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 青年は、両手を拘束された状態で部屋に入れられる。
 そして、ジョーカーが尋ねる。

「まず名前だな」

「あっしの名前は、ピロシキでやんす」

 ボクにはそれが嘘だと思った。
 ピロシキは、自分の前世のときに存在した芸人の名前だ。

 でも、ボクはなにも言わない。
 それが嘘だという確信が持てないからだ。

「で、目的は?」

 ジョーカーの声が低い。

「ちょっとした悪ふざけでやんす」

「はぁ?
 お前喧嘩売っているのか?」

 ジョーカーが、そういってピロシキの胸ぐらをつかむ。

「べんべんべんべん」

 ピロシキがそういうとジョーカーの目の色が変わる。
 そして、無言でピロシキの錠を外す。

「ジョーカー?」

 一花が、そういってジョーカーの肩を叩く。

「あ?」

 ジョーカーが我に返る。

「あっしの能力は、冗談で怒った相手を数秒操れるんっすよ」

「え?」

 一花が驚く。

「笑わなかった相手を操るんじゃないの?」

「あっし、こう見えてデモニックなんですよ」

「デモニック?」

 ボクが首を傾げる。

「人間の世界で言う咎人のことよ。
 つまり複数の特殊能力を持った人のこと」

 プレゲトンがそういって手を刃物に変える。

「……ほう?
 その刃であっしを殺す気ですかい?」

 ピロシキがそういってサングラスを付ける。

「そうよ!さようならピロシキ!」

 プレゲトンが、そういってピロシキの身体を刃で斬りつける。

「いえいえ、これからお世話になるので。
 はじめまして人間です」

「お世話?」

 プレゲトンの刃は、ピロシキの素手で掴まれる。

「なにをしておる?」

 そういって現れたのはアザゼルだった。

「お、アザゼルさんじゃないっすか。
 あっしを言われぬ罪で殺す気ですよ?この人たち」

 ピロシキがそういうとアザゼルはボクの方を見る。

「ボク。説明できるかいのう?」

「えっと……」

 ボクはわかる範囲でアザゼルに事情を話した。

「そうか、一花、ジョーカーすまない。
 そして、プレゲトン、ボク、紅鮭。
 主らもすまない、この男ピロシキはワシの友人の孫じゃ」

 アザゼルの言葉に一花は眉をしかめる。

「そうなのですか?では、なぜあのような行動を……?」

「ちょっとしたお遊びでやんす」

 ピロシキが答える。

「遊びって……?」

 紅鮭が少し驚く。

「すまない。
 こんな調子でコイツ就職してもすぐクビになるそうでの。
 友人に頼まれてアンゲロスに雇ってやるように頼まれたのじゃが」

「あっしは、自分より能力が低い人のところでは働きたくないのでやんす」

「あははは。
 面白いことをいうわね。
 ここにいる一花もジョーカーもあなたより強いわよ?」

 プレゲトンが笑う。

「そうでやんすね。
 でも、あっしが操れば――」

 ピロシキが、そこ前言いかけたとき。
 背筋が凍る。

「だったら殺せばいい」

 その言葉に恐怖におののく。

「あ、亜金くん?」

 ボクは、驚く。
 亜金のその声の色は、今まで聞いたどの言葉よりも。
 残酷で冷たかった。

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