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「うむ。
 失礼をした……」

 覆面の男は深々く頭を下げた。

「え?」

「この魔力の低さは、そこら辺の犬よりも低い。
 そんなモノがイリアを拘束する力はない」

 男は、そういって再び頭を下げる。

「そうだよ。兄さま。
 ボクは私をテオスのフィサフィーから救ってくれたんだよ」

 覆面の男と老人が、フィサフィーの名前を聞くと目つきが変わる。

「フィサフィーに捕まっていたのか?」

 覆面の男が、イリアの身体を触る。

「え?」

 イリアが戸惑う。
 老人も魔力を目に込めてイリアを見る。

「悪い魔力は感じんな……」

「なにもされなかったか?」

 覆面の男にそう尋ねられたイリアは一瞬険しい顔をした。
 だがすぐに笑顔に戻る。

「うん、フィサフィーにはなにもされていないよ。
 それにボクに力で助けてもらったし」

「この坊主にフィサフィーから救う力があるのか?」

 覆面の男は、そういってボクの方を見る。

「あ、それ思った。
 あの拘束具を外すのには、それ以上の魔力でこじ開けるか魔力数式を解くとかしないと無理だよ?
 一瞬で外すなんて凄いよ?」

「あ、うん。
 白銀先生から、戦闘以外のことはある程度叩き込まれたんだ。
 解術方程式とかは、才能あるって褒められたよ」

「白銀?」

 老人の目が細くなる。

「はい」

「そうか……」

「知っているんですか?」

 ボクが笑顔になる。

「あの光を放った存在が誰かわかっておるのか?」

「カリュドーンさん?」

「カリュドーンだと?笑わせるでない。
 ヤツは、アンゲロスの基地深くで眠っておるわい」

 覆面の男がそういって言葉を続ける。

「あの光は白銀の力だ!」

「え?」

 ボクの頭がまっしろになる。

「ボクどうしたの?」

「白銀先生じゃない!あの人は――」

 ボクは訂正しようとした庇おうとしただけど勇気が出ない。

 イリアの目が。
 覆面男の顔が。
 老人の言葉が。

 白銀を疑っている。
 庇えば自分も敵になる。

 今までそうだった。
 自分がジルにいじめられたきっかけは、名前も知らない女の子を庇ったからだ。

「ボク。
 話してくれるか?」

 老人の言葉が、深く突き刺さる。

 でも、勇気を出さなければ。
 勇気を出して白銀を護るんだ。

 ボクは、勇気を出して全てを話した。
 自分の知っている白銀のことを……
 全て。

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