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21

 世界は暖かく。
 残酷だった。

 静なる世界。

 踏切の音だけが静かに静かに鳴り響く。

「おい。
 中房!テメェ誰に向かって口を利いている?」

 ブレザーを着た男子高生が、そう言って学ランを着た少年の顔を殴る。
 しかし、学ランを着た少年は微動だにしない。

「知らねぇよ!
 別の学校のヤツのしかも高校のヤツの名前なんか把握してねぇよ」

 学ランを着た少年は、そう言ってブレザーを着た男子高生を睨みつける。

「お前……
 生意気なんだよ!」

 そう言ってブレザーを着た男子高生が再び学ランを着た少年の顔を殴る。

「効かねぇな」

「ああん?
 来いよ!お前も殴ってこいよ!」

「俺は自分より弱いヤツは殴らねぇ」

 学ランを着た少年が、そう言って誇らしげに笑う。

「百田!お前が俺より強いっていうのか?」

 百田と呼ばれる学ランを着た少年。
 名前を百田 百道(ももた ももち)。

 ヒーローに憧れる中学生だ。

「ああ、お前なんてその気になれば一撃だぜ?」

 百道の目が鋭く光る。

「お前程度が……
 お前程度が俺に勝てるわけないだろうが!」

 この男子高生の名前は、壺 健太。
 17歳の高校生。
 ベテラン議員の父を持つエリートだ。
 健太は、百道のアゴに一撃拳をぶつけた。

「あぁ……
 今のは少し効いたかもな」

 百道が、ニッと笑う。

「何がおかしい?」

「いや……
 お前が滑稽に見えてな」

 百道がそう言ってため息をつく。

「……なんだと?」

 健太がもう一撃百道に拳を浴びせた。

「でも、やっぱ効かねぇや」

 百道が小さく笑う。

「糞が!?
 気に入らねぇんだよ!
 その自信どこから来てる?」

 健太は何度も何度も百道の顔を殴った。
 百道の顔に痣ができる。
 ひとつ、ふたつ、みっつと増えていく。

 健太は、高速のメロディを聴いている。
 素早く動けるようになるメロディだ。
 健太は、腕にその高速の能力を使いものすごいスピードで百道の顔を襲った。

「効かねぇな」

 百道の目にはなにも光らない。
 なにも映らない。
 ただ、虚しさだけが百道を襲った。

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