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はじめてセロがオトネと出逢ったのは、今から10年前。
セロとオトネが、6歳のときだった。
「さぁ、オトネ。
この御方が――様だ」
オトネの父親である執事がそういうとオトネがいう。
「……この人が新しいご主人さまなのですますね」
オトネの言葉に執事が頷く。
「ああ、そうだ。
お前は今日からこの御方に忠誠を誓うのだ」
「キスすればいいのですますか?」
オトネのおとぼけに執事が首を横に振る。
「キスはしなくてもいいんだよ。
オトネは、この方とどんなときも一緒にいるだけでいいんだ。
この先もずっとお前が護るんだ」
「わかりましたですの!」
執事の言葉にオトネがニッコリと笑う。
「よ、よろしく」
セロは、小さく照れる。
「はい!よろしくですの!」
オトネの笑みにセロは照れる。
「う、うん」
「ずっと一緒なんですますよ?」
オトネの言葉にセロの胸がときめく。
――ずっと一緒って言ったじゃないか!
セロが、ゆっくりと目を覚ます。
見知らぬ白い天井。
見知らぬ白い壁。
「目が冷めたようですね」
そして、黒い服を来た男がひとり。
「貴方は?
……いや、この感じ人間じゃないのか?」
セロがそういうと黒い服を来た男が小さくうなずく。
「あ、わかりますか?
私の名前はキサラギ。
一応、神族です」
男はそう言って自己紹介した。
男の名前はキサラギ。
神族。
自分との力の差は見た瞬間わかった。
暖かくも冷たくもあるこの感覚。
セロは、神族とあったことがある。
なのでわかった。
この人には逆らえない。
清空もまた神族だ。
だからか「神族にもいい存在がいる」と思っていた。
目の前もまたいい存在なのだろう。
セロはそう思った。
「僕の名前は……」
セロが、そういうとキサラギがニッコリと微笑む。
「セロさんですよね?」
「はい」
「新一や裕也がお世話になりました」
キサラギがそういうとセロは気づく。
「ってことは、貴方もですますスイッチの?」
「そうです。
私はですますスイッチのキサラギですよ」
「そうか……
オトネがこの場にいると喜ぶだろうな」
「そうなのですか?」
「はい、貴方たちですますスイッチの大ファンなんですよアイツ」
「そうなのですか。
それはありがたいことです」
「はい」
「んー」
キサラギは、そう言ってセロの方を向いた。
キサラギの目は閉じている。
しかし、見られている。
そんな感覚はあった。
「いや、ここは。
『そうだ!オトネは!オトネはどこにいった!?』って騒ぐのがパターンかな?って思ったのですが。
意外と冷静ですね」
「そうですね。
なんか落ち着いています」
セロの心はどこか穏やかだった。
なぜならキサラギが神族だからである。
心が暖かくなる。
おそらく清空と同等かそれ以上の力を秘めている。
力が強ければ強いほど暖かい気持ちになれる。
それが神族の性質なのだ。