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みんなでキャンプ①




翌日 朝 駅前


「待っていたぜー、今日という日を!」
「今日は夜まで盛り上がろーぜッ!」
今日はキャンプ当日。 朝から駅前で、椎野と御子紫は一緒の輪にいる北野を置いてけぼりにして二人だけで盛り上がっていた。
「キャンプと言えばー・・・?」
「キャンプファイヤー!」
「バーベキュー!」
「花火!」
「天体観測!」
「「そしてー・・・?」」
椎野と御子紫は二人揃って、互いの隣にいる北野を見る。

「・・・え、俺? えっと・・・肝試し?」

「いいね、肝試し!」
「盛り上がりそう!」
「ッ! おいお前ら!」
椎野たち3人で盛り上がっていると、2メートル程離れたところにいる未来が急に話に割って入ってきた。
「何だよ未来」
「まだお化けが怖いのかー?」
「いいか! 肝試しなんて、断固反対だ! 俺は絶対にやらねぇからな!」
「大丈夫だって。 お化けなんて、この世にいないんだし」

―――ははッ。 
―――まだ未来はお化けが怖いのか。 
―――あんなに普段強がっている未来でも、ちゃんと弱点はあるんだな。
―――あと揃っていないのは、伊達だけか・・・。 
―――車でテントとかをここまで運んでくれるらしいから、やっぱり時間がかかんのかな。
そんなことを思いながら、結人は仲間のことを微笑ましそうにゆっくりと見渡す。
―――みんな、騒いで事件とかを起こしてくれなきゃいいんだけど。

「ユイ!」
―――お? 
―――伊達のことを考えていたら、早速本人の登場か。
「おう!」
車から降りてくる伊達を見て、手を挙げながら返事をする。 そこからは彼の他に、伊達の両親も降りてきた。 みんなも彼らの到着に気付き、一斉に伊達のもとへ近付いていく。

「結人くーん!」
「あ、おはようございます」
ふと伊達のお母さんと目が合い、声をかけられた。 みんなは伊達のお父さんから、キャンプに必要な荷物を受け取っている。
それら全て、みんなで手分けして運ぶことにしたのだ。
「結人くん、今日もカッコ良いわねー。 あら? もしかして、結人くんの彼女?」
「あっ・・・」
「あ、はい。 俺の彼女で、藍梨って言います」
藍梨のことを気付いてくれたお母さんに、丁寧に紹介してあげた。 伊達が藍梨のことも話したのだろうか。
お母さんも彼女のことを『可愛い』と言ってくれ『美男美女カップルで羨ましい』とも言ってくれた。 これはお世辞ではないということを祈っていよう。

「えっと、君が色折結人くん?」
伊達のお父さんだ。 お父さんと話すのは、今回が初めてだった。
「あ、はい。 色折です。 あの、今日は本当にありがとうございます」
「いやいや。 こちらこそ直樹をよろしくね。 ・・・っていうより、こんな大勢をまとめることすら大変か。 色折くんが、みんなをまとめているのかい?」
「え? あぁ、いやー・・・。 一応そうなってはいますけど、みんなでちゃんと助け合いながらやっていますよ」
「ははっ、そっか。 そうだ、色折くん連絡先を教えてもらえる? もし何かあったりした時とか、連絡先は知っておいた方がいいだろうから」
「あぁ、そうですね。 じゃあ教えます」
携帯を取り出し、伊達のお父さんと連絡先を交換した。

「ユイー! この荷物持てるかー?」
交換し終えると、少し離れたところで未来が結人に向かってそう声を上げる。
「ん? あぁ、いいよ!」
その言葉に対して返事をし、再びお父さんの方へ身体を向け直した。
「じゃあ、直樹たちを頼んだよ。 楽しんでおいで。 何かあったら、俺でもキャンプ場のオーナーにでも、頼ってくれて構わないから」
「はい。 ありがとうございます」
そして伊達のお父さんと別れ、声をかけてきた未来の方へ走って向かう。
「持つよ、未来」
「あー、やっぱりいいわ。 優が持ってくれた」
「え? でも」
「いいって。 呼んでおいて悪いな。 ユイは、藍梨さんの荷物でも持ってやって」

―――・・・言われなくても、藍梨の荷物はとっくに持っているんだけどな。 

結局結人はキャンプの荷物は何も持たず、みんなで駅へと向かう。 流石に12人、大きな荷物を持って電車に乗るのは迷惑だろうと思い、小グループに分かれることになった。
4人で1チームを3つ、適当に決め、1チーム1車両を目安にそれぞれの中へ入っていく。 
これから向かうキャンプ場は、ここから約30分間電車に乗り、そこから歩いて10分くらいのところにあるらしい。
結人たちはまだ東京に関しては何も分からないため、伊達がいないときっと迷子になるだろう。 

