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19 依頼達成?

「【火弾】【水弾】【風弾】【土弾】!」
「ぶぉ!」

<【連続魔法】を取得しました>

 おっと、私の勇猛果敢な戦いぶりを見て腹を抱えて笑っていたアルに、天誅を加えていたらとうとう【連続魔法】を取得してしまった。これで魔法修行がもう一段階先に進める。

 あとは、〔見習い〕のレベルがあがった。〔見習い〕はチュートリアル職だから、ステータスの上昇が破格でLUK以外が+1。レベルは10でカンストだからステータスもそれぞれ10までしか上がらないけど。そしてそこまでは全員が同じなので、結局のところ10が初期値みたいなもの。
 それでも現状では能力が倍になったわけだしかなり大きい。〔見習い〕の職業レベルはすぐに上がるだろうし、依頼の毛皮も集めなきゃいけないから、さっさとカンストさせちゃうのもありかな。

 取りあえず、落とした弓を拾いつつ、短剣と一緒にインベントリにしまうと、見習いの長剣を装備。ちょっと癪だが、もう少しレベルがあがるまではやっぱり長剣が無難だろう。アルがうるさいからもう少し街から離れて、グラスラビットを探す。
 
 よし、いた。どうやら、近づいて見つかるか攻撃をしない限りノンアクティブみたいだから、いきなり斬りつけるよりは遠目からダメージを与えて向かって来たところを迎え撃つ方がいいか。

「ということで、再び登場のただの石。【鉱物鑑定】でも間違いなく『石』と表示されます」

 これを【投王術】持ちの私が攻撃として投げると……うん、びっくり。メジャーの豪腕ピッチャーかってくらいの豪速球がしっかりグラスラビットに命中。投げたのがただの石にも関わらずグラスラビットのライフゲージは2割くらい減っている。拳大の石があのスピードで当たったら普通はもっと大ダメージだろうと思うが、相手は魔物だし、ゲームだから気にしたらいけない。
 そして攻撃を受けてアクティブになったグラスラビットが一直線に私に突進してくるのを、今度はしっかりと剣を持って待ち構える。跳びかかってきたグラスラビットを敢えて正面からの斬り下ろしで迎え撃つ。そこで真っ二つとかだったら格好いいんだけど、見習いシリーズじゃそこまでの威力はない。斬るというよりも叩き落とされたグラスラビットに落ち突いて追撃し最後のとどめを刺す。

<グラスラビットの肉×1
 グラスラビットの毛皮(白)×1 を入手しました>

 いいね、落ち着いてやればスキルもあるしグラスラビットは問題なく狩れそうだ。このまま乱獲といこう。


◇ ◇ ◇

<グラスラビットの肉×1を入手しました>
<レベルがあがりました>

<グラスラビットの肉×1を入手しました>

<グラスラビットの肉×1
 グラスラビットの毛皮(白)×1 を入手しました>

<グラスラビットの肉×1
 グラスラビットの毛皮(白)×1 を入手しました>
<レベルがあがりました>

<グラスラビットの肉×1を入手しました>

<グラスラビットの肉×1を入手しました>

<グラスラビットの肉×1を入手しました>

<グラスラビットの肉×1
 グラスラビットの毛皮(白)×1 を入手しました>
<レベルがあがりました>


 よし、毛皮5枚ゲット。ついでにレベルも5になってキリがいいからクエストの報告に行っておこうかな。チュートリアルを終えるまでにはレベル10にしなきゃいけないけど、この調子ならすぐに上がるだろう。
 実際レベルが上がってステータスが上がったお陰で、いまは投石と長剣の一撃でグラスラビットは倒せるし、次を見つけるのに多少時間を取られるが探すのは簡単だから時間がもったいないというほどではない。


 というわけでやってきました冒険者ギルド。ちなみに門番は【連続魔法】で弾幕を張ってすり抜けた。むぅ、どうして私は門をくぐるたびに毎回こんな苦労をしているのだろう?
 ……ま、楽しいから別にいいけど。

