに据え、兵士たちに向けて発射した。
 ドドドドドド!!!
 機関銃の中でトウモロコシが弾け、アツアツのポップコーンが空中に飛び出していった。すると兵士たちは一斉に飛び上がり、ガスマスクの口の部分がパッと開いて、宙を浮くポップコーンに喰らいついていった。途端にバターのように溶けて、床面に広がっていく。その後も、後ろから後ろから兵士たちが現れては、弾けるポップコーンめがけて殺到していった。そうして、熱いポップコーンを食べた途端に彼らは溶けていった。このために、ポップコーンはアツアツの出来たてじゃないと駄目なのだ。そしてポップコーン機関銃は出来たてのポップコーンを製造できるのだ。瞬く間にホールに立つ雪絵の足元には溶けたバター、そこへ蟻んこ達が群がっていった。雪絵はポップコーンを撃ちまくりながら、城の中を走り、やがて外へと出て行った。
「蟻の~~、ままに~~ッ!」
 城外は蟻のような兵士達が続々群れを成していたが、雪絵のポップコーンマシンガンの勢いは止まらない。彼らは順にポップコーンを食べ、蟻に戻っていった。やはりダークトゥルーパーの正体は、蟻だったらしい。
「蟻の~~、ままに~~ッ!」

「雪絵、一体どこにいる」
 時夫は雪原をふらつきながら、すでに自分の身を心配せねばならなかった。寒さで凍え死ぬ寸前だ。今までは廃屋となった建物を一軒一軒しらみつぶしに探し、辛うじて残されていた暖房器具で暖を取っては先に進んだ。時折、建屋内に食べ物が残されていたが、それらはどれも冷たいものばかりだった。途中キタキツネを見かけ「ル~ルルルル……」と呼びかけるも無視される。本物のキタキツネは呼びかけても来ないのだ。そのキツネも、ホワイトアウトで消えうせる。一体ここは何処なんだ? この辺も元は恋文町の隣町の足留町のはずなのだが、建物の数はなぜか激減し、それも崩れかけていて、ほとんどが雪原化している。住宅街は存在しない。理由は不明だが、地平線に不気味に浮かんだ黒い衛星ダークスター。きっとアレのせいだろう。今宵、「月夜見亭」からもこれが浮かんで見えるだろうか。いや、黒いから見えないか、などとどうでもいいことを考えていると、時夫は眠くなってきた。……イカン! 寝ちゃいかん! 死んでしまう!
「雪絵……」
 フォーンフォーン。聞き慣れない音が頭上から響いてくる。奇怪な音にたたき起こされ、一命を取り留めた時夫がむっくりと上体を起こすと、上空にホバーボート、いやドローン、いいや正しくUFOの編隊が出現した。それらは空中に停止すると、中からダークスターの兵士達が光るエレベーターに乗ってぞろぞろと降りてきた。まるで蟻んこだな、コイツらは。そんな事をぼんやりと考えながら、時夫は腰のライトセーバー誘導棒を構え、スイッチを押す。……やっぱり何も出てこない。
『バフンウニ♪ バフンウニ♪ バフンウニマンヂュウ♪』
 なんなんだその歌は。
 時夫はたちまち捕まった。ジェダイでもない限り、こいつはやはり使えないんだ。クソッ。警備員が使えたのだから、ひょっとして使えるようになっているんじゃないかと期待した自分に腹が立つ。所詮、科術使いでもなんでもない自分が、たった一人で雪絵を救いに行くなんて、無理・無茶・無謀の三拍子だったんだ。ありす……助けてくれ。無論、ウーでもいい……。おーい。
「キサマ、地球人だな。こんな所で何をしている。外出は禁ずるという命令が出ているはずだ!」
 どーせ茸人か何かのくせして、うるさい奴らだ。フン。
「答えろ地球人!」
「あぁ答えてやるとも! お前らがやってることは、真夏の炎天下気温35度にネクタイ締めてスーツ着てる慣習奴隷のサラリーマンと何ら変わらん!」
「黙れ地球人、外出は禁ずるという命令が出ているはずだ!」
 オウム返し。こりゃー駄目だ。プログラムされた事を反芻するだけのやつ等を相手に悪態ついても無駄にエネルギーを消耗するだけである。
「怪しき奴。やむをえん。死んでもらう」
 黒い兵士たちは、一斉に銃を構えた。くそっ。
 ドドドドドド。
 機関銃の音がして、時夫は目を瞑った。……身体は何ともない。
「蟻の~~、ままに~~ッ!」
 ドドドドド、ズドドドドド……!