そして――――電車の中。 

未来・悠斗・伊達・真宮の会話。

未来「伊達はさー、兄弟とかいねぇの?」
伊達「ん、いないよ」
悠斗「え、いないの?」
伊達「俺一人っ子だし」
真宮「へぇー。 弟か妹がいて、てっきり伊達はお兄さんなのかと思っていたぜ」
伊達「そういう真宮は兄弟いるのか?」
真宮「いや、俺もいないよ」
未来「俺はいる! ちなみに悠斗も!」
伊達「へぇ。 未来にはお姉さんがいるとか?」
未来「何で俺に上がいなくちゃなんねぇんだよ。 妹がいんだよ、妹が!」
伊達「マジで? ・・・分かんねぇ」
未来「分かんねぇって何が」
悠斗「俺には弟がいるよ」
伊達「それは分かる!」
未来「おい、分かる分かんないってどういう意味だ!」
真宮「ははッ。 そのまんまの意味だよ。 俺にも分かる」
未来「・・・はぁ?」

そして、椎野・御子紫・コウ・優の会話。

優「キャンプもいいけど、遊園地とかもみんなと一緒に行きたいなぁ」
御子紫「優は外見と違って、結構アウトドアが好きだよな」
優「えー、そう?」
椎野「そうそう。 『僕お化け屋敷もジェットコースターも、怖くて乗れなーい!』とか言っていそうなのに」
優「何それ! って、俺自分のことを“僕”とか言わないし!」
椎野「突っ込むところはそこかよ」
コウ「お化け屋敷もジェットコースターも怖くて乗れないっていうのは、二人のことだろ」
椎野「なッ、それを今言うか!?」
御子紫「痛いところを突きますね、コウ・・・」
コウ「あ?」
御子紫「はいごめんなさーい」
優「あ! コウをいじめたらいけないんだよ! もしいじめたら、今度遊園地へ行った時、御子紫と椎野をジェットコースターに無理矢理乗らせるからな!」
椎野「優くんそんなところで意地を張らなくてもいいんだよ」
御子紫「そうそう。 優くんはそういう怖いことを言っちゃ駄目」
コウ「いいね優、その案。 一番乗り心地のいい先頭の席が当たったら、特別に椎野たちに譲るよ」
椎野・御子紫「「・・・ごめんなさい」」

そして最後、結人・藍梨・北野・夜月の会話。

夜月「藍梨さんはさ、ユイのどこを好きになったの?」
藍梨「可愛いところかな」
夜月「別にユイは可愛いところなんてなくね?」
藍梨「んー、そうかな。 もう全てが可愛いと思うけど」
夜月「可愛い以外だったら認めるけど、そこだけは理解できないんだよなー」
藍梨「結人が怪我しているところを見ると、何か胸がぎゅーってなるんだよね」
夜月「ん? 見るのが苦しくて?」
藍梨「ううん。 可愛くて」
夜月「・・・」
結人「なぁ、さっきから二人で何の話をしてんの?」
北野「藍梨さんって隠れS?」
藍梨「隠れS?」
北野「そうそう、悠斗みたいな」
藍梨「悠斗くんは隠れSなの?」
結人「なぁ、俺のことは無視かー?」
夜月「あぁ、悠斗が未来に対して冷たく突っ込むところは、いつ見ても面白いよな」
北野「そうそう! 悠斗って本当、いい性格をしているよ」
結人「おーい」
夜月「だよな。 一番信頼している悠斗に冷たく言い放たれて、一瞬マジで真に受ける未来が超面白い」
藍梨「そんな未来くんも可愛いね!」
結人「・・・もう、藍梨も夜月も北野も、みーんな知らねぇッ!」

そんなこんなで、結人たちは無事目的地へと着いた。 みんなも間違えずに降りることができたようだ。
伊達にキャンプ場まで案内してもらい、オーナーのいるところまで行き挨拶を交わす。
結人たちは伊達の友達ということで『料金はタダにしてあげる』と言われたが、流石にそれは申し訳なかったので『少しは出させてください』と頼んだところ、
一人500円を払うことになった。 一つのグループ(何人でも可)の料金は1万円らしい。 それで計算すると、半額にしてくれたところか。
オーナーに礼を言い、テントを立てる場所まで案内してもらった。

「よし! それじゃ、早速釣りへ行こうぜ!」
着いて早々、真宮が元気よくそう声を上げる。
「待てよ、先にテントだろ」
「テントは後でいいじゃん。 この近くに、釣りできるところがあるんだってよ」
彼いわく、餌代は自分たちで払うが釣り竿は無料で貸してくれるところがあるらしい。
結人は『先にテントを立てた方がいい』と言ったが『荷物は見ておいてあげるから行っておいで』とオーナーに言われたので、みんなは真宮の意見に乗ることにした。
食糧は少しでも増やしておいた方がいいだろう。 コウたちが昨日食材を買いに行ってくれたみたいだが、食べ盛りのみんなにとっては足りないのかもしれない。
そしてみんな揃って、釣りができる河へと向かった。


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