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 その日、私はいつものようにご飯を食べる。
 すると、武さんが私の前に立つ。

「お前さ……
 パパのところに行きたいと思わないの?」

「パパとママの由香の4人がいい……」

「ふーん」

 武さんは、そう言うとパパが使っていた部屋に戻った。
 パパが使っていた部屋は、何故だか武さんが今使っている。
 パパが、帰って来た時、パパの居場所がなくなる……
 でも、わかっていた。
 パパは、もう二度と戻ってこないって。

 そう思うと涙が出た。
 悲しい涙が出た。

「なに泣いているんだ?
 うざいなぁー」

 武さんは、タバコを取り出しタバコに火をつけた。

 煙たい。
 私は、ゆっくりと武さんの方を見た。

「なんか文句ある?」

 私は、首を横に振った。

「なんか、俺、お前の顔を見ているとイラつくんだよね」

 武さんは、そう言うとタバコを私に近付けた。
 そして……
 それを私の右手に押し当てた。

「あつい!」

 私は、思わず叫んでしまった。

「うるさいな!」

 武さんは、私の頬を叩いた。

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