1-3-11 脳筋達?初めての殺人?
オープン会話に切り替えて、聞こえた第一声がこれである。
「白石!お前一発殴ってやるからな!ぜってー許さん!」
「えーと、なんで俺があった事もない奴に殴られないといけないんです?」
「お前が高畑先生に言ったんだろ?そのせいで柳生は……」
「確かに俺は皆の為に一番いいようになる案を出しましたが、それでなんで殴られなきゃならないんですか?」
「剣道部の事に口出ししやがって!柳生は俺たち男子剣道部が守るはずだったんだよ!」
バスケ部と同じようなことを言ったので、ちょっとカチンときてしまった。
「何馬鹿な事を……柳生先輩より弱いのに守るとかよく言えるな?言ってて恥ずかしくないか?」
「ぐっ……」
「この世界では性欲が3倍程強くなるらしいし、女子も排卵周期になると凄く良い匂いを発して男を魅了するんだよ。男女分けた方が良いのは脳筋のお前らでも解るだろ?実際その影響もあって、今体育館で集団レイプが起こってる。教員棟のエロ教師もいつ暴走するか分からないし、事前に対処する方が良いだろ?それでも女子を引き止めたい理由が他にあるのか?」
「うるさい!部外者のお前に関係ないだろ!」
ハァ、馬鹿を相手にするのは疲れるし時間の無駄だ。
「あーそうか、大好きな柳生さんが居なくなっちゃうんでさみしいんでちゅか~?可哀そうでちゅね~。可愛い美咲ちゃんに頭ナデナデしてもらいまちゅか~」
「お前マジで殺すぞ」
ドスを聞かせて低い声でそいつは一言言った。
どうやら俺に赤ちゃん口調で本心を突かれて完璧に切れたようだ。
「出来るならやってみろよ。自分の事しか考えて無いお前が我儘を言ってる今も、体育館では女子たちがバスケ部の男たちに強姦されてるかもしれないんだ。そんな事も解らないバカは黙ってろ、時間の無駄だ」
「「「龍馬先輩やっぱりかっこいいです!」」」
「兄様素敵です!」
「ん!脳筋バカとは格が違う!」
料理部の女子たちの黄色い援護射撃がきた。
「え!?違うんだ、俺は―――」
「「「女子の敵!黙れバーカ!!」」」
撃沈である……自業自得だな。
「白石君じゃなくて、小鳥遊君だったかな?バカが悪かったね。あいつは部屋の隅っこに行って泣いてるからもう大丈夫だよ」
「えーと、あなたは?それにさっきの奴は誰なんです?」
「俺は空手部主将をやってる高等部2年の水谷だ。さっきのアホは剣道部主将の三田村って奴だ」
「そうですか、アホに割く時間は無いですからね。消えてくれて助かりました」
「女子と男子を分けるという君の案だが、仕方ないと思う。現に今犯罪が起きてるからね。で、俺が聞きたいのは、君は今美少女たちに囲まれてハーレム状態なのだろう?」
「え!?あー、まぁ、そうですね」
「じゃあ、君もどこかに行くんだね?」
「いえ、俺は現状ここに残りますね。料理部の皆も体育館の方には行かないでここに全員残るそうです」
「なっ!じゃあ、ハーレム状態が続くのか!?俺たちには女子と離れろって言っておいて、言いだしっぺの君がそれじゃあおかしいだろ!」
「あーそうか、何か勘違いしてるようなので言っときますね。俺と彼女たちの部屋は別ですよ。俺は華道室、彼女たちは茶道室で寝泊まりしています。パーティーは一緒に組みますが、基本別ですよ」
「そうなのか……いや安心した。一緒に寝泊まりしてるのかと思って、ちょっとうらやまし……いやなんでも無い」
「料理部なので美味しい手料理は毎食ごちそうになってはいますけどね」
「「「なっ!美少女たちの手料理!」」」
あ、失言してしまった……言っちゃダメなやつだった。
どのアニメやラノベでも、学園物は可愛い女子の手料理を屋上で食べるのは鉄板なのだ。
女子に飢えた野郎たちに、美少女の手料理は憧れの1つだって事を忘れてた。
「あの、部屋が別なら格技場から俺たちも華道室に行っても良いだろうか?」
「「「却下です!!」」」
「ダメに決まってるでしょ!」
「うわ、キモッ!」
「ん!来たら殺す!」
またもや撃沈です……言葉の暴力怖いです。
料理部の娘たち容赦なしです。
