初デートと、仲の良かった姉妹・3
爆発、爆発、爆発!
店内にはボクら以外にも数人のお客や従業員がいたが、突然の店内の爆発と、それを引き起こした遊精に対して大混乱となっていた。
そして絶望的なのは、歌姫の水木朋?それともナマリさん似の亡くなった妹さん?まあ、どっちでも良いか、とにかく彼女そっくりのその遊精の爆発したのはほんの一部。
まだ多くの爆発危険物が残っているどころか、更にその数が増えている気がする。
この量じゃ仮に、ユーさんの神具"白虎"で一つ一つ消していっても、全滅させるのは精神力が持たなそうだ。
「そこでユーちゃん、例のアレを。
特訓の成果を見せるときよ!」
工場長が声高らかにそう言うが、いつの間に特訓なんて……ってまあ、ユーさんがうちの会社来てもう2ヶ月立ってるからね。
そしてその言葉に呼応するように、ユーさんの体から鎖が伸びて、遊精たちを拘束した。
「ええっと、それこの間会った不良のシュウが使ってた、鎖の神具っスよね」
とメッキくん。ああ、通りで見覚えがあると思ったら。
「ユーちゃんの"開発者"は、神具を消すだけじゃないの。むしろこうやってて神具を生み出すのが真骨頂」
まるで自分の事のように得意気に、工場長が語る。
「今はまだ、見たことある神具しか産み出せないけどね」
えっそれ、今後は見たことない神具も出せるって伏線ですか?いやそれはそれで楽しみだけども。
そして拘束されひとかたまりになった遊精は1個と認識されるのか、絡まったその鎖ごと消滅した。
その場で混乱していた被害者、お客や店員にようやく安堵の表情が戻ったが、まだだ、発生源を抑えなければ解決したとは……
「うん、そうなんだけど。あれ」
と、工場長が天井の排気穴を指差す。するとそこに、穴のフチに服が引っ掛かってもがいてる遊精が一匹。何というか、いじらしくかわいくも感じる。
それにしても毎回思うが、何なんだろう、この工場長の洞察力。
「大した事はないわ、猫使いの経験から、貴方たちより見えない物が見えるってだけ」
そう工場長は言うが、ボクは一度も彼女が"猫"を取り出して使った現場を見たことがないんだよねえ。
まさか、馬鹿には見えない神具とか。
工場長はそれには答えず、ユーさんに指示して、その遊精を鎖で捕まえようとした。
と、手元が狂ってちょうど引っ掛かってた遊精の服部分に命中、身動き出来るようになった小さな爆発魔は、そのまま排気穴の中に逃げ込んだ。
「わ、外したっス!」
声をあげるメッキくんに、
「いや、あれはわざと外して後を追いかけさせる意図だ。そうだべ?工場長、ユーさん」
「ナマリちゃん、良くわかったわね、その通りよ」
工場長が感心する。
その証拠に一旦狙いを外したと思われた鎖が、今度は排気穴の中に潜り込んでいた。
「ふふーん、愛の力は偉大だべ」
ニンマリとナマリさんが笑う。
「さっ、そうと決まれば犯人を捕まえに行くだよ!そしてユーさん、終わったらさっきの続き聞かせて貰うだべ!」
そう声をあげるナマリさんに、ユーさんはやれやれと苦笑した。