「ただいま戻りました!」

 今度は待たせなかったはず。うちのギルドの受付嬢は待たされるのが嫌いみたいだからね。

「にゃ、感心感心。問題なく狩れたみたいだね。じゃ、さっそく毛皮を出して」
「はい、わかりました」

 ミラの機嫌がよくなったことに気を良くしつつ、インベントリに入っている『グラスラビットの毛皮(白)』5枚をミラの前に取り出して置く。

「おぉ、凄いねコォチ。こっちが5枚も出たんだね。でも、今回の依頼は普通の毛皮だからそっちを出してくれる?」
「へ?」

 あれ、なにかおかしい。毛皮は肉と一緒にほぼ確定ドロップだって話で、グラスラビットの毛皮(白)のドロップ率は現状で5割。ということはこれが依頼品の毛皮ってことだよね? 
 それなのに、ミラの毛皮を撫でる手つきは必要以上に丁寧に見える。

「あの……ありません、けど?」
「にゃにゃ? そんなわけないでしょ。レアドロップの白毛皮がこれだけ出ているんだから普通の毛皮なんて数十枚出ていてもおかしくない……のよ?」
「いえ、私が倒したグラスラビットは10羽です。そのうちの半分がその白毛皮をドロップしました。それ以外の毛皮はないです」

 私の言葉にミラの顔色が変わる。なにか思い当たる|節《ふし》がありそうだ。

「ちょっとコォチ、まさかと思うけどあなた。もの凄く運がよかったりしない?」
「あ、はい。運のステータスは97ですけど」
「きゅ! きゅうじうななぁ!」

 あんぐりと口を開けたミラの毛が逆立っている。獣人は驚いたりして感情が高まると毛が逆立つのだろうか。

「なにか問題でも?」
「…………はぁ、コォチ。やっぱりあなたは一筋縄じゃいかないわね。まあ、いいわ。もうあたしは諦めた……とことんあなたに付き合うわ。気長にいきましょ」
「あの……どういうことでしょうか?」

 なんとなく肩を落としているミラは、疲れたような笑みを浮かべて説明をしてくれた。

「いままでもそういう夢幻人はいたのよ」
「そういうというのは?」
「妙にレアドロップ率がいい人よ」

 なるほど……それが、ステータスのLUKの値に依存すると。

「ドロップ率に関して質問されて、あたしが確認できた限りで、いままでの最高は78だったかな。その人でレアドロップ率は5割くらいだったかしら」
「5割! 高いですね、でも78で5割だったら97でもせいぜい6割とかじゃないんですか?」
「……だったらいいわね。でも、あたしの経験と感覚では、LUKは数値が高くなればなるほど効果上昇率が上がると思っているわ。さらに、ここのグラスラビットの毛皮(白)はレアではあるけど、もともとのドロップ率もかなり高めなの」

 つまり、最初から比較的出やすいレアドロップを高LUKがさらにドロップ率を強補正するから…………あれ、もしかするとレアドロップと通常ドロップの出現率が逆転している可能性すらある? 

「……えっと、白毛皮の方がレアで高価なんですよね?」
「そうね」
「報酬は据え置きで構わないので、白毛皮で納めるというのは駄目ですか?」
「ダメ、この街以外なら依頼主との交渉がまとまれば、どうとでもなるけどここでは無理よ。あなたならなんとなくわかるでしょう」

 あ~……わかるかも。どこまでいってもこの街はチュートリアル。本来なら住民たちは決められたセリフしか話せないはずの街。そんな人たち相手に交渉なんて成立するはずがない。それに戦闘スキルの講習を考えてもそうだ。この街ではチュートリアルの設定を通すためなら、普通は覚えられないはずのスキルすら取得させてしまう。

「ということは……」
「意地でもあなたが自力でドロップさせるしかないわね。ま、|運が悪ければ《・・・・・・》三桁くらい倒せばなんとかなると思うから、気長に頑張んなさい」

 運が悪ければ……か。ある意味これはバグなんだろうな……一応やるだけやってみて、あんまり出ないようなら、後に続く人のことも考えて運営にメールしておこう。

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