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御子柴からユイへの想い⑭




コウたちと別れた後、次は真宮のところへ向かう。
「おぉ、ユイか。 どうした? 何かあったのか?」
心配そうに尋ねてくる彼に、結人は一枚のメモを手渡した。
「今から北野も連れて、ここに書いてある場所へ向かってほしい」
すると真宮は、あからさまに困り始める。
「あー・・・悪い。 今日もこの後、御子紫と一緒に帰る予定でさ。 御子紫が今の状態になっていなかったら、ユイの命令だし喜んで行くんだけど・・・」
「それは大丈夫だよ」
「え?」
「御子紫は俺に任せて、真宮にはここへ行ってほしい。 それで、できれば優を止めておいてほしい。 暴走しちまうかもしれないからな」
「優? 優もそこにいんのか?」
説明不足な命令に戸惑っている真宮をよそに、結人は微笑みながらこう返す。
「・・・真宮。 頼んだよ」





真宮と別れた後、次は椎野のもとへと向かった。
「ユイ、どうした? 大丈夫か?」
「心配してくれてありがとな。 俺はもう大丈夫だよ。 それでさ」
相変わらず心配をしてくれる彼に感謝しつつも、早速本題を切り出す。 真宮とは内容が違う一枚のメモを、椎野に手渡した。
「このメモ、後で夜月と一緒に読んでくれ」
「ん、読むだけ?」
「いや、読んでからその通りに実行してくれればいい」
「実行? 実行って?」
真宮と同様、雑な命令に困惑している彼を前に、結人は優しく微笑んだ。
「読めば分かるよ」





そして椎野と別れ、最後にもう一人の少年のもとへと向かった。 その彼の名は――――御子紫勇気。 1組へ足を運ぶと、御子紫が一人で教室にいるのが目に入った。 バッグを手に取り席を立つ。
そのまま教室を出ようとしたところで咄嗟に呼び止めた。
「・・・ユイ」
「・・・御子紫。 今から俺と一緒に、付いてきてくれるか?」
御子紫とは最近関わっていなく、会話することが久々で緊張していた。 それだけではない。 結人は御子紫が日向からいじめられていると知っていたのにもかかわらず、何も動こうとしなかった。
だから彼の前に現れる資格なんてないと思いつつも、意を決して姿を現したのだ。 別に許してもらおうだなんて思っていない。 

ただ――――御子柴を助けるチャンスが、今しかないから。 

御子紫はその言葉を聞くと、気まずそうに視線をそらした。
「・・・悪い。 今日は少し、行くところがあって」
「大丈夫だよ。 御子紫の予定には後で俺も一緒に付いていってやるから、今は俺に付き合え。 真宮にも、俺が先に断っておいた」
「・・・でも」
「命令だ」
あまり今は“命令”という言葉を使いたくはなかったのだが、自分の誘いを断り続けるため仕方なく口にしてしまった。 “命令”という言葉を聞くと、彼は嫌々ながらも小さく頷いてみせる。
―――悪いな、御子紫。
―――本当は俺と一緒にいたくないと思っているだろうに、無理に付き合わせちまって。
直接言わず心の中で謝罪をし、結人は仲間のことを考え始めた。

―――今頃みんな、ちゃんと集合しているかな。


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