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1-5-3 状況説明?穂香の行先?

 ハティはミカンジュースに満足したのか、飲んだ後けぷっとゲップをして、俺にくっついて眠り始めた。マジで可愛い奴だ。拾って正解だ……この子のおかげでささくれ立っていた心は完全に癒されている。

 「ハティちゃん可愛いですね」
 「ああ、とても生後2日目とは思えないよね」

 「え!?その子まだ産まれて2日目なんですか?」
 「未熟児で生まれて、母親のお乳にもたどりつけない程弱ってて、俺が見つけた時は羊水に濡れたまま出産の後の血の充満した場所で死にかけてたんだ。従魔契約をすると食事は俺の魔力で賄えるようになるので、食べる力は無かったけど、そのおかげで命を救う事が出来た」

 「そか、私同様森の中でその子も先輩に救われたんですね。でも先輩はこんな森の中で一人で何してるんですか?」
 
 「その事なんだけど、今からその事も踏まえて話の続きをするね。さっき言った5つのグループなんだけど、最初は7つあったんだよ。野球部と女子マネージャー1名のグループと女子寮A棟に居た女子だけのグループなんだけど、野球部はオークに襲われて壊滅した。マネージャーは一命は取り留めて、女子寮に引き受けてもらってたんだ」

 「この世界のオークって、定番どおり女を孕ませる設定なんですか?」
 「ああ、どうもこの世界は日本のラノベやアニメ、ゲームなんかの世界観を取り入れて創られた比較的新しい世界なんだそうだ。ちなみにステータス画面がこれなんだけどね」

 そう言いながらタブレットを開いた。

 「タブレットPC……」
 「まんまそうなんだよね。フレンドリストがあって、メールやコール機能、チャットもできるし、カメラ機能まであって画像保存もできる高性能ステータス画面なんだ」

 「あの、コール機能って……沙織を呼び出して会話とかできるのですか?」
 「ああ、できるよ。でも穂香ちゃんは今はまだできない」

 「え?どうしてですか?」
 「今からそれを説明するけど、まずは今の派閥の説明から順番にね。途中で話がずれちゃうと言い忘れが出てくるかもなんで、時系列順に話すから質問はできるだけ最後ね」

 「分かりました」
 「女子寮A棟組は現在体育館地下にいる。現在の体育館地下組は最初体育教師2名と男子バスケ部と男子バレー部と女子数十人が居たんだけどね。どうなったか分かる?」

 「まさか!?まさかですよね?」
 「まさかとは?」

 「女子を巡っての殺し合いとか、男子による集団レイプとか……映画じゃあるまいし。無いですよね?」
 「そのまさかなんだよね。と言うより、被災地では性犯罪は必ず起こってるんだよ?映画だけの話じゃないよ。男子バスケ部3人と体育教師の吉本が女子を皆の前でレイプしたんだ。止めに入ったそこのリーダーだった江口先生とバレー部男子、バスケ部1名の男子はレイプ犯4人によって全員切られて殺された。助けを求められて俺と柳生先輩とで助けたんだけど、バスケ部2名は柳生先輩に、吉本は俺に、主犯のキャプテンだった奴はレイプした女子たちの手によって死亡という結末なんだ」

 「凄く重い話ですね。先輩は女子を助けるために人を殺したのですね……」
 「ああ、なんで警戒されるのを分かってて今その事を話してるかも説明するから、怖がらずに最後まで聞いてね」

 「はい、聞きたいです」
 「さっきも言ったけど、この世界は出来てまだ新しいそうで、俺たちの世界より人口がかなり少ないんだって。それを解消するために男女とも俺たちの世界より性欲が3倍程に高まるらしい。女子は排卵前後の数日間は3倍ほどに性欲が高まり、良い匂いのフェロモンをまき散らすそうだ。それを嗅いだ男は、性欲3倍でムラムラするようで、体育館で起こったのはその匂いを嗅いで我慢できなくなった男たちだ。だからと言って、この世界の男たちの性犯罪が多いかと思いきや俺たちの世界より少ないそうだ。理由は性犯罪は重罪で、チョッキン刑だからなんだって。しかも神が実在し恩恵を授けている。罪も神によってタブレットに記載されてしまうため、全く隠し事が出来ない。嘘が通じないんだから重犯罪は早々起こらないそうだよ」

