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初デートと、仲の良かった姉妹・5

「さーて、正体がすっかりバレてしまった所で、洗いざらい話してもらいましょうか」

 何やら楽しそうに、工場長がそう口を開く。

「個人的に一番気になるのは、”遊精の風”の目的かしら」
「ふん、既に公言してる通りだ、人間に不当な扱いを受けている遊精の解放、それが我々の行動目的」

 全て諦めたのか、部長は急に饒舌になった。

「それにしては擬態といえ遊精を爆発したり、やってることがちぐはぐじゃない?」
「そ、それは」

 どうやら部長自身も、組織のやり方に疑問を感じているようだった。

「普通にケドコの繋がりも疑ったけど、流石に自分の首を絞めるような馬鹿な経営者ではないと信じたいわ」

 信じたいと言う事は、工場長的に少しは疑ってるということか。ボク的には100%怪しいと思うけどね。

「あとは 音音(ネオン)の事だから異世界人がらみ?」

 えっ、異世界から来た人ってユーさんだけが例外じゃないの?

「いっぱいいるわよ?そして大概はチート能力持ちだから、この世界の政治や歴史にガッチガチに絡んでるし」

 と言う事は、まさか工場長も?

「あー違う違う。
 私は別の種類のチートと言うか、とにかく秘密よ。聞きたいなら、もっと親密度を上げてくれなくちゃだわ」

 茶化した口調で工場長が言うが。

"そろそろ話してやっても良くないのか、秘密は信頼関係を阻害する"

 何処からともなくそんな声が、周囲に響き渡る。見回しても、周囲には誰もいない。
 加工された機械的なその音声は、性別はおろか年齢すら判別出来ない。

「秘密の塊みたいなアンタがそれをいうのかしら?
 "遊精の風"リーダー、 尼岸音音(ニキシネオン)さん?」

 この声の主が?と言う事は姿が見えないのは何らかの神具か、それとも特殊能力か。
 それにしても、どういう知り合いなんだろう。たしか銀さんにも縁があると聞いた記憶があるが。

「ただの同級生よ、父と銀さんの」
"そうやってまた、君は真相を隠そうとする。普通の人の行ける学校ではないぞ、あそこは"
「チッ、余計な事を」

 ネオンの言葉に工場長が毒づく。
 しかし申し訳ないが、このまま争わせた方が工場長の秘密を色々聞けそうな……

「で、うちの社員誑かして今度は何を企んでるわけ?
 別に居場所が分からなくても、痛い目に合わせることはできるのよ?」
"確かに君なら可能だろうな、おお怖い怖い"

 工場長の脅しに、ネオンは (おど)けたような声を出す。

"珍しい社員を雇ったと聞いたのでな、今回は挨拶だけだ"
「随分なご挨拶だったわね、後で利子と 熨斗(のし)をつけて返さなきゃだわ。そして出来れば、今後は関わりたくないのだけど」
"常に刺激を欲しがってる性格の癖に、良く言う"
「今度うちの社員に手を出したらタダじゃ置かないって言ってるの、察しろ!!」

 工場長が声を荒げる。確かにこの人マイペースで掴み所ないけど、情に (あつ)いところ、あるかな。

"ふむ、ではそろそろ失礼する"

 唐突にネオンは会話を終わらせようとするが、

"せっかくだから、そこの社員さんたちにヒントを置いていこうか。
 ではご機嫌よう、姫様"
「ちょっ!」

 工場長が声をあげる。

「それヒントじゃなくて、殆ど答えじゃないの!って、あ……」

 工場長の言葉に、異世界人のユーさんだけが首をひねるが、でもそれ以外の人間には「わかってしまった」。

 確かにそれなら、名前を今まで明かさない理由も分かる。そもそも名前がない、その必要がないから。
 神具を使うのを見ない理由も同じ。能力の使用に、神具を使う必要がないから。
 無駄に高い 能力(スペック)も気位の高い性格も、全てが腑に落ちる。

 それがこの国の実質の実権を握る、帝一族。そして彼女は恐らく、いや間違いなくその姫君だ。

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