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「ジョーカーさん!
この人は――」
ボクが、白銀の説明をしようとした、
するとすべてを悟っていたように言葉を放った。
「白銀、俺はお前を探していたんだ」
「え?」
「あの白銀が紛い物だってことはわかっていた。
だが、テオスの城にお前の魔力があることは明らかだった。
お前を探していたら、あの嬢ちゃんに見つかってしまったのさ」
ジョーカーが親指を指す方向には禍々しい魔力を放つ赤い眼の女が睨んでいた。
「いずみさま!」
女がいずみに近寄る。
「あ、貴方は――?」
いずみがボクの方を見る。
「もしかしてあなたが?」
「はい、あのボクって人!
凄いんですよ!私たちにかけられていた拘束具をあっという間に解いたんです!」
女が嬉しそうに答える。
「でも、他の人たちは?」
いずみが、なにかの異変に気づく。
城の周りに様々な魔力が集まってくることに。
「ボク!ボク!ボク!」
火の海地獄の戦士たちがテオス兵たちを倒し歓声を上げていた。
「ありがとう。
これで私は、貴方たちと戦う理由はなくなったわ」
いずみはそういって大鎌を地面に置いてひざまずいた。
すると女もひざまずく。
「ありがとうございます」
「いえ、そんな……」
ボクが、そういって小さく笑う。
「残るのはベルゼブブとモトフミ。
そしてフィサフィーにクレイジーか?」
ジョーカーがそういうといずみがうなずく。
「はい、ですがモトフミとフィサフィー、クレイジーはアンゲロスに向かっています。
なので、この城に残るのは――」
いずみは、そこまで言ったとき身震いした。
「ほう、いずみ。
裏切るのか……
それに白銀も」
おぞましい声で黒い甲冑を来た男がゆっくりと現れる。
彼の名はベルゼブブ。
黒大将と恐れられる魔王の中でも五本の指に入るくらいつよいと言われている。
「裏切り……?
僕は最初からボクの味方さ」
白銀がそういって笑う。
「くくくく……
戯れを。
まさかアスペルガーだけではなく白銀をも倒しいずみまでも引き入れるとはな……」
ボクは思った。
ベルゼブブの感覚に、自分と似たなにかを感じた。
「もしかして寂しい?」
ボクの突然の言葉にベルゼブブは固まる。