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19話 ラーヴァと剣

 翌朝、あたし達三人は揃ってギルドへ向かう。

「ちょっ! ダメですよ、ラーヴァさん! 朝ごはん食べたじゃないですか!」
「えええ~? ボク、まだ足りないよ?」
「ちゃんとギルドへ行って、諸々の用事を済ませてお仕事して、その上で報酬貰ってからなら構いませんから今はダメですっ!」

 この食いしん坊ボクッ娘エルフは、とにかく燃費が悪いらしい。屋台にふらふらと誘われるラーヴァさんを無理矢理ギルドまで引き摺って行く。

「おはようございます! 昨日の鑑定結果出てますか?」
「あ、皆さんおはようございます。今準備しますのでお待ちくださいね」

 いつもの受付嬢さんが対応してくれる。いつもこの人なのでこの人しかいないのかと思うけど、実は窓口カウンターはいくつもあって、それぞれのカウンターには専属で受付嬢さんがいるんだって。あたしはいつも入口に近い窓口に行ってるからいつも同じ受付嬢さんが対応してくれるだけって話みたい。

「それじゃあボクは隣の窓口で冒険者登録をしてくるねっ!」

 ラーヴァさんは隣の窓口で冒険者登録っと。

「私はラーヴァさんに付き添うよ。ついでにパーティー加入の手続きもしてしまおう」

 メッサーさんはラーヴァさんに付き添いっと。

「お待たせしました。こちらが素材の買い取り分ですね。解体の手数料は引いてありますのでご了承下さい。そしてこちらがオークニ十匹分の討伐報酬、こちらがオークキングの討伐報酬になります。そしてオークキングの剣と盾、腕輪ですけど、こちらはどうしますか? 買い取りも可能ですけど。それから魔石もですね。オークの魔石はともかく、オークキングの魔石はかなりの貴重品ですので」

 うああ! そんな事言われてもメッサーさんがいないとあたしじゃ判断できませんっっ!

「あの。通常のオークの魔石や素材は買い取りでお願いします。キングの装備品と魔石、素材はメッサーさん達と相談してからでいいですか?」
「ええ、それは構いませんよ。ですが素材の中には時間が経つと劣化してしまう物も多いのでお早目にお願いしますね」
「はぁ~い。有難うございました。ではまた来ます!」
 
 あたしは、ギルド内にある酒場兼食堂兼カフェのテーブルの一つに陣取り、ラーヴァさんの手続きが終わるのを待っていた。まだお子様のあたしはジュースを頼んでチビチビと飲んでいる。
 
「待たせたね。無事に登録と加入申請は済まして来たよ」
「これでボクも正式にお二人の仲間として活動する事になりました。宜しくですよ!」

 晴れやかな表情で戻って来た二人に、さっきのオークキングの装備や素材の件を話すと。

「なるほど。ラーヴァさん。君の魔法鞄にオークキングを丸ごと保管して貰ってもいいかい?」
「はい! 構いませんよ? ボクの鞄の中なら劣化もしませんし。仮に劣化してもシルトさんのスキルで新鮮な状態に戻せそうですけどね!」

 ラーヴァさんの何気ない一言が、またあたしのスキルの可能性を広げちゃった。
 なるほどぉ……そういう使い方もあるのね。ホント、便利だけどヤバいスキルだわ……

「では窓口に行こうか。オークキング絡みの物は全てこちらで引き取ろう」

*****

「へえ……おにいちゃんって『鑑定』スキル持ってたんだぁ」

 あたし達三人は、ギルドを出て鍛冶屋さんに来ている。オークキングの素材で何か作れないかと思ってね!特 にラーヴァさん、オークキングと戦った時に装備品を殆ど無くしちゃったみたいだし。

「ああ、だが鑑定って言ってもいろいろあるみたいでな。俺は装備品しか鑑定できねえんだ。中には人物鑑定出来たり魔物の能力を鑑定出来たりするヤツもいるみたいだ」

 ラーヴァさんの装備の件以外にも、実際にオークキングの装備品をギルドに依頼されて、実際に鑑定したおにいちゃんに詳しく話を聞くために鍛冶屋さんに来てるって訳。

「まずはこの剣だけどな。相当根性が曲がってるヤツが作ったんだろうな。普通の剣として使う場合はまあ上等な部類だ。だがそれだけ。けど、この剣の神髄は魔法を纏わせる事が出来る事にある」
「それはまた……意地の悪い仕様だね。魔法使いが剣を扱うとでも?」

 おにいちゃんの説明に、メッサーさんが呆れたように言う。確かにそうよね。魔法を使うから魔法使いなのであって、魔法使いが剣を使うなんて……いなくは無いだろうけどかなりレアだと思うわ。でも魔法剣士ってカッコいいな。

 ん? なぜかラーヴァさんがこっそりと挙手しているの。

「あの……それ、ボクが使ってもいいですか?」

「「「は!?」」」

 ラーヴァさんみたいな線の細いエルフが剣を? しかもこの剣、オークキングが持ってた時はショートソードに見えたけど、実際に人間が使うとなると大剣サイズなんですが……
 そんなあたし達の視線に耐えかねたのか、ラーヴァさんがおずおずと話し始めた。

「ええっと、ボクってエルフの中じゃかなり異端でして……普通エルフって言ったら風属性魔法と弓が得意でって言うイメージがありません? まあ、実際そうなんですけど、ボクは火属性魔法の適性が高くて。いや、他の属性も使えなくはないんですが……あと、弓のスキルは無いんです。代わりに剣術スキルが有ります」

 ポカーン。
 うん、あたしだけじゃないよ? みんながポカーン。あまりにもエルフのイメージじゃないもん。

「里ではホントにお前エルフかって疑われちゃって。お母さんは不義を疑われて追放されちゃいました。お父さんもお母さんを庇うどころか他のエルフ達と一緒になって……ホントの事は分かりません。でも、ボクは寄ってたかってお母さんを責めたてたエルフが大嫌いなんです。長老……お爺さんも自分の娘であるお母さんを守らなかったし。それでボクは里を飛び出す事にしたんですよ。その時に長老からの手向けが変化の魔法と魔法鞄だったんです」

 ……はっ! 唐突に語られ始めたラーヴァさんの身の上話に全員硬直。そして我に返ったメッサーさんはクールに言い放ったの。

「そういう事情なら我々としては幸運だったな。おかげでラーヴァさんと知り合え、こうして仲間として迎え入れる事が出来たのだからね。その魔法剣はラーヴァさんに使って貰おう。いいかな? シルト」
「はいっ! もちろんですよ!ってか、いいなーいいなー。魔法剣士、カッコイイなー!」
「……撲殺少女もカッコいいじゃねーか」

 やかましい!!

《ボグッ!》

「ぐえっ……」

 おにいちゃんのバーカバーカ!!
 

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