 目を開けると兵士達が飛び上がって、宙に浮かんだポップコーンを食っている最中だった。ポップコーン機関銃かッ! 雪絵! しかも連中は喰ったそばからバターのように溶けて、黄色い油染みが雪の上に広がっていく。いや、よくよく見ると足元に蟻が群がっている。そうしてダークトゥルーパー達が全滅した雪原に、マシンガンを構えた雪絵がすらっと立っていた。
「カ・イ・カ・ン……」
 雪絵かわいいよ雪絵。
「時夫さん!」
 エンダァアアアアー! ホイットニー・ヒューストンの「I will always love you」がどっかから流れ出す。
 二人は抱き合った。すると、今度は周囲の雪が一斉に溶け出したので二人は驚いた。
「時夫さん、彼らは、温かいものが食べたいだけなんです」
 身体を離した雪絵はにっこりとした。
「何だって? しかし、この国の食べ物は皆冷たかったぞ」
 そのお陰で時夫は体調を崩した。
「……そうなんです。だからそれしか知らないんですヨ。でも本心では、あったかいものが食べたいだけだったんです」
 雪絵は生き生きとしている。そのスベスベの肌はいっそう白い。
「……へ?」
「つまりですね、知らないだけなんです。作り方も分からない。それが生まれて初めて、機関銃から出てきた出来たての温かいポップコーンを食べた。それで、美味しくて美味しくて溶けてしまったんです。本来の蟻の姿に戻ってしまうまでに」
 というよりも、時夫には食べる前からポップコーンに向かっていったようにも見えたが。それだけ、温かいものに飢えているのだろうか。蟻んこが本能的に甘いものに群がるように、彼らは温かいものを欲しているのだ。
「雪絵、君は大丈夫だったのか? 随分元気そうだ」
 こんなに元気そうな白井雪絵は見たことがなかった。
「はい。ここに来て……私、雪とか氷とか全然平気な自分に気づきました。寒くても、冷たくてもちっとも辛くない。それで私、もう自分を偽るの止めたんです。本当の自分に目覚めたっていうか、私、そんな気がします!」
 雪絵はまるで後光が差してるような笑顔だ。つまりこれは意味論か。雪のように白い肌を持つ雪絵は、雪の中で本当の自分に出会い、目覚め、そしてまさに力を発揮し出したのだ。このショバは時夫やありす達、もちろん他の人間にとっては地獄そのものだが、雪絵にとってはいわゆる水を得た魚状態。しかも、彼女の持つ機関銃からはポップコーンが無尽蔵に湧き出し、枯渇する事さえないのだという。いつの間にか、一人前の、一流の科術使いになっていた雪絵だった。
「本当に、無事で良かった。俺はてっきり、もう君が地下に連れ去られたのかと思って。きっとありす達が俺達を探してる。さ、帰ろう」
「はい。でも時夫さん、あのダークスター。私、氷の城に閉じ込められて、脱出したときに知ったんです。敵の将校達が話していました」
「将校?」
「私は城を脱出する際に、ちょっとですね、私、スパイみたいな事をしてたんですヨ」
 雪絵はいたずらっ子のように笑った。
 雪絵によると、定刻軍は午後に食事の時間があるそうだ。定刻軍は食事の時間にパタッと動きを止める。食事の後はシェスタ(昼寝)の時間である。時間厳守の彼らは「PM」(午後)のどこかで必ずそのルーチンに入る訳だが、そこで雪絵の持っていたポップコーンマシンガンが偶然、略して「PM」だった。つまり、定刻軍は「PM」(ポップコーンマシンガン)の働きによって、食事を採る時間が来たと思い込み、とっさに口にした。その事で彼らはその美味しさを知って溶けてしまったというのだ。それはある意味で、シェスタ時間で寝てしまうようなものだったのかもしれない。まさに意味論。そうして雪絵はポップコーン機関銃を使って敵をバッタバッタとなぎ倒していった。結論として、バンバン人はポップコーンが大好きなのだった。
