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初デートと、仲の悪い姉弟・後編

「もう止めましょうよシュウさん」

 それまで黙っていたスズちゃんの弟、(アキラ)くんが声をあげた。

「アキラてめえ、先輩に意見すんのか」
「姉ちゃんに手を出されたら流石に黙ってられないです。
 ここは一旦退きましょう」
「ほほう、姉想いの良い弟じゃねぇか。ーーだがなっ!」

 神具の鎖が、弟にも絡み付く。

「ぐっ……シュウさん、どうして」
「ここまでコケにされて、黙ってられっかよぉ」

「外道が」

 吐き捨てるようにメッキくんが言う。

「何とでもホザキヤガレ。ゲヘヘ、これで形勢逆転だ。
 さー、伝説の番長様に何をしてもらおうかな」

 と余裕綽々の不良シュウの顔が、次の瞬間青ざめる。

「おっおい、一体何をしたぁ!?」

 鎖の神具が砂のように崩れ、消滅したのだ。
 ちなみにメッキくんは何もしていない。やったのは当然……

「いやー、ユーちゃん連れて来て正解だったわ」

 と、工場長。
 そう、神具を消滅させるユーさんの神具、白虎がその能力を発揮したのだ。
 まさか工場長、こうなる事を見越してユーさんを?

「たまたまよ、たまたま」

 などと工場長は言ってるが、これ絶対問題起きるの想定の上での人選だな。

「良く解らないが、どうやら切り札の神具は無くなったみてェだなァ」
「えっ、あっあの……」
「なら俺も神具なしで相手してやんよ。ただし、手加減は一切しねぇがなァ!」

 そう言うとメッキくんは渾身の力で相手を蹴る!
 倒れかけた体を、もう一方の足で蹴る!
 更に蹴る!
 蹴る!蹴る!

 蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る
蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る
蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る
蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る
蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る
蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る
蹴るッ!

 数分後、ボロ雑巾のようになった不良のシュウの姿がそこにあった。

「あわわわわわわ……」

 一人取り残され、その場に尻餅をつくスズちゃんの弟。

「さて彼の始末をどうするっスかね、工場長!」
「気づいてたんなら早く言いなさい」
「気配の存在感、大きいからすぐ分かるんスよ……ってああ、あんたらもいたんスね」

 わらわらと物影から出たボクらに、メッキくんは軽く驚いた様子だった。
 工場長の気配は他がかすむくらいなのか……まあ、確かに存在感ならそうだよな。

「ええと、アキラちゃんだったっけ、スズちゃんの弟さん」
「あっはい」

 工場長の前で丹くんは、借りてきた猫のように大人しくなった。
 そりゃ伝説の番長も一目おく相手から話しかけてこられたら、そうなるわな。

「あなたは、お姉ちゃんが好きな人を知っていて、その背中を追いかけてこの高校に入った。合ってるかしら?」
「はい、そうです」

「そうなのっ?!だってアキラ、私にはそんな事一言も」

 初めて聞く話に驚くスズちゃん。

「だって姉ちゃん毎日のようにその人の話してたじゃんかよ!嫌でも気になるだろ」
「……えっ私、そんなに話してた?」
「自覚なしかよ!」

 怒る丹くん、真っ赤な顔のスズちゃん、そんな二人に困り顔のメッキくん。

「さてアキラちゃん、ここからはビジネスの話だけど……」

 そして空気も流れも全く読まずに、工場長が口を開いた。

   ↑ → ↓ ←

 工場長の、丹くんへの職場へのお誘いは、本人の希望で一旦保留となった。
 と言うかいくら我が社が人手不足といえ、無節操にも程がある。 

 それにしても、今日も色々あった。
 もうお腹いっぱい、だと思っていたのだが。

「ママー、ママー!」

 一同が寮へと戻る途中、会社の入口で、一人の幼女が泣きながら声をあげていた。
 やれやれ、今日はまだ終わらないみたいだ。

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