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「ククククククククク。
はははははっはは!」
「う……」
アスペルガーの笑い声がこだまする。
「いい姿になったな!ピノ!」
「あ……」
ピノがうめき声に近い声を上げる。
ピノの両手両足は特殊な拘束具で束縛され動けないでいた。
そして、ピノは獣に傷つけられ続けた。
「アスペルガーさま」
一匹のワーウルフがアスペルガーに近づいてくる。
「どうした?」
「男がひとりこの屋敷に侵入してきたようです」
「それがどうしたというのだ?
殺せばいいであろう?」
「それが咎人でして……」
「ほう?もしかしてボクか?」
「はい」
ワーウルフがそう返事をするとアスペルガーが嬉しそうにうなずく。
「わかった。
今すぐここに通せ」
「かしこまり――」
ワーウルフは、そこまで言葉を放ったとき首が消えた。
ワーウルフは血が流れることなく絶命した。
「誰だ?お主は」
「ボク……?」
ピノが小さくその少年の方を見る。
「うん」
「すごいね。
ワーウルフ倒せた」
ピノが小さく笑う。
「メガネのおかげだよ」
ボクも小さく笑う。
「メガネ……?
だったらそんなもの破壊してやろう!」
アスペルガーが、そう叫ぶとボクに飛びかかった。
しかしボクにはアスペルガーの身体を素手で弾き飛ばした。
「ボク。
凄いね。とっても強いよ」
ピノが弱々しい。
「さぁ。帰ろう」
ボクがそういうとピノがいった。
「うんん。私帰れない」
「どうして?」
「私ね汚されたんだ。
だから、ボクのところに……お嫁さんになれない……」
「え?」
ボクは、驚く。
「私、汚されたから……」
ピノの声が弱々しい。
「そうだ!ピノを置いていけ!
そしたら、お前の命だけは助けてやろう!」
アスペルガーの提案にボクは首を横に振る。
「なんでだろう。
あのときは君のことがとても恐ろしく感じた。
だけど、今はただの犬にしか見えないよ」
「貴様!我を侮辱する気か!!」
アスペルガーが牙を剥く。
「犬に犬って言って悪いのかな?」
「黙れ人間!?」
アスペルガーが牙に魔力を込める。
ボクは、アスペルガーの言葉を無視してピノの身体につながれた拘束具を外した。
「な、なにをした!
その拘束具は複雑な魔法器具で出来ているのだぞ!
それをいとも簡単に!」
「ピッキングは得意なんだ」
「なにを言っている?」
「犬にはわからないか……」
「貴様は、何度我を侮辱したら気が済むのだ?」
「消えろ!犬……」
ボクがアスペルガーを睨んだ。
「……ならば」
アスペルガーはピノの方を睨む。
「あ……」
ピノが苦しむ。
「ピノになにをしたの……?」
「今、ピノに呪いをかけた。
この呪いはボクには解けまいて……」
アスペルガーが笑う。
「なにをしたの?」
ボクがもう一度問う。
「さぁ。最後まで楽しむんだな。
咎人としての余生をな!」
アスペルガーが、そう言い残し姿を消した。