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御子柴からユイへの想い⑩




そして、次の日になる。


未来&悠斗

未来「どうして日向の机の中が空っぽなんだよ!」
悠斗「え、既に片付けたんじゃないの?」
未来「じゃあ何で日向はあんなにニコニコと笑ってんだよ! 普通は怒って、犯人を突き止めるだろ!?」
悠斗「あぁ、そうか・・・」


細田&真宮&御子柴

真宮「次は教科書に落書き、か・・・。 まぁ、頑張って消すか」
細田「気を落とすなよ、御子紫」
御子柴「・・・」


未来&悠斗

未来「聞いたか? 教科書に落書きだってよ」
悠斗「じゃあ次の時間、1組は移動教室だから、みんながいなくなってから動こうか」


コウ&優

優「うわッ! 何、この落書き・・・。 酷いなぁ、表紙にも落書きされているよ」
コウ「・・・まぁ、消そうぜ。 教室から筆記用具を取ってくるから、ちょっと待ってて」
優「うん・・・。 何か、ここまでされると日向が可哀想に思えてくるなぁ」


未来&悠斗

未来「なッ、どうして落書きが消されてんだよ! さっきはちゃんと分かりやすく、表紙にも落書きしたよな!?」
悠斗「したね。 ・・・でも、本当にどうして消えているんだろう。 授業中にでも、日向が消したのかな・・・」


細田&真宮&御子柴

細田「・・・酷いな。 筆記用具まで壊すのかよ」
真宮「大丈夫だよ御子紫。 新しいヤツ、放課後に一緒に買いに行こうぜ」
御子柴「・・・」


未来&悠斗

悠斗「え・・・。 本当に、筆記用具をハサミで切り裂くの・・・?」
未来「こ、心は多少痛むがそうするしかないだろ・・・! 日向が御子柴にやったこと、そのままお返ししなきゃなんねぇんだし・・・ッ!」


コウ&優

優「え、次は筆記用具が壊されたの!? いや、流石に筆記用具はマズいでしょ! お金かかるし! そうだよね、コウ!?」
コウ「ん・・・。 優、あのさ。 この日向の筆記用具って、優と全く同じ物、だよな・・・?」
優「・・・うぅ、分かったよぉ」
コウ「またいつか、新しい物を買いに行こう。 それまでは俺の前の筆記用具を、使っていてもいいから」
優「うん・・・」


未来&悠斗

未来「ッ、はぁ!? さっき壊したはずの筆記用具がどうして元に戻ってんだよ! 意味が分かんねぇ! これこそ意味が分かんねぇ! 一番意味が分かんねぇー!」
悠斗「・・・」





1年5組

彼らがそのようなことをしている間、結人は一人席へ着きぼんやりと教室の中を見渡していた。 真宮の姿は見られないため、おそらくは御子紫のところだろう。 藍梨は友達と楽しく盛り上がっている。 
そんな中、結人は誰とも話さず御子紫のことを考え続けていた。
―――・・・俺は御子紫のことを、本当に救えんのかな。 
大切な仲間が今酷い目に遭っているというのに、何も行動を起こせない自分自身に荒く深い溜め息をつく。

頭を抱え込みながら一人悩んでいると、椎野と北野が突然目の前に現れた。 そんな二人に一瞬驚くも、どこか心配そうでどこか不安そうな顔をしている彼らに、平然を装って尋ねかける。
「おう。 どうしたんだ?」
「いや・・・。 御子紫のことが気になってさ。 最近アイツ、どうなんだ?」
彼らは御子紫と仲がよく、いつも一緒にいる二人だった。 だから彼のことが気になってもおかしくない。 だが結人はその問いに、上手く答えることができなかった。
「・・・悪い。 今は俺、御子紫とあまり関わっていねぇから・・・。 御子紫の今の状態は、あまり把握できていないんだ」
「・・・そっか」
その後少しだけ嫌な空気がこの場に流れ込むが、場を読んだ北野が結人に向かって必死に話しかける。
「ユイはさ、中立な立場でいるよね?」
「中立な立場?」
突然尋ねられ、すぐに返事ができなかった結人はそのまま聞き返す。 それに小さく頷いた北野は、続きの言葉を口にした。
「うん。 ユイはもちろん、御子紫の味方でしょ? でも御子紫がいじめられているからといって、いじめている奴を完全に敵に回すということはしないよね?」
「あ、あぁ・・・。 まぁ」
―――日向を完全に、敵に回す・・・。
―――コウたちに日向の面倒を見てもらっている以上、それはないな。
その答えを聞いた二人は、安心した表情を結人に見せてきた。
「でもさ」
「?」

「ユイはいつも中立な立場でいようとするけど、最終的には悪い奴らを思い切り懲らしめるよな」

そう口にしながら、椎野は笑う。
―――最終的に?

「あぁ、分かる。 中立な立場から、最後は一気に俺たちの味方につくよね」

続けて北野も、その意見に付け足すよう口にした。
―――最後は一気に俺たちの味方につく、か・・・。
結人は自分のことをよく分かっていないため、彼らに言われてようやく自分自身について考え始める。 

「色折」

二人と一緒に御子紫のことを話していると、突然聞き慣れない声が耳に届いてきた。 そちらへ視線を移すと、忌々し気な顔をした日向がドアの前に立っている。
「ッ・・・」
「ちょっと来いよ」
目が合うとその言葉だけを言い残し、返事も聞かずに日向はどこかへ行ってしまった。 そんな勝手な言動にもかかわらず結人は何も言わずに席を立ち、見失う前に後を付いていこうとする。
「あ、おいユイ!」
だがそれが危険な行為だと察した椎野は咄嗟に結人の腕を掴み、日向のもとへ行くことを阻止した。 だが結人は彼に向かって、首を左右に軽く振る。
「俺は大丈夫だよ。 ありがとな」
そう言って椎野の手を優しく振り払い、一人教室を出た。


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