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19

 飛んでくる石。
 それに当たる頭。
 痛い……

 ボクは涙を流す。

 でも、誰もかばってくれない。
 ボクは、毎日のようにひどい扱いを受けていた。

 ボクは耐えるしか出来ない。

 反撃するものなら倍返しされる。
 もっとひどい目に合う。
 それがつらい。
 それを耐えなければいけない。
 それに耐えれない自分がつらい。

 だから静かに泣くしか出来ない。

 ただひたすらひたすら。
 ぐっと我慢する。

 それが自分の人生なんだと思っていた。
 死ぬまでこのまま。
 そんなの嫌だ!

 抵抗しようとする。
 しかし、自分をいじめる男。
 ジルが叩きのめす。

 ボクは、その時初めて気づく。

 ああ、これは夢なんだと。
 夢と気づいた夢。
 それは、目覚めの合図。

 ボクは目を開ける。
 朝になっていた。
 ベッドのシーツがべっとりと濡れている。

「夢」

 ボクが小さく呟く。
 部屋の扉をノックする音が聞こえる。

「あ、はーい」

 ボクが返事をする。

「あの、朝ごはんできたから呼びに来ました」

 女の子の声がする。
 ボクと同じ歳くらいだ。

「はい」

 ボクはゆっくりとベッドを降りると扉を開けた。
 そこには可愛らしい女の子の姿があった。

「あ、おはよう」

 女の子が笑う。

「……おはよう」

「えっと自己紹介するね。
 私の名前は、シエラ・シエル。
 貴方は?」

「僕の名前はボクだよ」

「ボクくん?」

「うん、変わった名前でしょ?」

「そっかな?
 もっと変わった名前の子いるよ?」

「そうなの?」

「うん、魔王の娘の万桜ちゃん。
 神族の王の息子のかみさま」

「え?」

 ボクにはシエラがなにを言っているのかわからない。

「万桜ちゃんとかみさま。
 同じ歳だから仲良くしてね!」

 シエラが、そういうとボクの手を引っ張った。

「あ……」

「行こう!」

 シエラがそのまま走る。
 ボクもそのまま走る。
 そして、向かった場所は食堂。
 そこは賑やかでボクの目には新鮮に見えた。

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