12
「大丈夫?えっと」
タマがボクの方を見る。
「僕の名前は、ボクだよ」
「そっか、ボク。
ボク、どこで産まれたの?」
タマが優しく言った。
「わからないんだ。
僕は捨て子だから」
「そっか。
あのね、もしここを出れたら詩空孤児院を尋ねて」
「え?」
ボクには何のことだかわからない。
すると部屋の外が騒がしくなる。
「逃げるよ。
ボク」
タマが、そういったとき。
尻尾が7本になっていた。
そして、一本の尻尾を刀に変えた。
その刀で壁を切る。
穴が開く。
「ここから逃げて、詩空孤児院ならあなたを護ってくれる。
あなたの能力もそこで発動しない」
「でも、タマさんが……」
「私ね、妹がいるの。
あなたと同じくらいの歳のね。
だから、おせっかいを焼くね」
タマが優しく微笑む。
「タマさんは、逃げないの?」
「うん、私は戦うわ」
「誰と?」
「テオスという敵と」
「テオス?」
「時間がないから早く逃げて。
なにがあっても絶対に振り返らないで」
ボクは覚悟を決めて逃げた。
雨が降ってきた。
ボクと同じ歳の子どもがいた。
「あの君も逃げたほうがいいよ!」
ボクは、その子どもコレクターに誘拐された人だと思った。
「逃げる?僕が?」
「え?あ、うん」
「逃げるってことは、誘拐された子か……」
子どもの言葉にボクは思った。
もしかして、この子も敵なのかと。
「逃げるのは君の方だよ」
ボクは警戒した。
「早く!ここは僕が持ちこたえさせる」
「君は誰?」
「僕は、13。
それ以下でもそれ以上でもない」
「13くん?」
「うん、君はどうするの?」
「僕はここに残る」
「え?」
「僕も戦う。
君は逃げて」
「でも……」
ボクの言葉に13はうなずく。
「僕は傭兵なんだ。
だから戦う」
13は、手のひらの銃を召喚した。
そして、ボクに向かって撃った。
銃弾はボクにかすめることなく後ろに飛んでいった。
「ぐあ」
後ろから悲鳴が聞こえる。
「え?」
ボクが振り返るとオークが一匹胸を押さえて倒れている。
「さぁ、逃げて……早く!」
13の言葉にボクは頷きそのまま走り去った。