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1、いよいよ、暗黒破壊神たる俺様の伝説が始まるのだな!

 さて、これでもうここに籠っている必要はないわけだな。レベルも上がりにくくなったし、とっとと外の世界に繰り出しますか!

「いよいよ、暗黒破壊神たる俺様の伝説が始まるのだな! は~っはっはっはっはっは!!」
「あっ! リージェ様、お待ちください!」

 偉大なる一歩を踏み出そうと(実際は飛んでいたのだが)していた俺様は、ルシアちゃんに尻尾を掴まれて墜ちる。

「何をするか下僕!」
「あぁっ! リージェ様申し訳ございませんっ」

 俺の言葉が通じている訳ではない。が、俺の恨みがましい視線を受けてルシアちゃんが慌てて弁明を始める。

「ですが、じきに夜になります。夜になればモンスターが活発になります。何の準備もなく出るのはいくらリージェ様でも死にに行くようなものです」

 しっかり準備をして明日の早朝に出立しましょう、と。ふむ。確かにそうだな。
 レベルが上がったとは言え、俺はまだ生まれて二ヶ月。人間のルシアちゃんには準備も必要だろう。
 まぁ、俺にできることなんて出発までたっぷり寝て身体を休めることくらいだけどな。



  ♢♢



 さて、気を取り直して再出発の朝である! 

「今度こそ本当に、俺様の伝説が始まるのだ!」
「あ、リージェ様! ちょっと待ってください!」

 ガクッ。またかい。

「リージェ様、最後に一つ、頼まれてほしいんです。ザンナ・メロンをブレスで焼き尽くしていただけますか?」
「へ?」

 あのメロンはここでの唯一の貴重な食糧であろうに、どういうことだ? と首を傾げて見せると、ルシアちゃんがクスッと笑う。可愛いなぁ。

「リージェ様、私達は今日、旅立ちます」
「当然であろう」
「ザンナ・メロンを刈る者がいなくなります。ここをモンスターハウスにするわけにはいきません」

 あ! そういうことか。
 熟すとモンスター化する凶悪なメロン。俺達がいなくなったら、そりゃ増え放題のモンスターだらけになるわな。獲物がいなくなりゃ動き回るようになるかもしれないし。末恐ろしい子っ!

 まぁとにかく。そういうことなら任せておけ。

「我が劫火に焼かれよ」


 ゴウッ 


 念のため教会の壁を背にして、中空から森側の方面に炎が行くよう地面に向けてブレスを吐く。地中の根まで焼き尽くすイメージで。
 Lv.3なだけあって、まさしく劫火という勢いで延焼し、あっと言う間に畑を黒墨に変えてしまった。

『――≪リージェ≫がザンナ・メロンを倒しました。経験値23を獲得しました――』

 チッ、レベルアップするには至らなかったか。

「さすがはリージェ様ですわ。私も、これで……よし」

 延焼した炎が完全に鎮火するのを確認してからルシアちゃんの所へ舞い戻ると、ルシアちゃんは教会を囲うように白い石を置いていた。

「主よ、御力をお貸しください。何者をも寄せ付けぬ強固な守りの祝福を、ここに。聖結界展開」
「おおっ!?」

 ルシアちゃんが手を胸の前で組み祈りを捧げると、教会がクリスタルのようなもので覆われた。俺がゴンゴン叩いてみてもびくともしない。

「念のため、私のスキル聖結界の力を込めた石で囲いましたの。数を用意するのに苦労しましたけれど」

 そりゃそうだろう。石の間隔は5㎝もない。百や二百じゃきかないぞこれ。

「これは私と同じ聖結界のスキルを持つ者にしか解けませんから、教会が荒らされる心配もありませんね」

 こんなかっちり固めちゃったんじゃ、ダンジョンに迷い込んだ人間が逃げ込むセーフティーゾーンとして使えないんじゃ……と思ったら、ここを本当に必要とするのは聖女候補くらいらしいから、これで良いのだそうだ。
 聖女なら聖結界を使えるから、いざという時この結界そのままに逃げ込めるんだって。

 メロンの始末OK、火の始末OK、戸締りOK。よし、今度こそ本当の本当に出発!

「さぁ、大変お待たせいたしました! 出発致しましょう! リージェ様、疲れたら遠慮なく私の肩に乗ってくださいね!」

 うん、ルシアちゃんも気合入っているね。
 因みに、ルシアちゃんは長袖長ズボンいう服装に、頑丈そうな宝玉のついた――メイスとして知られる打撃もできる錫杖、ルシアちゃんが二人入れそうなくらい大きな背負い袋という恰好だ。
ラノベなどでよく見るような、僧侶や修道女のような服装を期待していただけにがっかりだ。だが、モンスターと戦闘になるかもしれない森歩きでは実に理に適った服装である。

 因みに、俺も俺の倍くらいある大きさの風呂敷に収穫したばかりのメロンをたっぷり詰め込んで背負っている。自分の食糧を自分で持つのは当然であろう。
 重いと言えば重いが、Atkが高いと筋力も高いのか、持てないほどじゃない。

「よし、出発だ!」

 俺はルシアちゃんと共に、これから訪れるであろう大冒険に胸を躍らせながら、森の中へと足を踏み入れた。

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