 「その話は、先輩が殺人を私に告白した理由ではないですね」
 「まだ話の途中だからね。で、その事件のせいもあって、シェルターとして丈夫な体育館地下を女子専用にしたらどうかという案が出て、女子寮A棟のメンバーと格技場に居た剣道部女子、教員等に居た女子が現在体育館地下で共同生活をしている」

 「あの、茶道部の女子はどうしてそっちに行かなかったのか先輩知ってますか?」
 「茶道室で活動している料理部と茶道部のグループのリーダーは俺なんだ。だからさっきフルネームで3人の名前が言えたんだよ」

 「え!?先輩が?」
 「そなの、だから回りくどく穂香ちゃんに説明したんだよね。さっきの話を踏まえて聞いてほしいのだけど。現在俺のグループは一切人の受け入れをしていないんだ。理由は食料とその後の面倒を見れないからなんだけど、次はその辺を説明するね」

 「あの、私は茶道部の仲間に入れないんですか!?」
 「うーん、穂香ちゃんを受け入れると、これまで断ってきた他の娘にどう説明したら良いと思う?同じ茶道部の娘だから?途中で辞めちゃった元料理部の娘も、料理部の友人も断ったのに?」

 穂香ちゃんは涙を目にいっぱい溜め、感情を押さえ切れない感じになっている。

 そんな目で見ないで……こっちの心が直ぐ折れそうだよ。

 「先にもう少し話さないといけない事があるから、説明するね。魔素をさっき抜いて延命できたけど、穂香ちゃんの命はせいぜい後3・4日なんだ」

 「え!?私、助かったんじゃないんですか?」
 「凄く楽にはなってるだろうけど、強い倦怠感があるでしょ?」

 「はい、でも空腹や疲労からきてるのですよね?」
 「いや、この世界は地球に無い魔素ってのがあってね。その力を使って魔法を発動できるんだけど、異世界人の俺たちからすれば、それは強すぎて毒素にしかならないんだよ。穂香ちゃんがだんだん弱って走れなくなったのは空腹や疲労だけではなく、この魔素が一番の原因なんだ。で、この問題は簡単に解決できる。魔獣を倒しレベルを1つ上げれば、初回時に神の創った部屋に行けて、この世界に適した体に創り変えてもらえるんだ。その部屋は本来勇者専用のスキルを貰えるチート部屋なんだけど、神の謝罪の意もあってか転移者全員にその権利が与えられたんだ」

 「じゃあ、私もレベルを上げる必要があるんですね?そして魔法が使えるんですね?」
 「ああ、この世界で生き残っていい条件は1つだけ。最初にレベルを1つ上げればいいだけなんだ。そうすればスキルを貰えて、魔法でも剣術でも体術でも自分が選択したものが得られるチート仕様になっている。茶道部の娘も今じゃオーク10頭ぐらい一人でも無傷で倒せるほどだ」

 「あの、私、ゴブリン2匹倒したのにレベル上がらないんですが何故でしょう?」
 「え!?2頭倒したの?凄いな……惜しかったね。オークなら1頭、ゴブリンなら3頭分の経験値が要ったんだ。後1頭だったね」

 「え!?そうなんですか!ああ、なんか悔しい!」
 「あの、穂香ちゃん。君のノリが軽いので先に言っておくね。よくラノベじゃ魔王を倒せば異世界から帰れる設定とかだけど、俺たちはもう二度と日本には帰れないんだよ」

 「え!?そうなんですか?まぁ、別にいいですけど……」
 「え!?いいの?随分あっさりしてるね?」

 「……私の両親は私を捨てて蒸発しちゃってるんですよね。親戚のうちで育てられてたのですが居づらくて……中学に上がる時、全寮制のあそこに入れられちゃったんです。日本で一番良い進学校だから中学から入れれば、そのままエスカレーター式で良い大学に入れるって言って。只の厄介払いなのですが、でも、私はめっちゃ感謝してますけどね。お金を出してくれてますし、大学まで行かせてくれるようです。結構お金には余裕があるようなので、私もお言葉に甘えて大学まで行かせてもらうつもりでした。なので、あちらの世界にそれほどの未練はないです。沙織が一番の友人ですので生きてて本当に良かったです」

 「そか、その沙織ちゃんだけど、オーク4頭に1時間程レイプにあっている。美加ちゃんも10分程だがオークに犯されて、その時一緒に犯された茶道部の部長は美加ちゃんの横で殴り殺されている。未来だけは被害にあってないが、美加や部長が犯されて泣き叫んでいる声を料理部の皆と聞いていてトラウマになっている。皆と合流してもオークの話は向こうから話さない限り知らん顔してあげててほしい」

