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藍梨との初めての休日④




「それじゃ、次は夜月ー!」
未来の言葉を聞いて、夜月はその場に立ち上がりボウリングの玉を手に取った。 だが彼の様子を見て、未来は急に慌て出す。
「え? ちょ、ちょちょちょ、夜月ぉ!?」
そう言いながら近寄ろうとするが、夜月のもとへ着く頃には既に彼は玉を投げていた。 結果はストライク。
「ん?」
投げ終えた彼はゆっくりと振り返り、不思議そうな表情で未来のことを見つめた。 
そんな夜月に、未来は少し怒ったような拗ねたような強い口調で、彼に向かって物を言い放つ。

「何だよそのグローブ! いつ持ってきた! つか、よく見るとシューズもだしー!」

「え、夜月はボウリング上手かったの? コウは何でも完璧にこなすから大体は想像付いていたけど、まさか夜月がマイグローブやマイシューズまで持っているなんて意外だったわ!」
真宮が彼らのやり取りを聞いて目を輝かせ、興奮した様子を見せた。 そんな真宮の方へ夜月は一瞥するが、すぐに未来の方へ視線を戻し冷静に言葉を返していく。
「何だよ未来。 ボールは重かったから、流石に持ってこなかったぞ」
その返事に、未来は更に食い付いていく。

「いや、そこじゃないんだわ! そういうことじゃなくてさー!」





「お、夜月の奴グローブとシューズを持ってきていたのかー」
未来が悔しそうな、妬いているような声を大きく出しているため、隣のレーンにいた仲間にも彼の声が耳に届いていた。
椎野が未来たちのことを見ながら楽しそうに呟くと、近くにいる優も続けて口を開く。
「そうらしいね。 夜月はカッコ良いなぁ」
羨ましそうに夜月のことを見据えるそんな優を見て、椎野は気を遣うよう彼に声をかけた。
「・・・優は、コウと一緒のグループじゃなくて寂しかった?」
一方申し訳なさそうな表情を浮かべる椎野を見た優は、笑いながら首を横に振る。
「ううん、別に。 コウは近くにいるし、大丈夫だよ」
その後は御子紫、椎野、北野の順で投げていった。 結果はみんなそこそこいいが、御子紫がこの中では少し上という感じだった。





未来と夜月が未だに言い合っている間、今度は真宮が投球する。 結果は8本からのスペア。
「真宮も上手いんだなぁ」
そう言いながら、悠斗は真宮に向かって微笑んだ。
「まぁ、普通だよ普通。 ほら、次は未来だぞー」
なおも夜月と言い争っている未来にそう促すと、彼は独り言をぶつぶつと言いながらも投球を開始した。 そんな未来を横目に、真宮はスコアの方へ目を向ける。
「つーか、この調子じゃコウと夜月の勝負になりそうだな」
その言葉に反応した悠斗は、優しい表情を浮かべた。

「まぁね。 でもそんなのは、いつものことだよ」





「椎野ー・・・。 俺にも教えてくれー・・・」

一方結人は、このまま最悪な結果になるのを避けるため椎野に助けを求める。 そして、彼のアドバイスのおかげか――――投球の結果、何とか6本倒すことができた。
「やっぱりユイが投げると曲がるよなー。 フォームはいいんだけど・・・スナップが効き過ぎてんのかな・・・?」
結人の投球を後ろで見ていた椎野が、呟きながら悪いところを探してくれている。 そんな彼をよそに、次は優が投球した。 
優もボウリングが上手く、余裕でスペアを取る。 次は藍梨。 彼女はまた、椎野からサポートを受けていた。 

その結果――――ストライク。

「やったー!」
「おぉ、藍梨凄いな!」
自分がストライクを取るなんて思わなかったのか、彼女は一瞬驚いたような表情を浮かべるもすぐ笑顔になり、ストライクを喜んだ。
彼女に続いて結人も表では素直に喜ぶが、内心では少し妬いている。 

―――先にストライクを取られるなんて、彼氏としたことが・・・!

