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みんなでキャンプ⑧




そして、みんなで楽しく夕食の時間を終えた。 相変わらずコウの料理はクオリティ高くて、毎回食べては驚かされる。
「美味しかったー!」
「またコウの料理、食わせてな」
「俺も俺も!」
「ん、いいよ」
―――さて、夕食を終えたっていうことはついにアイツらの出番か。
そう――――真宮と北野だ。 レクリエーション係。 何をするのかは、真宮が決めてくれていた。
そして結人たちも、彼らがこれから何をしようとしているのかは分かっている。 

ある二人を――――除いては。

「よーし! みんな集合ー!」
「ん? 何だよ真宮ー」
真宮と北野を中心に、みんなは二人を囲むように集まる。 
「今から名前を呼ばれた人は、俺たちの前に出てくるように!」
「はーい」
「おっけー」
そして彼らの了解を合図に、北野は一人の少年の名を静かに読み上げた。

「御子紫勇気」

「え・・・。 俺?」

名を呼ばれた御子紫は、今から何をされるのかさっぱり分からないといったような、不安そうな表情をしている。 
―――そんなに緊張しなくてもいいのにな。 
―――悪いことはしねぇのに。
御子紫が呼ばれることを知っていた結人たちは、そんな彼を見ながらニヤニヤと笑っていた。 そして北野が御子紫のことを見ながら、笑顔で口を開く。

「御子紫。 遅くなったけど、お誕生日おめでとう!」

「・・・え?」

そう言って、背中に隠しておいたプレゼントを彼の目の前に差し出した。 御子紫の誕生日は――――4月21日。 
だからみんなは、直接祝えなかったため今サプライズとして祝ってやろうと考えたのだ。 これを考えたのは、真宮なのだけれど。 
御子紫はレクリエーション係をやりたいと言っていたが、それを断ったのもこのためだった。 もちろん、バレないように。
「日向の件とか、レアタイの抗争とか色々大変でちゃんと祝えなかったからさ」
「・・・き、北野ー!」
北野が優しい表情でそう言うと、勢いよく抱き着いてきた。
「ちょ、え、御子紫!? こ、こんなところで止めろよ・・・! 早くこれ、受け取って?」
そう言って御子紫を自分の身体から突き放し、プレゼントを押し付ける。
「これ、開けてもいい?」
彼はその言葉に北野が頷くのを確認し、プレゼントの箱を開けた。
「あ・・・。 これ」
「ははッ! 御子紫に似合うだろー?」
御子紫へのプレゼントはウケ狙いのため、チュッパチャップスタワーをプレゼント。 このプレゼントはみんなで考えたものだ。
「え・・・。 待って、俺はこれを受け取って、どういう反応をしたらいいの?」
「いいからそのまま受け止めてー!」
「気持ち悪ッ」
苦笑しながら困っている御子紫に対し椎野はジョークを言うが、そんなお調子者の彼に対し未来が突っ込みを入れる。
「気持ち悪いって何だよ!」
「そのまんまだよー」
そして椎野と未来がしばらく言い合った後、御子紫が静かに口を開いた。
「・・・まぁ、ありがとな。 みんなもありがとう。 ・・・何か、こういうのって嬉しいけど少し照れ臭いな」
「ははッ。 そんな態度をとる御子紫も、何か気持ちわりー」
「はぁ!?」
「はいみんな、お静かにー!」
真宮がみんなを静めるようにそう指示を出す。 これだけでは、まだ終わらないのだ。
「あと一人、呼びたい人がいまーす!」
その一言に、再びみんなは静まり返る。 だけど緊張している者は今はきっといないだろう。 自分は呼ばれないと――――思っているだろうから。
そして真宮が、もう一人の少年の名を優しい口調で読み上げた。