「柳生先輩、マジ時間の無駄なので二人で話しましょう。それで、この後の救出ですがどうしますか?」
「私が行きます……遅かれ早かれ異世界転移を了承した私は手を汚す定めなのです」
「覚悟はとっくに出来ているって事ですか?」
「はい、向こうにいた時に既にさんざん悩んで結論は出ています。只、殺さなくて済むなら一人も殺したくはないです」
「まーそれはそうでしょう、俺も同じ気持ちです。それと格技場の男たちは結局どうするのです?教員棟と合併するんですか?」
「あれこれ指示されるのは嫌だそうで、ここに残るそうです」
「そうですか、先に言っておきますが、中等部の別館は俺以外男子禁制にしますので立ち入った瞬間に殺すって伝えといてください。遊びに来たとかふざけた言い訳も聞きませんから、来るなら死ぬ気で来いって言っといてください」
「本気でやりそうで怖いです。ちゃんと言っておきますね。じゃあ、私はこれからすぐに行ってきます」
「あ、俺も行きますので体育館の前で合流しましょう。今回の事件の何割かは責任を感じていますので……」
「解りました……でも、どう言い訳しても悪いのはバスケ部員ですよ?」
「勿論そうですけど、自分が事の発端になったのは、やはり良い気分じゃないですから」
通話を切って、さぁ行こうと思ったら桜たちがちょっと待ったをかけてきた。
「待って龍馬君、柳生先輩が行ってくれるならあなたは行かなくて良いんじゃないかな?」
「そうです兄様!柳生先輩は強いんでしょ?ならお任せしましょ」
「ん!龍馬はお留守番!」
「ありがとう。俺の心が弱いから、皆心配してくれてるんだろ?」
「ん、バレテル」
「兄様はごまかせないです……」
「そうよ。どうせかっこつけて行って、また病んで帰ってくるんでしょ。なら最初から行かなきゃいいじゃない」
「言い方は辛らつだけど、桜たちが心配してくれるのは素直に嬉しい。でも柳生さん一人に汚れ仕事をさせたくないんだ。柳生さんも初めて人を殺すことになるんだし、多分平気じゃない筈だ。同罪の仲間が出来る事によって、彼女の負担が少しでも減るなら俺はそうしたい」
「井口さんの事といい今回の事といい、優しいのは美徳だけど、それであなたが傷ついてちゃ意味ないでしょ」
「大丈夫だ!傷ついたらまた沙織ちゃんのポヨポヨで慰めてもらう!それでもだめだったら最終兵器の桜のボヨンボヨンで慰めて貰えれば大抵の事は完全復帰だ!」
「またすぐそうやっておちゃらけた振りしてごまかそうとする……」
「おっぱい比べられたうえで、完膚なき負け宣告されてしまいました。私のはポヨポヨで桜先輩のはボヨンボヨンですから仕方ないですよね」
「あ、違うんだ。そうだ!桜のはきっと大きすぎて垂れてるはずだ!きっと沙織ちゃんの方が綺麗だぞ!うん、間違いない!」
「垂れてなんかないわよ!失礼ね!殴るわよ!」
「ごめんなさい!でも垂れてないのか……」
二人をちょっとからかって良い気分転換が出来た。
ここからは死闘だ……殺人をしてまで女子を襲ったやつらを生かしておけない。
日本で居た時のように、現在此処は法で守られていないのだ……甘い考えは仲間まで危険に晒す。
体育館の前で合流し、パーティー申請を行い柳生先輩と初パーティーを組む。
あいつら相手じゃ、どっちか一人ででも瞬殺なんだが、柳生先輩だけに任せるつもりはない。
地下への入口には鉄の分厚い扉がある。
防空壕を兼ねている為、ミサイルでも壊せないだろう。
スライド式になっているのだが、どうやっても開きそうにない。中から施錠してあるのだろう。
「小鳥遊君、私が切りましょう」
「えー!まさか本当に!?斬鉄剣じゃあるまいし!」
柳生先輩は刀を抜いて上段に構えた。
「あ!ちょっと待って!」
「ひゃっ!急に大きい声を出してどうしたのです?ちょっとびっくりしたじゃないですか」
「この扉切っちゃったら、せっかくの堅固な拠点が脆くなっちゃいます。勿体無いですよ」
「うーん、でも開かない事にはどうしようもないでしょ?何か考えがあるのですか?」
「ちょっとだけ待ってもらえますか。ダメだったときは切ってください」
「はい、いいですよ」
解錠用のオリジナル魔法を創る事にした。