「藍梨さん才能あるね! きっと、憶えて慣れるのが早いんだろうな」
一方椎野は藍梨に向かって微笑みながら、そう褒めていた。





未来の一投目、6本。 二投目、ガター。
「あー!」
未来は夜月と言い争った以降、どうやら調子が狂ったようだ。 にもかかわらず、コウは調子がよく9本からのスペアを取る。 悠斗は9本と、負けじと彼らに付いていた。
次は夜月。 やはり夜月は、何度見てもフォームが綺麗だった。 結果、彼はまたストライクを取る。
「見応えあるなー、コウと夜月の試合は」
彼らの結果を見ながら、真宮は楽しそうに笑っていた。





次は御子紫の番。
―――よーし、こうなったら・・・!

「御子紫ー! 外してもいいぞー! 外しても何も言わないからなー! 一回ミスっても、罰とか何もないんだしー! 気軽にいけー!」

結人は大きな声で、彼にプレッシャーをかけてみた。 御子柴はプレッシャーに弱いということを、結人は昔から知っていたためできたことだ。 
そして、投球した結果――――計、7本。
「ユイー! プレッシャーかけるようなことを言うなッ!」
「はははッ! 御子紫がガターとかウケるー!」
御子紫が怒りながら文句を言ってくるのに対し、結人は腹を抱えて笑い出す。 結人たちはこの後大したトラブルもなく、この繰り返しでボウリングを無事終えることができた。





続いて、コウの番。 ストライク。 続いて、夜月の番。 9本からのスペア。 続いて、コウの番。 8本。 続いて、夜月の番。 9本からのスペア。
他のメンバーの真宮たちは、二人の投球に釘づけとなっているため自分の番の投球が適当になる。 ストライク。 スペア。 スペア。 ストライク。 スペア。

コウと夜月の、結果は――――





「はいはい、俺がおごりますよー」

結果――――Aグループで負けたのは、結人だった。 この結果は既に目に見えていたため、今更何とも思わない。 ちなみに一番いい成績を出したのは、御子紫だった。 

―――・・・悔しい。

藍梨は上達が思っていた以上に早く、教えてもらったことを素直に実行するためいい結果がたくさん出た。 その結果に彼女は満足している。
「ねぇ、コウ。 そっちは誰が勝ったの?」
優が隣にいるコウにさり気なく尋ねると、彼はその問いを聞いて苦笑した。

「勝ったのは夜月だよ。 やっぱり、手強かったな」

コウと夜月はボウリングへ行くたび、実際勝負をしていなくても勝手に互いをライバルだと認識して投球するため、最終的には熱が入り凄まじい試合になってしまう。
それは誰が見ても分かることだった。 結果を聞くと、コウは夜月に4点差で負けたらしい。
Bグループは未来が途中で調子を崩しつつも何とか粘り、結果悠斗が負けてしまったようだ。 負けたと言っても、結人の方がかなりの差で負けているのだが――――
「今度椎野と一緒のグループになったら、ボウリングのやり方を教えてもらって絶対に上達するから!」
悠斗が珍しく、大きな声でそう断言した。
「おう。 悠斗が上達したら今度俺とボウリングへ行って、どのくらい上手くなったのか見てやるよ」
幼馴染の決意を聞いて、未来は微笑ましそうに言葉を返す。

この後結人たちは、他の場所へ寄り道したりして適当に時間を潰した。 夜はみんなで近くの焼肉屋へ行き、そこで夕食をとる。 
ここは学割があり、かつ人数が多いとより割引が効くため、結人たち学生には嬉しい店だ。 焼き肉を食べながら盛り上がっている時間は、最高に幸せだった。 
そしてこの楽しい思いのまま、藍梨との初めての休日が終わりを告げる。


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