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そして、ボクの長い1日が終わろうとしていた。
あのあとアンゲロスという組織がどういうものなのか説明を受けた。
種族は神族及び天使族であるものの。
テオスに属さない組織だということがわかった。
ただそれだけで、アンゲロスはテオスの攻撃対象になっている。
敵の敵は味方。というわけではない。
だが、アンゲロスは人間と敵対していないことを聞いてボクは安堵した。
誰もいない部屋。
亜金はプレゲトンと同じ部屋にいる。
寂しくはない。
虚しくもない。
自分はひとりなんだと思うと少しだけ泣きたくなった。
前世ではひとりだった。
孤独でもあったが寂しくはなかった。
それが当たり前だったからだ。
しかし詩空孤児院に行ってからは孤独なんか感じる暇はなかった。
賑やかな毎日。
自分のあとに来た亜金たち。
さらに子どもたちは増えていきボクの顔にも笑顔が増える。
自分はこの世界なら上手くやれるかもしれない。
そう思っていた。
そう思って忘れていたひとりのさみしさ。
孤独とは、ひとりのときには感じない。
ひとりじゃないときにひとりになってしまったときに感じるものが孤独なのだ。
「はぁ……」
ボクがため息をつく。
「ため息をつくとしあわせが逃げますよ?」
女の子が歯を磨きながらボクの方を見ている。
「え?」
「どうかした?」
「ここ僕の部屋じゃ……」
「はい、私は紅鮭。
こう見えて立派なメイドなの!
ボクさんのお世話係なのでよろしくね!」
「お世話係?」
「はい。
ボクさんは要警護対象者なのでこうやって私が来たの」
「そ、そうなんだ……」
「はい。
さぁ。ボクさんも歯を磨きましょう」
「う、うん」
ボクは紅鮭と一緒に歯を磨いた。
「キレイキレイしましょうねー」
ボクは横目で紅鮭を見た。
紅鮭はボクの好きな女性のタイプだった。
小柄で気さくで優しそう。
胸もある。
意識すれば意識するほどボクの胸の鼓動が早くなる。
「あ、ボクさん」
「あ、はい。
なんでしょう?」
「欲情しないでくださいね」
「え?」
「私のはそんなによくないらしいので」
「何の話?」
「わからないのならいいのです」
紅鮭は、歯を磨くとそそくさとベッドに横になった。
ボクは口を濯ぐとソファーに横になる。
「どうしてこっちこないの?」
紅鮭の質問にボクは顔を赤らめる。
「えっと」
「一緒に寝るのだよ?」
「え?」
ボクは驚く。
「ボクさんを護るのが私の仕事だから。
だから、おいでー」
紅鮭がそういって掛け布団をパタパタと仰いだ。
「う、うん」
ボクは顔を真赤にさせながら紅鮭の隣に横になった。
「さぁ、寝るのです!」
「うん」
ボクは目を閉じる。
眠れない眠れない眠れない。
「眠れないのならキスしようか?」
「え?」
紅鮭はそういってボクの口唇にキスをした。
するとボクは静かに眠りに落ちた。
「私の能力はスリーピングキス。
キスしちゃうとみんな寝ちゃうんだ」
紅鮭はそう呟くと自分も静かに眠りについた。