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「ボク!ボクは幾つなの?」

 ピノが、ボクに抱きつく。

「え?」

 ボクが驚く。

「何歳?」

 ピノの目がまっすぐとボクを見つめている。

「16歳かな。多分」

「ピノと一緒だね!
 ピノのこと好きになっていいよ?」

「えっと」

 ボクは戸惑う。
 積極的な女性はボクは知っていた。
 だけど自分に積極的な女性はいなかった。
 そのため、どういう風に接していいかわからない。
 だから戸惑う。

「おう!ボク愛されてるじゃねぇか!」

 灰児が嬉しそうに笑う。

「愛……?」

 ボクは、愛を知らない。
 愛って何かわからない。

「ん?」

 灰児が不思議そうな顔をしている。

「愛したらどうなるんですか?」

「愛を知ったら世界が変わるぞ?」

 灰児が優しく微笑む。

「変わる……んですか?」

「うん、変わるよ」

 新一が答える。

「どんな風に?」

 ボクの声が低い。

「優しくなれる」

 裕也がそういうとボクの頭のなかに疑問が残る。

「そんなの嘘だ……
 ボクより愛を知っている人たちは優しくなかった」

 ボクの心の声が言葉になりピノたちの耳に届く。

「ボクに優しくすればピノのこと愛してくれる?」

 ピノが尋ねる。

「わかんない。
 だって僕は愛を知らないから……」

 ピノはボクの身体をぎゅっと抱きしめる。

「暖かい?」

「え?ああ、うん。
 今日は寒いからね。
 ピノさんの身体は暖かいよ」

「暖かいは愛だよ」

 ピノが嬉しそうに笑う。

「え?」

 しかし、ボクにはわからない。

「ピノも暖かい。
 ボクも暖かい。
 世界がこの暖かいに包まれたら戦争はなくなるんだよ?」

 ピノが嬉しそうに笑う。

「戦争か……
 なくなるといいね」

 ボクの声が消え入りそうだ。
 悲しくないのに涙が出そうになる。
 泣いても世界は変わらない。
 だから、泣かない。
 すると灰児がベースを召喚する。
 そして奏でる。

「なにを唐突に……?」

 新一がそういうと灰児が笑う。

「俺らは何者だ?」

「何者って言われると勇者だね」

 新一がそう答える。

「違う!俺らはですますスイッチ!
 ミュージシャンだろ?
 コイツの心に響くメロディを奏でるんだ」

 それを聞いた裕也が笑う。
 そして、ギターを召喚する。

「そうだね、ボクくんの心を溶かしちゃおう」

 裕也がそういうと新一がうなずく。

「奏でよう。
 このメロディを」

 新一は、バイオリンを召喚し奏でる。

「よーし!じゃ、ピノは歌う!
 ボクも歌おう!!」

「……でも、ボクはその歌を知らない」

「いいの!歌詞は心から湧き出るものだから!
 きっと湧き出るよ」

 ピノが歌う。
 聞いたことのない歌を……
 ボクはぎこちなくピノの後を追うように歌を歌う。
 なにを言っているかはわからない。
 だけど、心から声が湧き出る気がした。
 観客なんていない部屋。
 そこでボクは歌う。
 誰に送るでもない歌を。

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