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2話 謎スキル(挿絵あり)

鍛冶屋のおじ……おにいちゃんに連れられてきたのは教会。教会に幾らか寄付すれば、神様から授けられたスキルを教えてもらえるんだって。
 普通は、ここでスキルを確認してから将来の仕事を決めるらしいんだけど、あたしは父さんを支えて家事をするって思ってたから、スキルなんて関係ないやーって思ってたのよね。

「お前な、自分のスキルも知らねーで冒険者やるとか、自殺志願者かっつーんだ」
「うぅ……」

 おにいちゃんの容赦ない言葉にしょんぼりするあたしを見て、 教会のシスターさんも『この子は可哀想な子ですか?』みたいな目で見てるし。
 あっ!? おにいちゃんがその視線を受けてウンウンって頷いてるよ?

「まあいい。ここは俺が出しといてやるからとっととやっちまえ」
「はあーい」
 
 シスターさんが持って来た水晶玉に手を翳すと、頭の中に情報が流れてくる。

「えっ!? これって……」
「どうした!?」

思わず声を上げたあたしを、おにいちゃんが心配そうに見る。

「なんでもない。ちょっとビックリしただけなのよ!」
「?」

だってさ、あたしには絶対にあると思ってた治癒系の魔法スキル。それが無かったのよ。で、あったのが『怪力』。

 いやーっ! あたし、花も恥じらう乙女なのに怪力ってなによー!?
周りの男が守ってあげたい系の女の子になるのが夢だったのに!
 え? だったらタンクなんかやるな?

……それもそうね。

  いやいやいや、じゃなくって! あたしにあったもう一つのスキル。『****』。
 なんなのよコレ! 読めない!

「あのー……シスターさん? なんか読めないスキルがあったんですが……」
「なんだよお前、まだ字が読めなかったのか?」

ちがうわよバカ!!

「違うくって、文字が化けてると言うか……」

  結局、シスターさんも今までそんな事例は無かったので分からないとの事。
 帰り道。おにいちゃんと会話が弾む事はなかった。でもそこに、おにいちゃんが爆弾を落としたのよね。

「お前、さっきの謎スキルの他には何か無かったのか?」
「あー、うん。『かい……き』」
「あ? 何だって?」

 もう! 恥ずかしいんだから何度も言わせないでよ!

「……『怪力』……」
「ぶっ……」
「ぶ?」

鍛冶屋のおにいちゃん抱腹絶倒中。

――ボグッ!

「ぐえっ」

 鍛冶屋のおにいちゃん悶絶中。

「ひい……二重の意味で腹が痛え…… あ、そうだ、もう少し付き合え」

だからおにいちゃん、歳の差がね?

――ゴツンッ!

「あうっ!?」

工房まで付き合えって事ね。オーケー、わかったわ。全く、脳筋はすぐ拳で語ろうとするんだから。

鍛冶屋のおにいちゃんの工房。
 おにいちゃんのお父さんと、おにいちゃんの二人でやってるんだ。父さんもよくお世話になってたみたいなんだよね。

「よう、シルト。よく来たな。倅に聞いたぞ? 冒険者になったんだって?」
「あっ、おじさんこんにちは! そうなの。でもなかなか上手くいかなくて」
 
 あたしがおじさんと挨拶を交わしていると、おにいちゃんが店の奥から何かを持ってきた。 「よう、親父、コイツをシルトにくれてやってもいいか?」

おにいちゃんが奥から持って来たのは鉄の棒の先にボールみたいのが付いてて……でもそのボールには物凄く痛そうなトゲトゲがいっぱいくっついていた。

「おめえ……モーニングスターなんて物騒なモン、シルトに持たせんのか?」
「ああ、さっきシルトを連れて教会でスキルを見てきたんだ。ハッキリ言って剣も槍も弓も斧も、戦闘に役立つスキルは一個もねぇ。あるのは『怪力』(笑)だけ」

ちょっ! 最後の(笑)って何さ!? 失礼ね!
 でも話を聞いたおじさんは凄く真面目な顔をしてる。

「なるほどな。シルト、おめえは父さんみたいな前衛職(タンク)を目指して冒険者になった訳だ。ならこのモーニングスターは持っていけ。就職祝いだ」
「え?」
「なんのスキルもねえお前が、前衛張りたいってんなら武器の選択肢は多くねぇ。それ持って力任せにぶん殴るしかねえだろうなぁ」

 そっか! それなら怪力スキルも役に立ちそうだわ!

「わかったよ。ありがとう、おにいちゃん、おじさん。形になんか拘らない。父さんと同じ道を歩めるならね!」
「おう、頑張れよ!」
「うん! じゃーねー! おにいちゃん、おじさん!」

あたしは二人に手を振り家路につく。タワーシールドにモーニングスターなんて女の子の武装じゃないけど、これで明日からまた頑張ってみるよ!
もう役立たずなんて言わせない!

 
挿絵



*****

「なあ、親父。今日あいつ、討伐依頼受けて魔物と戦って来たハズなんだよ。けどな、あいつの盾。新品同様だったんだ」
「逃げ回ってたからじゃねえのか?」

 シルトが帰ったあと、鍛冶屋の親子は真剣な面持ちで向かい合っていた。

「そうかも知れない。でも、あいつの親父さんが使ってた時は細かな傷とかはそのままだっただろ。でも今日見せて貰った時、その傷も消えていたんだ」
「ほう……」
「それに教会でスキルを見たんだけど、あいつには怪力の他にもう一つ、スキル名が読めない謎スキルがあったらしい」
「謎スキル?」
「ああ。俺はなんだかあいつは将来とんでもない大物になるような気がして来たよ」

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