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スケ番!板額御前

 風に舞う桜の花弁が、幻と化すかの様に南淡の街を染めている。
「おおっ!」
「むっ!」
 周と響の前方の路上に、南淡高校の制服を着た一団が現れる。
「現れやがったか!」
「待てい!新生淡路高校の番格達!」
「今からお前らを決闘場に案内しよう!」
「決闘場だと!?」
「周君、こちらは、どんな戦いも迎え撃つよね?」
「当然だぜ!」

 周達は、南淡高校の屋外スケートリンクに到着して単車を降りる。
「ほう、春先にこんな大層な物を」
「野外リンクは大阪駅の梅北広場で見たことがあるけど、これも随分と立派だね」
「ほほほ!随分と待たせてくれたわね!怖気(おじけ)付いたのかと思っていたところよ!」
「!?」
 南淡高校の番格達の群像が割れて、左右に並んだ堵列(とれつ)となり、間からスケートリンクへ細身の少女が飛び込んだ。
「何だあ?お前は!」
「ゴスロリ服。前空きスカート、ちょうちんブルマとニーソックスとは、活動的だね」
 少女はスケートリンクの中央でスケート靴の刃を寝かせて、桜の花弁混じりの氷片を飛ばしながら急停止し、周達に軽昧の視線を向ける。
「氷技、桜おろし。(じょう)板額(はんがく)!相手になるわ」
「おいおい、冗談だろ。スケ番が俺の相手だと?」
「おや、本当に怖気付いたと見えるわね。ほほほ!」

「あれ?元気ちゃん、シュウちゃん達だよ」
「ほんまや。隣のクラスのニイちゃんもおるやんけ。何してんのやろ、他所の学校の運動場なんかで」
 稀人と綺子は、放課後のバイク便のアルバイトを済ませた帰路の途上、南淡高校のスケートリンクを通り掛かる。

「ふふ。周君、ここは僕に任せてもらいましょう」
 響がスケートリンクへと進み出る。
「何!?」
 響の姿は空中にあり、浮上したままスケートリンクの枠塀を越えて行く。
「面妖な!」
「板額さん!周君は女性を殴る事を禁忌とする人物、僕が相手になりますよ」
 桜吹雪が舞った刹那、響の姿が空中から消える。
「ややっ!?」
「この、光の忍者、響彼方がね。どうしたんですか?僕はここにいますよ」
「シュッ!」
 響は、板額が背後へ蹴り付けたスケート靴の刃を二本指で挟んで、微笑みかける。

「何や、あのニイちゃん!?」
「あんな凄い人だったの!?」
「見に行こや!」

 響が板額のスケート靴の刃を離す。
「ぬう!」
「素晴らしい回し蹴りですね。種明かしをしましょうか。僕は皆さんの視線が板額さんに集中した瞬間に、上空へ向けて蜃気楼を起こす、特殊な気体を自分の前方に撒いておいたのです」
 響がスケートリンクを滑り始める。
「そして、その時ばかりは浮いている様に見せ、桜吹雪が気体を払った瞬間に飛び出して、皆さん同様に視線が上空に向いている貴女の背後に素早く回ったと言うわけです!」

「何の気体やねん。そこ一番肝心とちゃう?マレトが首かしげてるわ!」
「真っ直ぐや!忍者だから秘密なんだよ」
「お前ら」

「忍者らしい小細工よの」
「スケートリンクにスケ番のお出ましとは、心尽くしの趣向ですね」
 響と板額が共通中心に向かって相対しながら、スケートリンクを回り始める。
「良かろう!お前を合戦(かっせん)に先立ち、軍陣の血祭りに挙げてくれるわ!」
「ふふ。貴女が冷え性になる前に終わらせて差し上げましょう!」

「あー、ウチも学校に体操着忘れて来たかも」
「クラスの体育、来週からだって!」
「先回りし過ぎだ!お前!」

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