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「知ってる」
ジルが一言そういった。
「え?」
「ん?どうした?」
ジルが首を傾げている。
「いえ、なんでも……」
ボクが弱気に首を振る。
「あのな。
ボク」
ジルが、言葉を続ける。
「俺はお前が咎人だからって特別扱いしない。
差別もしない」
「え?」
ジルの口から前世のジルとは想像がつかない言葉がボクの耳に届く。
「ジャキ。
お前もだ」
「ああん?」
ジャキは、とぼけたふりをする。
「お前も咎人なんだろ?」
「なにを……」
ジャキの心が乱れる。
バレてしまった。
気づかれてしまった。
どこで?どうして?なぜ?
ジャキの心が乱れる。
「見ればわかる。
気づいているのは俺だけじゃない」
そういってジルはベラの方を見る。
「あたしにもわかっているんだからね!」
ベラがにっと白い歯を見せる。
ジャキはわかっていなかった。
信じていなかった。
いや、信じたかった。
信じれなかった。
友だちの。仲間の気持ちを……
「すまねぇ」
ジャキは、謝った。
「気にするな!」
「だが、俺には記憶があるってことくらいで力はないんだ」
ジャキがそういうとボクもいう。
「俺にもそんな力はないんだ」
「まー。なんとかするしかない」
すると今まで黙っていた裕也が口を開く。
「みんなで僕を殺してくれ」
「なにを言っているんだ?突然」
ジルがそういって驚く。
「僕の痛伝ならあるいは……」
裕也の言葉に新一が首を横に振る。
「そのためには、モトフミを視界に入れないとダメだろ?」
「ん?どういうことだ?」
ジルの言葉に裕也が答える。
「僕の能力は痛伝。
それは、自分の痛みを他人へ移すことがでいるんだ」
「凄いな。
最強じゃねえか」
ジルは驚く。
「でも、その能力を発動するには僕が一度でも視界にいれなければいけない」
「そうか……
万能じゃないんだな」
「うん」
裕也の言葉に一同が静まる。
「でも、俺はその作戦には賛同できない」
「どうしてだい?」
ジルの言葉に裕也が尋ねる。
「だってそれをすると裕也さん死ぬんじゃないのか?」
「うん」
「俺らは死んじゃいけない。
もう誰も戦争で死なせてはいけない。
そのための同盟だろ?」
「でも、放っておけば死ぬんだよ……?」
「そんときは死ぬだけだ」
ジルが小さく笑った。