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初デートと、仲の悪い姉弟・中編

「にゅっ、ニューメタル……新しい金属?!あはは」
「何だろう、メッキらしい凄く頭の悪そうな二つ名だべ、ぎゃはは」

 番長の二つ名に笑い転げるボクとナマリさんだったが。

「いや、金属知識に長けた彼らしいネーミングじゃない」

 一人だけが感心したように、そう口にした。

「工場長?」
「ニッケルと鉄の合金で初透磁率の高いパーマロイに、更にクロムを加え展延性を高めたニューメタル。磁気シールドや超伝導量子干渉計 にも使われている……」
「もしもーし、工場長!?」
「でも私ならハードパーマロイか、スーパーマロイって名乗るかな?
 ああ、でもそれだと飽和磁束密度が上がるし、他の元素も付与しないといけないから……」
「ちょっと工場長っ!!聞こえてますかぁー!?」
「――はっ!? ああ、ごめんなさいねアルミちゃん」

 ボクが耳元で大声を出すと、ようやく工場長は我に返った。
 この人、時々自分の世界に行って帰ってこなくなることあるよなあ。

「まぁとにかく、メッキちゃんが金属に凄く詳しいって事」
「それはまあ、知ってますけど」
「あと、向こうも面白い動きになってるみたいね」

 工場長に促され、ボクたちは再び視線をメッキくんたちの方に移動させる。

「にゅ、ニューメタルのニケルだとォ!?」
「ば、馬鹿言うなハッタリだッ!あの伝説の番長が、こんなチャラい男な訳がネェ!!」

 不良たちは動揺していたが、突然現れた伝説の番長に半信半疑といった様子でもあった。

「まぁ、口だけじゃ何とでも言えるよナァ!じゃ、これならどうだッ!」

 そういってメッキくんは、懐から何かを取り出して空中に投げつけた。
 それは二体の、羽の生えた人間。つまり一見すると遊精のようにも見えるが……

「何だその、棒人間のような遊精ッ!馬鹿にしてんのかよォ!」

 不良の一人がそう言ったとおり、遊精のような「何か」は、その手足や羽に至るまで針金のように細く、顔に至っては丸い輪っかであった。二体の唯一の特徴は色で、右側が青、左側が黄色。

「いやまて、聞いたことが有るぞッ。ニューメタルのニケルは……二体の化物みてェな神具を扱うって」

 ちょっとだけ事情通らしい不良の一人が、驚愕しながら口を開く。

「フン、ちったあ知ってるやつがいるみてェだが化物たぁ心外だなッ!
 黄色いのが”力の黒武(パワーのクロム)”、青いのが”素早さの胡張斗(スピードのコバルト)”だッ!!」  

 うわぁ、メッキくんが不良の痛さに中二病の痛さが加わって、とんでもなく痛々しい人になってるよ。ボクなら後で思い出して悶絶したくなるくらいの痛さだ。

「マジ本物なら勝てる気がしねェ!オレぁ抜けるぜっ!!」
「……おっ、オレもっ!!」
「あっ、ちょっと待てこの薄情者ッ!!」

 気がつけば不良の数は、最初の半分くらいになっていた。

「逃げなかったのは褒めてやるがなッ、痛い目見たくなかったら立ち去ったほうが利口じゃネェかい?今後何もしねぇってんなら、この場は見逃してやるぜッ」

 不良達にメッキくんがそう忠告する、が。

「ザケンなゴラァ!!こちとらそんな半端な覚悟で、不良やってる訳じゃネェゾッ!!」
「伝説の番長がナンボのもんじゃぁ!現役引退したロートルにゃ負ける気がしねぇぞ!」

 逆に煽ってしまったらしく、二人程彼に突っ込んできた。
 一人は手に”真っ直ぐな”鉄パイプ、もう一人はナイフを持って。

 ちょ、凶器とか卑怯じゃない!?メッキくんたちは丸腰なんだよ?

「不良に卑怯も何もないわ。それを言うなら、メッキちゃんの神具も反則級だからね」

 と工場長が口にする間もなく、その場で決着がついた。
 何が起こったのか分からないうちに、不良の二人がその場に倒れていたのだ。
 しかも何時の間にそうやったのか、不良の一人が持っていた鉄パイプはグニャグニャに”曲げられ”ていた。人間では到底不可能な怪力で。

 成程、素早さと力を強化する神具、ですか。
 と、それまで黙っていたユーさんが口を開く。

「ご明答。アルミちゃんもナマリちゃんも、それぐらい気づきなさいよ。これだけヒントが出てるんだから」

 工場長がユーさんを褒め、ボクたちには呆れたようにそう口にする。

「フン、粋がってた割にはテンで歯ごたえがネェな、オイ。
 うちの職場の同僚女性の方が、全然強いぞ」

 メッキくんが吐き捨てるように言う。

「ナマリさん、やっぱり……」
「いや別にうち昔女番長だったとか、そういう経歴本当にねえべさ!」
「ナマリちゃんの経歴は私が把握してるわ。信じていいわよ?」

 否定するナマリさんを、工場長が後押しする。

「きゃぁっ!」

 そんな悲鳴があがりボクたちが振り向くと、
 スズさんの体に、何やら鎖のようなものが巻き付いていた。

「テメェ!スズさんに何しやがるッ!」
「へっ、神具には神具ってね。
 おっと、おとなしくしねぇとこの鎖が大事な女の体を引きちぎるぜ?」

 形勢逆転とばかりに、不良の一人が悪い笑みを浮かべた。

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