花火の夜
花火のできる空き地を求めて歩き回っていた僕たちはやっといい感じの原っぱを見つけた。
近くに住居はなく、騒いでも見咎められることがなさそうな場所だ。ただ街灯もないので火をつけるまで闇の中だった。
買い集めた花火セットの袋をスマホの明かりの中で開け、各自思い思いの花火を取り出して火を点けた。
色とりどりの火が噴き出し始めると辺りが明るく照らし出された。
うおぉぉと叫びながら花火を振り回す奴、残像を楽しむように静かに円を描く奴、音と色の変化を座ってじっと見つめている奴とそれぞれの性格に合わせ遊んでいる。
光に浮かぶ顔はみな楽しそうだ。
僕も大好きなねずみ花火を点け、足を跳ね上げてはしゃいでいた。
ふと漂う煙の向こうに人影が見えたような気がして足を止めた。じっと目を凝らしても僕ら四人の他に誰もいない。
次々と仲間たちが点ける花火の光で何度も確認したがやっぱり僕たちしかいなかった。
形を変えていく煙が見せた錯覚なのだと思い、ほっと胸を撫で下ろす。
だが、風に棚引く煙の中に再び人影を捉えた。
一人二人ではなかった。
「噴水花火をつけるぞっ!」
「おうっ!」
仲間の声がし、数十秒の暗闇の後、しゅうううと豪快に火が吹き上がった。
みんな歓声を上げているが、辛うじて光の届く地面にたくさんの裸足が見えていることに誰も気づいていない。
噴水花火が小さくなって消え、真っ暗闇になる。
「やめろよ。引っ張るなよ」
という声がした後、みんなの凄まじい絶叫が闇を裂いた。