「瀬翔吹優くん、おいで」

「・・・俺?」

突然名を呼ばれ、優も戸惑いながらもみんなの中心に来るようその場に立つ。 そして――――
「優! ちょっと早いけど、誕生日おめでとう!」
そう言って真宮は、北野と同じように背中に隠しておいたプレゼントを彼の目の前に差し出した。
「え、本当!? マジで俺?」
「優以外に誰が貰うんだよ」
そう言われ、再び戸惑いながらも贈り物を素直に受け取る。 優の誕生日は――――5月12日。 二人をまとめて祝っちゃおうということだ。
「俺も、見てもいい?」
「どうぞ?」
真宮から確認を取り、優は御子紫と違い袋に入っているプレゼントを開けた。
「・・・あ、これ!」
「それ、優が欲しがっていたものでしょ?」
そう口にしたのはコウだ。 優への贈り物は、紫色のリュックサック。 これは登山用とかではなく、お洒落として使うものだ。 
“このリュックを優が欲しがっている”という情報は、予めコウから聞いていた。
「うん! これ、凄く欲しかったヤツだ! めっちゃ嬉しい!」
「・・・何か、俺のプレゼントと違い過ぎねぇか?」
「優はいいの。 御子紫は真面目なプレゼントより、面白い方が受け入れやすいだろ?」
「んー・・・。 まぁ、それもそうか」
―――優も喜んでくれたみたいでよかった。 
―――二人へのサプライズは、大成功だな。
「御子紫と優へのプレゼントは、俺たち結黄賊からな。 あー、あとはまぁ伊達にも協力してもらったけど」
贈り物の代金はみんなで出し合った。 伊達にも協力してほしいと言うと『俺も出す』と言い張ってきたため、代金に関しても協力してもらったのだ。
「それじゃあ、プレゼントもあげたってことで次は花火でも・・・」

「あ、ちょっと待って」

「「「?」」」

今の一言に、みんなの頭の上にはハテナマークが浮かぶ。 その言葉を発したのは――――コウだった。
「どうかしたか? コウ」
するとコウは何も言わずに自分のテントの中へ入って行き、一つの袋を持って外へ出てきた。 そしてそれを持ったまま、優の目の前に立つ。
「・・・コウ?」
優が小さな声で名を呼ぶと――――コウは彼に、優しい笑顔を見せた。
「これは俺から。 誕生日おめでとう、優」
そう言って、優の目の前に小さなプレゼントを差し出したのだ。
「え、本当? これはコウから? 開けてもいいの?」
そしてコウが頷くことを確認し、みんなの目の前でゆっくりと開ける。 結人もそうだが、みんなもプレゼントの中身に注目していた。
「・・・筆記用具?」
「そう。 日向に、優の筆記用具を渡しちゃっただろ。 俺の古い筆記用具を優にずっと使わせるのもあれだから、新しいのをプレゼントしようと思って」
今のコウの発言に“よく分からない”と思った者は何人かいるだろう。 だが、結人は分かっていた。
結人が優とコウに『日向がいじめられるのを防いでほしい』と頼んだ時、日向の筆記用具は誰かによって破壊されていた。
偶然日向と優の筆記用具が同じものだったため、優の筆記用具を彼のものとすり替えたのだ。
「わぁ・・・! ありがとう、コウ!」
そう言って、リュックサックと筆記用具を大事そうに抱えながら勢いよくコウに抱き着いた。
この光景と先程御子紫と北野が抱き着いた時の光景の違いは、相手が嫌がっていないかということ。 優に抱き着かれたコウは、何も言わずにただ優しく彼を受け止めていた。
「・・・え、つかこれコウからだよな? 俺たちは何も知らないよな?」
「ん、俺も知らなかった」
「何だよコウ。 そういうことをするなら、先に俺たちにも言っておけっての」
「あぁ、悪い」
結人も知らなかった。 コウから優へのサプライズ。 優は幸せそうな顔で、ずっとみんなに向かって笑っていた。 彼の笑顔を見るといつも心が癒される。

―――・・・やっぱり、この二人には敵わないな。

「おめでとう。 御子紫、優」

結人は二人に、気持ちを込めて祝いの言葉を送った。


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