「ダークトゥルーパー達は、『バフンウニマンヂュウ♪』という歌を唄っていました」
「あっ、さっき唄ってた」
「諏訪湖のお菓子です。きっと、おそらく彼らの正体は、バフンウニまんじゅうに群がった蟻だったんです」
(なんだそりゃ……)
 菓子本舗「白彩」に勤めていた雪絵は、それが諏訪湖の名物だと直ちに察した。もはや何でも蟻である。
 それから雪絵は、氷結城を脱出する途中、お菓子の製造工場を見たという。生産ラインに載った箱の銘柄を確認すると「白っぽい恋人」というお菓子だった。バンバン人たちは「白っぽい恋人」をばら撒くことで、自分たちの冷えた味を広めようとしているのだろうか。……「白っぽい恋人」? 前にありすが買ってきたお土産じゃないか!
「で、その将校というのは?」
「一人は私を連れ去った、1ダースベイゴマです」
 時夫はやっかいなヤロウの存在を思い出していた。アイツかッ。相変わらず、時夫はライトセーバーを使えない。さらに雪絵は、重要な情報を語った。
「あの、空に浮かんでる黒い衛星。バンバン人は、あれが完成したから地球に乗り込んできたんです。ダークスターは、この世界を一瞬にして氷一色に変えてしまう氷結光線を発射する最終兵器です。北側が氷結してしまったのは、最初の一撃の影響です。きっと次の一撃で、世界は凍りつくでしょう。そうなったら地球はスノーボールアースです。今は停戦しているから稼動していませんが、もし私が逃げたと知ったら、いつ発射するか分かりません。そうなれば、恋文町はもちろん、全てが氷の世界に閉ざされてしまいます」
「なんだって……」
 身動きが取れないとはこのことだ。もう、この氷と雪に閉ざされた極寒の世界に居座るのは命に関わるし、正直、一瞬でもご免こうむりたいのだが。
「ですから脱出してありすさんたちと合流する前に、私たちで、あの最終兵器の秘密を探りましょう。あの兵器の弱点を見つけ出して、ありすさんたちの科術で破壊してもらうんです」
 まさか白井雪絵からそんな言葉が出てくるとは。しかし時夫には、何の力もない。それに、それに寒いんだ。雪絵……君は何だか寒いところだと元気だ。助けに来たはずなのに、俺が助けられている気がする。助けてもらった上に、雪絵がこんなに勇気を貰って、逃げようなんて時夫はもう言えない。
「俺たちで、アレの弱点を盗み出すだって? そんな、スターウォーズみたいな話じゃないか。一体どうやって」
 もしかすると、「スターウォーズ」の意味論が働き出しているのかもしれないと、時夫は次第に気づき始めていた。
「だけど、俺はもう寒さで凍えそうなんだ。……君は逆に元気そうだけど」
「大丈夫です、大丈夫です。私が居ますから!」
 雪絵はマシンガンをガシャンと雪の上におろして、両手を拳にして上下に振った。雪絵はその白い両手を時夫の手に差し伸べた。そうして、パッと腕を広げて抱きついた。たちまち、時夫は懐炉を十個もつけたように温かくなってくる。瞬く間に周囲の雪絵が再び溶け出した。
「これは……」
「はい。私達がハグで一つになれば、氷に閉ざされた世界が一気に溶けていく。名づけて、『ハーグ・ワン作戦』です。大丈夫です、私が時夫さんを守りますから! それに私には、ポップコーン機関銃がありますし!」
 雪絵はスチャっと天に向かってマシンガンを構えて、観音のようにまた微笑んだ。科術は使えなくても、意味論は二人に味方するだろう。
「時夫さん、フォースと共に」
 雪絵は寒ければ寒いほど、強くなる。ありのままに、雪絵は彼女らしくなっていく。それでも雪絵は、時夫のためにハグして体温を上昇させ、二人で周囲の雪まで溶かす。そうしないと時夫が死んでしまうからだ。しかし二人でハグしすぎると、今度は温かくなる事で雪絵のパワーは減少し、ピンチに陥る。冷たい方程式だ。……いいや、冷たくていいのだ。なぜなら雪絵は冷たい方がいいからだ!