【魔法創造】
1、【アンロック】
2、ナビー補助にて分析し、魔法や錬金術を併用して解錠する
3、イメージ
4、【魔法創造】
「【アンロック】おっ!開いた!柳生先輩いいですか?開けますよ?中の状況次第で変えますが、とりあえず攻撃は俺がやりますので、柳生先輩は女子の身の安全を優先してもらっていいですか?」
「了解しました。お互い頑張りましょう」
「【ライト】×10 中は薄暗いでしょうから一応多めに出しておきます。ひょっとしたら奴らからすれば明るすぎて目を開けられないかもしれないですので。後、各種防御バフも入れておきます【マジックシールド】【プロテス】【シェル】」
「ありがたいです。助かります」
二人で一度大きく深呼吸した後、扉を一気に開き突入した。
中に入るとと同時に【サンダーボール】が飛んできた。
向こうも、はなからやる気満々のようだ。
勿論シールドでこちらにダメージは無い。
「ゲッ、白石に剣道小町!」
「よう、随分やらかしてるみたいだな?」
「あなたたち、まさか全員犯したんですか!」
柳生先輩が言うように、女子たち全員裸にされ皆すすり泣いている。そしてバスケ部の三人も全裸だ。
いや、もう一人裸の奴がいる。体育教師の吉本だ。
「おい白石、下手に近づくとこの娘の首が切れちゃうぞ」
吉本は裸の女子の首にナイフを当てて、下卑た笑いをしながら胸をまさぐっている。
「柳生先輩、まだ駄目ですよ。ちょっと待っててね」
『ナビー、俺が今吉本を殺したらやり過ぎとかで殺人罪になるのか?』
『……いえ、既に向こうは殺意を込めて魔法を放ってます。相手方に殺意があるので全く問題ないです。全員やっちゃってください』
『ナビーってユグドラシルのコピーなのに過激だよね?』
『……ナビーの理念はマスター基準ですよ?マスターのイメージどおりなのですから』
聞きたくない事を聞いてしまった……俺の影響だったとは。
「柳生先輩、神のシステムに問い合わせたところ、こいつら全員やっちゃっても俺たちに殺人罪は付かないそうです。安心してやっちゃいましょう。四人いるので2・2でいいですか?」
「小鳥遊君ありがとう、これで心置きなく切れます」
無詠唱の【ウィンダラカッター】で吉本の腕2本を切り落とす。
ホーミング機能を使ったので、仮に動いたとしても女子に当たる事は万が一も無い。
申し訳ないのは、抱き付かれていた裸の女子に、奴の血がシャワーのように降り注いでしまった事だ。
直ぐに彼女に近づき、奴から引き離し【クリーン】を掛けて全身を綺麗にしてやる。
吉本はまだ生きてるが殺してやらない。そう簡単に死なせない、出血死するまで放置だ。
泣きわめいてうるさいから【音波遮断】を掛けておく。
少しは苦しんでから死ね!
柳生先輩は既に2年と3年のバスケ部員の首を落として、辛そうな顔をしている。
残りはキャプテンの藤井だけだ。
「ちょっと待ってくれ!俺が悪かった!殺さないでくれ!」
「高井とバレー部男子はどうした?」
「俺の亜空間倉庫に入ってる……」
「全員殺したのか?お前キャプテンだろ、何で後輩の高井まで……」
「最初はみんな殺す気なんか無かったんだ!皆で俺を見下すから悪いんだ!」
「そうか、もういい。吉本と他のバスケ部の死体を回収しろ」
気付いたら体育教師の吉本が大量出血で死んでいた。
「自分でやりゃーいいだろ!」
「俺の倉庫に遺体なんて入れたくないからお前が回収しろ」
動こうとしない藤井の足に剣を突き刺した。
「ぎゃー!くそっイテー!何するんだ畜生!」
藤井にヒールを入れもう一度言う。
「さっさと遺体を回収しろ!」
「ふざけんな!」
また剣を突き入れる。今度は両足に。そしてヒール。
自分でも残虐な事をしてると思うが、少しも良心が傷まないのはなぜなんだろう。
「そんなに早く死にたいならもう殺すけど」
「解った!言うとおりにするから殺さないでくれ!」
やっと動き出した。
「小鳥遊君?殺さないの?」
「柳生先輩、少し考えがありまして……後で教えます」
「そうですか。お任せします」
「先輩大丈夫ですか?かなり顔色悪いですよ」
