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14話 相棒

「シルト! ヤツの硬さの正体は腕輪だ! だが侮ってはダメだ! オークキングには強力な再生能力が有る!」

「はい! 再生する前に殴りまくれって事ですね!?」

 メッサーさん、もう大丈夫みたいね。それにしても、あの固さの正体は、メッサーさんが斬り飛ばした腕に装備していた腕輪の効果だったのね。それがあたしのスキルで無効化されて、メッサーさんの魔法攻撃が効いたって事か。そして、再生能力があるって言うならあたしには対策があるもんね!

「メッサーさん! ガンガン攻撃して下さい! あたしも全力で行きます!」

オークキングをよく見れば、なるほど 潰した股間や顔面が再生してるわね?

(再生する前の潰れた状態まで!)

  念じながら、あたしはモーニングスターを振りかざして突撃する。

「顔面殴られて男前になれーっ!」

*****

 私は……?
 そうか、オークキングに魔法が通らずに吹き飛ばされ深手を負って……深手を負って? 何故だ? 私はどこも怪我をしていないようだ。痛みもない。誰が治療してくれたのだろうか? シルト? いや、治癒魔法が使えるとは聞いていない。ならば隣で寝ている囚われていた女性? いや、こちらはまだ気を失っている。
 はっ!? そうだ! シルトは!?

  少し離れていた所で繰り広げられている攻防に目をやると信じられない事が起こっていた。シルトの打撃が効いている。

 バカな……私の魔法すら跳ね返すあの腕輪の力を無視して、攻撃を貫通させているというのか? しかし、攻撃が効いているというなら私の魔法も通るかも知れん。厄介な腕輪毎ヤツの腕を切り飛ばしてやろう!

「シルト! 下がれ!」

*****

 よしっ! こうやって再生前の状態まで戻してダメージを蓄積させていけば火力不足のあたしでもっ!!

「ぐっ!?」

  流石にオークキングも殴られてばかりじゃないか。残った右腕で殴り返して来るし、蹴りも飛んでくる。防御力上昇の腕輪が無くなったからって弱くなった訳じゃない。攻撃力は健在なんだよね。盾で受けてもダメージはくる。

(元通りに!)

 受けたダメージを元通りに(・・・・)しつつ、オークキングの再生も元通り(・・・)になるよう念じながらの、壮絶な打撃戦。

「グヌゥ……何故再生シナイノダ。貴様、我に何ヲシタ……」

 ふふ、異変に気付いたようね。あたしはオークキングの問いに答える事なく口の端を吊り上げて見せる。

「シルト! 離れて! 魔法を撃つ!」
「はいっ!」

  杖を拾って来たんだね。メッサーさんの杖から魔力が放射されているのが分かる。オークキングは斬り刻まれて血飛沫をあげて悲鳴を上げている。

――ドゥゥン!!

 その時、血だるまになったオークキングの足元がいきなり爆発し、火柱が立ち上る。血だるまのオークキングが更に火だるまだ。

「えっ!? なに!?」
「何だ!?」

 何事かと周囲に目を巡らすと、メッサーさんの横で寝ていた女性が、上体だけ起こしてオークキングに向けて手を翳して息を荒げていた。

「はあっ、はあっ、ご、ごめんなさい。これで打ち止め……です……」

 ありゃ、また倒れちゃったよ?

「シルト! 仕留めるんだ!」

 そうだ、コイツを!
 猛然とダッシュして全力でジャンプ! モーニングスターを振りかぶり……

「とどめェェェッ!!」

 オークキングの頭蓋目掛けてモーニングスターを叩きつける!

――ドゴンッ!!

 土煙が視界を遮る。土煙が晴れたそこには地面にめり込んだオークキングがいた。
脳漿をぶちまけて息絶えている姿は、恒例行事かとあたしもそろそろ諦めている。だって、これしかないんだもの。あたしの戦闘スタイルって。
 キングは倒したけど、一応周囲の気配を探る。生き残りのオークがいるかも知れないもんね。あたしだってちゃんと勉強してるんだよ。

「ふう……」

 どうやら大丈夫みたいね。
 あたしはほっと一息ついた後、囚われていた人のところへ向かった。そこでは既にメッサーさんが介抱してあげていた。これで一安心かしら?
 あたし、ちょっと倒れまーす……

 zzz……

 はっ!?

「やあ、おはよう。お目覚めはいかがかな?」
「えと……おはようございます?」

 目覚めに見るメッサーさんのご尊顔。ああ、なんて整ったお顔なんでしょう……
……じゃなくて、そうだ! オークキングを倒して、限界超えてそのまま爆睡したんだわ!

「えーと……あの……」
「シルト。色々と突っ込みたい点はいくつもあるんだが……ありがとう。おかげで助かったよ」

 ぺこりとメッサーさんが頭を下げる。
 普通は『そんな事ないですよぉ』とか言って謙遜するトコなんだろうけど、それってこの場合はなんか違う気がするのよね。もしあたしが命を救われて、それを大した事じゃないなんて言われたらちょっと悲しくなるかな。あたしの命も大した事じゃないのかなって思ってしまう。

「……これでおあいこですっ! 以前メッサーさんにはオークから助けていただきましたし、魔石も譲って貰いましたから!」

 あたしの言葉に、しばし考え込んだメッサーさんだけど彼女は優しい笑顔で言ってくれた。今後のあたしの人生において常に勇気を与えてくれるであろう言葉を。

「そうだね。私と君はパーティーの仲間だ。ランクの違いこそあるが私と君は相棒だ。対等な関係のね。少なくとも私は君とそうありたいと思うよ。いや、今日の君の活躍を見てそうありたいと願うようになった、かな」

「――!!」

 ……嬉しかった。今まで他の冒険者に認められる事がなかったあたしを、1級冒険者のメッサーさんが認めてくれた。しかも対等な相棒だと。この言葉だけでもあたしはどんな困難にも立ち向かっていける。そう思ったんだ。
 そしたら何か涙腺が決壊したのよ。もうボロボロボロボロ滝のように涙が零れ落ちる。でもあたしは精一杯の笑顔でメッサーさんに言ってやった。こんなに泣かせてくれた意趣返しに思い切り上から目線で。

「これからもよろしくお願いしますね、あたしの相棒!!」

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