 「沙織が……美加先輩も?部長死んじゃったの?」
 「嫌な話を聞かせて動揺させたくはなかったけど、彼女たちの前でそういう態度をしてほしくないから今話しておいたんだ。一番辛かったのは彼女たちだからね。何とか割り切って乗り切ろうとしてるんだ。周りや、まして親友がそんな顔したらやっぱり自分は同情されるほど穢れたんだとか思ってしまう可能性もある。災害に遭ったとか、蜂に刺されちゃった程度の事のように思わせたい。だから、知らん顔で頼むな」

 「先輩意外と優しいんですね」
 「意外とは失礼な……でも、彼女たちのプライバシーを勝手に君に話しちゃってるんだ。この意図を理解して、出来るだけそっとしてあげて、自分の意志で乗り越えさせてあげてほしい。同情とかでチヤホヤするのもダメだ。そんなの甘えて悪い方に逃げるだけだからね」

 「あの、私はやっぱり茶道部のいる先輩のグループには入れてもらえないんでしょうか?てかなんで先輩あの美少女集団のリーダーとかやってるんですか?料理部って全員美少女ですよね?未来先輩とか学園でもトップレベルで可愛いし、美加先輩も沙織も可愛いですよね?どういう事です?」

 「あの地震があった時が転移が起こった時なんだけどね。偶々俺が一番最初にオークを倒してレベルアップしてその事を知れたんだよね。料理部に白石菜奈ってのが居るんだけど、そいつが俺の妹なんだよ。で、部活中だった妹を助けようと急いで走って行ったんだけど、オークとやり合えるのはレベルが1つ上がってスキルを得た俺しかいないだろ?見捨てる訳にもいかず、一緒に料理部員も保護したんだよ。そしたら妹の寮の相部屋で親友なのが茶道部の未来ちゃんでね。妹は俺に未来を助けてくれって言って、偶々茶道室に残ってた茶道部員も保護したってのがそもそもの理由なんだ。沙織ちゃんは別館横の通路でオークにレイプされてたとこを見つけて救出した次第だ」

 「先輩、いろいろ助けまくってるんですね。まるでラノベの主人公みたいじゃないですか?ハーレムエンドまっしぐらですね!それで、先輩はこんな場所で一人で何してたんですか?まさか私を沙織に頼まれて態々探しに来てくれたとかですか?」

 「へ?そんな都合のいい話無いから。茶道部の皆も君の事は死んだと思ってるはずだよ。俺は食料調達と素材集めだ。この時期キノコや自然薯なんかが一杯採れるんだよ。猪や熊も食い溜めしてて丸々太って旨いそうだからね。料理部の奴ら、皆マジで料理は上手いからね」

 そう言いながら、キノコや自然薯を出して見せてやった。

 「そこは嘘でも助けにきたって言いましょうよ!私、惚れたかもしれないのにダメですね~。はぁ~沙織いいな~。私は体育館行きですか?」
 「穂香ちゃんはレベルが上がってスキルを得るとしたら、MMO的に考えてどんなジョブに就きたいんだ?」

 「ジョブ選択があるのですか?リアルでやるのは怖いけど、やっぱりどうせやるならタンクがいいな。MMOの花形ですよね?」
 「そうだね。でもMMOだとダンジョンやボス攻略での野良募集すると最後まで盾職が残っちゃうんだよな~、一番操作が難しいし、修理代や装備代が結構掛かるうえに更に回復剤ガブ飲み仕様ってのがどのMMOでも基本だしね」

 「そうなんですよね!ヒーラーとかは回復剤要らないし、軽装備だからお金も比較的かからないのはズルいですよね?でもヒーラーも結構大変な職ですよね、ちょっとミスして回復遅れて死なせちゃったら地雷とか言われて2chで晒されている人結構居ますよね」

 俺はタンクと聞いてこの娘が欲しくなった。うちでいない職だし、あると生存率やヘイト管理が安定するのだ。ヘイトとは魔獣が向ける敵対値のことだけど、これを盾職の人はスキルで自分だけに向ける事ができ、他の者にダメージが行かないようにする事ができるのだ。


 俺は美弥ちゃん先生にコールして、穂香を受け入れてもらえるように皆で相談させる事にした。

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