「はい、大丈夫ですよ」
柳生先輩は手が震えて立ってるのがつらそうなほど顔色が悪くなっている。
そういえば、この人は俺と違ってどこまでも善の人だった。
かなり無理してるんだろうな。
「美咲ちゃん、本当に大丈夫?」
「美咲ちゃん!女子以外に初めて言われました!」
「嫌だったらごめんなさい!年下なのにやっぱダメですか?」
「いえ!なんか言われ慣れてないせいか新鮮です!私も名前で呼んでいいですか?」
「もちろん良いですよ」
「では、桜さんたちのように、龍馬君と呼びますね」
柳生先輩の顔色がさっきより随分良くなった。名前呼びで気を他に向けさす作戦が成功したみたいだ。
一時凌ぎだが、あのまま倒れられるより良いだろう。
「美咲ちゃんは女子のケアお願いします。俺は血だまりの掃除とかしますので」
「分かりました。藤井君の事は龍馬君に任せますね」
俺は【クリーン】で床にできた血だまりを浄化していった。
遺体の回収を終えた藤井に【音波遮断】を張って声を遮断した。
慌てた藤井はなにか喚いてるようだが、声が外に漏れないようにしたから俺には何を言ってるのか解らない。
【魔糸】で縛って【魔枷】を嵌め【レビテト】で宙に浮かせる。
「龍馬君、縛ってどうするの?」
「このまま森に連れて行き殺します」
こっちの声が聞こえる藤井は暴れだしたが、エビゾリ状態で縛られ宙に浮かされている為何もできない。
「どうせ殺すなら直ぐに殺してあげた方が良いのではないですか?苦痛を長引かせるような事は私は好きじゃないです!」
「美咲ちゃんは優しいですね。でもここで殺すとこいつが【亜空間倉庫】内に保管してある死体が全部この場にぶちまけられてしまうのです。ちょっとした惨事になるので外に行くわけです」
「ごめんなさい。そこまで思いも付きませんでした。料理部の娘たちが一目置くわけですね。私なんかより賢くて、ずっと勇者みたいです……」
「可愛い美咲ちゃんが勇者じゃないと絵になりませんよ。俺が勇者の小説なんか誰も読んでくれないです」
「え~と……何の話をしてるのですか?」
「物語にはそれなりの資質が要るって話ですよ。では、今回の悪話回を終わらせてきますね」
「待ってください!そいつを殺すなら私にやらせてください!」
「俺が言うのもなんだけど、私怨は良い結果にならないよ?」
「そいつの亜空間倉庫に私の友達が入ってます!私たちを言いなりにさせる為に、態と殺すための女子を数人残して私たちの目の前で殺したのです。言う事を聞かなければ同じ目にあわすって……とても残虐に見せつけるように痛めつけて殺しました。絶対そいつを許さない!」
「解った。そこまでの覚悟があるなら君にこいつをあげるよ。好きなように殺せばいい」
「龍馬君!彼女の気持ちも理解できますが、でも……」
「多分美咲ちゃんには彼女の気持ちは理解できてないですよ。理解できているつもりなだけです。本当の気持ちは強姦され友人を殺された彼女にしか解りません」
夜中に森に入るのは危険なので、野球部のグラウンドに行き藤井を処分させた。付いてきた女子は四人。俺に言ってきた女子だけじゃなかったのだ。
相当な恨みを買ったのだろう【音波遮断】まで切ってほしいと言われ、グラウンドでは20分程藤井の絶叫が響き渡った。
真っ先にチョッキン刑は勿論、回復魔法を駆使し、かなりの苦痛を強いられて藤井は殺された。
人はここまで残虐になれるのかと思ったが……奴がやったことを思えば自業自得だ。
藤井が息絶えて【亜空間倉庫】が解放され、殺された友人が出てきたようだ。
彼女は友人を抱きしめ暫く泣いた後、俺にお礼を言ってきた。
怨みを晴らせば、多少でも気が晴れる事を俺は知っている。何もせず我慢するのは一番よくない。
恨みの対象が亡くなった事で、彼女たちもこれからの人生を前向きに生きてほしいと思う。
四人の女子を連れて体育館に戻った。
体育館には女子寮組と剣道部女子が既に合流していて、そこには井口さんの姿もあったが俺は無視した。
やっとこれで落ち着くと思ったのだが、森里先生から新たな事案が起こってる事を聞かされる。
まだまだ今夜は眠れそうにない。