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「小僧、貴様は……」

「うん。
 俺には見えるよ。
 君を縛っている鎖が」

 ボクは、そういってベルゼブブにゆっくりと近づく。
 ベルゼブブは動けない。

「なにを言って……」

「大丈夫。
 君は寂しくないよ」

「なぜ……」

「だって君はこんなに美しいのだから……」

 ボクがベルゼブブの仮面に手を触れたとき。
 その仮面と鎧が砕け散り……
 そこには美しい女性の姿が現れた。

「え?ベルゼブブって女の人だったの?」

 イリアが驚く。

「なぜだ?この呪い……
 どんな学者にも解けなかったはずだ……」

 ベルゼブブが驚く。

「そうなの?解けたよ?」

 ボクが小さく笑う。
 するとかみさまが問う。

「ベルゼブブ。
 余とともにモトフミを倒さないか?」

「む?」

「主はボクに借りができただろう?」

 するとベルゼブブが笑う。

「戯れを……こんなの借りのうちに入らぬ」

「そうか」

 かみさまは小さく笑う。

「我は、ボクに忠義を尽くそう」

「え?そこまで大げさなこと?」

 ボクが驚く。

「ただし条件がある」

「なにかな?俺にできること?」

「我が部下たちの呪いも解いて欲しい」

「ど、どんな呪いだろ」

 ボクが少し戸惑いながらベルゼブブの方を見る。
 ベルゼブブの魔法で、薄暗い部屋がゆっくりと明るくなる。
 するとおびただしい数の魔族の形をした石像が現れる。

「なに?この石像……
 かすかに魔力を感じる」

 イリアが驚きつつその石像に触れようとする。

「触るな!」

 ベルゼブブが怒鳴る。

「え?」

 イリアが驚く。

「触ると先程の我のように黒い甲冑に身を囲まれるぞ」

「えええ!」

 イリアは大きく後退した。

「連鎖呪詛か……」

 かみさまが、難しい顔をしてその石像を眺める。

「何度も何度も救おうとした。
 だが結果が先程の我だ……」

 ベルゼブブが、悲しいの声でいった。
 ボクは石像に近づく。

「……見た感じ生きているんだね」

「ああ。石像に中身には魔力を感じる」

 ベルゼブブが答える。

「うーん。
 俺にもこの呪いはわかんないな」

「そうか……」

「うん、ごめ――」

 ボクはそこまで言いかけたとき。
 大きなくしゃみをした。
 すると禍々しい魔力が一度に広がる。

「え?」

 イリアが驚く。
 トールが頭を押さえる。
 かみさまは、思わず笑う。
 白銀の目が細くなる。
 ベルゼブブが大きな唸り声を上げる。

 石像にかかっていた呪いが解ける。

「これも連鎖呪詛?」

 トールが、白銀に尋ねる。

「まぁ、そうでしょうね。
 難しい方程式があるのですが聞きます?」

「やめとく」

 トールが笑う。

「……ボク。
 我らは主に永久の忠誠を誓う。
 主に魔の王の称号を名乗るのに相応しい」

 ベルゼブブがそういうと石像にされていた魔族たちが歓声を上げる。

「ボクさま。
 我らも貴方に忠誠を誓いますぞ!」

 魔族たちが口々に声を上げる。

「主ら」

 ベルゼブブが涙を流す。

「私もボクに忠誠を誓います」

 いずみがそういうと火の海の地獄の戦士たちも声を上げる。

 イリアがトールに耳打ちする。

「私たち、単独で何万もの兵を倒すつもりで来たんだよね?」

「うん、その兵を味方にしちゃったね。
 笑えるね」

 トールが、そういってケラケラと笑った。

 ギルド・ベルゼブブ。
 火の海地獄。

 その全ての兵がボクの下についた。
 合計数万兵。

 テオスの城はボクの城へとなった。



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