「この敵のUFOを使って」
「飛ぶのか?」
「いいえ、さすがに操縦はできません。でも、恋文町のありすさんに電波を飛ばしてバンバン人が侵略してきた真意を伝えたいと思います」

「ブワクショィッッ!! ア”ーコンチキショウバッキャローイィ!!」
 ありすがコンボイのカウンターでくしゃみをした。店長とウーがびっくりして、ありすの顔をまじまじと見ている。
「だ、誰かがあたしの噂をしてるようね……」
 おじさんじゃないんだから。
「ありすちゃん……ちょっと訊きたいんだけど?」
 ウーがかしこまって聞いた。相変わらずJ隊は八十年代洋楽を流している。
「何ィ?」
 ありすはお茶を飲んでいる。
「門と蔵にさ、『白っぽい恋人』ってのが売ってたよね。ありすちゃん、買ってこなかった」
「……偶然よ。たまたまうろついてたら売ってただけ。別に、ダークスター国の占領地に行った訳じゃないわよ。あ、茶柱」
 ありすの言い分によると、町を脱出しようとしたありすは、コンビニで購入したという。要するにそれが正しいなら、「白っぽい恋人」は、バンバン人がCBA48度線を越えてばら撒いている侵略菓子であるということだ。
「何やら、CBA48度線の向こう側が騒々しい。何かあったのかもしれません」
 二階に行ったきりだった小林カツヲが、一階のカウンターに座るありす達のところへ戻ってきた。
「ひょっとして、金時君たちかもしれない。て事は、二人はまだ無事?」
 J隊のフードトラックのカウンターで、小林カツヲが叫んだ。
「気になる電波を拾いました! ノイズでしょうか、敵の放送の中に、おかしな情報が紛れ込んでいます。かすかですが女性の声で、『ハーグワン、ハーグワン、こちらハーグワン。バンバン人はあったかいものを食べたくて、地球を侵略してきた』とか」
「あっそうか……うかつだった。軍事境界線のCBA48(シービーエーフォーティーエイト)度線、嘘とまことがひっくり返っている。つまりやつ等の放送は嘘だったんだ! やつらは、ずっとあったかい料理が欲しいって言ってたんだ。それが、境界線を境に意図せずひっくり返って、ずっとホットな料理をディスる内容になっていた。それがたまたま、何の拍子か嘘にひっくり返らずに、ホントのまんま流れてきたんだよ。たぶん、雪絵さんたちが放送しているせいなんじゃないかな?」
 ありすのひらめきに、ウーは「その通りだよ!」と賛同したが、小林店長はまだポカンとしている。ハーグワンが何だか分からないが、おそらく雪絵は自分の正体を隠して連絡している。事実はありすの言った通り。時夫と雪絵の「ハーグワン」により、辺りを溶かしながら電波を飛ばしていることで、奇跡的にひっくり返らなかったのである。さらに通信では「バンバン人は午後に食事の時間がある。食事の際には、動きを止める」と続いていた。
「雪絵さんはきっと生きてる! もしかすると金時君も。店長! 反撃作戦をひらめいたわ。私も作戦に参加する」
 カウンター席からガタッと立ち上がったありすの瞳がキラッキラに輝いている。

 地平線に浮かんだ最終破壊兵器ダークスターは地球を殲滅すべく、その時を待っていた。その設計図を入手する「ハーグワン」作戦を実行するのは、科術を使えない時夫と雪絵だった。一方、J隊とありす達はCBA48度線を出て、大攻勢に転じようとしていた。いよいよ、地球人側の反撃が開始されようとしていた。

しおり