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RCH-41 ワルキュリオン:2

『我が門弟を一撃で!?』
 驚愕もつかの間、その未知のヘヴィネス級が突然大加速を行い、援護砲撃機に肉薄し細身で分かりにくいが明らかにこちらの首ほどある左腕を殴りつける。
    ***
『あらよっと!』
 左腕に2つの半透明の青き刃が並び、航空機械などにあるプロペラに似た構造のそれが、回転を始める。
 試作防御武装、魔力の障壁を少ない範囲覆った状態で回転させ、少ない魔力消費でなかなかの防御力を得る。
 着いたあだ名は、『ダメージカット』。
 由来は、ズタズタになっていく哀れな文字通りのスプラッターを見れば分かっていただけるはず。

『ヒット&アウェイってな!』

 敵が迫った瞬間、大きく後方に放物線を描くよう跳躍して包囲網を突破、再び三機合流して後ろへ進み始める。

『あんた、近接戦になったら死ぬほど強いわよねぇ?』
『好きじゃないんですけどね……得意なんですよ、俺もワルキュリオン(コイツ)も!』
『凄いですよ!一瞬でミドリュアとは言え二機だなんて!!』
『上級少尉殿はこうやって褒めてくれるから俺好きなんですよ!
 どっかのエルフのお姉さんと違って!』
『評価はしてあげてるのよ、これでも!』
 と、リナリアは右腕に持つクロスボウに似たヘヴィネス級用実弾ライフルを、弓のように構える。
 カメラアイから光学情報を、及び頭から生えるブレードアンテナから魔力場の乱れと周囲の大気の状態を一瞬で検知し情報をフィードバック。
 腕部を調整、目標決定。
 引き金を引き、4.72ウィンチ50口径の砲が、装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)を飛ばす。

 数秒後、追いつくべく迫っていたエグゼキューターの額を綺麗に命中。
 距離にして1.7メイルの距離。
 一般的交戦距離の限界ギリギリだ。

『後は、射撃だけね。あんたも機体も射撃がド下手だし』
『いやいや、高射砲改造兵器つっても、普通はあの距離直射できんでしょ、ねぇ?』
『エルフすごいです……!』
『か弱いイメージだと思ってる?
 冗談!オークと親戚みたいなものよ?毎日弓で色々殺して食ってたんだから!』
 腰と腕の武器を適当なタイミングで撃つだけで、相手の機体のコア部分が正確に撃ち抜かれる。
 さっきまでのは「当てるつもりのない」攻撃だったらしい。
『あの、二人共、そろそろ後退しないと包囲されます。
 隊長とガストンさんもそろそろ先についたはずですし向かいましょう』
 と、アニエスは電子線探査装置(レーダー)と魔力反応感知器の2つを見て指示を飛ばす。
『オッケェ、マリナー少尉!』
『年上で一応上官な子の言うことは聞かないとね!』
 ふざけた返答でも操縦は一流。
 素早く後ろへ跳躍し、にわかに増え始めた敵機を大きく引き離す。

    ***

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