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第八話 「不死」

 ドアを開けると、そこには冠を被ったおっさんが立っていた。

 冠を被るということはアレか? コスプレとかしちゃうイタい人か?

 フェラリーが耳打ちしてくる。

「アーツさん、あの人、この国の王様ですよ?」

 えぇ……。あんなおじさんが……?
 というか何でエルフの村にいたはずのフェラリーが僕よりも王国について詳しいのだろうか。

―――――――――
名 前:ドゴーン・テラリア
性 別:男
年 齢:56
種 族:人間
職 業:テラリア王国王
スキル:「カリスマ」
装備スキル:「魔法適性(光)」「超感覚」
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―――――――――
カリスマ:他人を心酔させる。
魔法適性(光):光魔法に適性を持つ。
超感覚:五感を強化する。
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 なるほど、なかなかにいいスキルを持っている。王にふさわしい。
 そして、さすが金持ちと言うべきか、スキル付与の装備を2つも持っている。

 だが、スキルの数なら僕の方が圧倒的に多い。
 もし戦いになっても僕なら多分恐らくきっと勝てると思わないでもない。……勝てるよね?
 まあ、相手の強さは未知数だけど僕なら勝てるだろう。

「そのエルフ達を返してくれてもう襲わないって約束してくれるのなら引き下がります」

 ここは交渉していくべきだろう。
 いや、交渉と言うには一方的すぎるか……。

「はっはっはっ、面白い冗談じゃないか……」

 温厚なおじさんみたいな雰囲気を醸し出していた国王殿は一転、ものすごい殺気を放ってきた。
 僕でも一瞬ドキッとし、フェラリーに関しては硬直している。エルフ達の中には失禁して失神してるやつもいる。

「では力ずくで行かせて貰いますよ」

 僕は「魔法適性(強化)」で強化魔法を自分に、「魔法適性(付与)」で付与魔法をフェラリーに掛ける。
 ちなみに強化魔法と付与魔法の違いは強化の対象が自分が他人かだ。強化魔法は他人にかけることはできず、付与魔法は自分にかけることはできない。

 剣を抜き、それにも付与魔法をかける。そして付与魔法と同時に火魔法も発動。付与に乗っかって火魔法の魔力も剣に送られていく。
 「魔法適性(付与)」というスキルの存在を知って思いついたことだ。

 「魔法剣」。

 僕はこの剣をそう名付けた。
 魔法によって重さは変わらずに威力や耐久性を強化することに成功した。

「ふむ、『創造』か……。面白いスキルじゃな」

 ギルドあたりから情報が流れたか?

 そして僕は床を蹴って国王に肉迫する。
 しかし、「超感覚」によって床を蹴った音でも捉えられていたのか、あっさりと避けられる。さらには、装備によって手に入れられたスキル「魔法適性(光)」によって放たれた光の矢が光の速さで僕に飛んできて、勿論そんなスピードの矢を避けられるわけもなくあっさりと僕の心臓に突き刺さる。

「ぐぅッ……!」

 心臓に矢が突き刺さる痛みに、僕は床に倒れ込む。

「ぐぐぅッ……!ぎぃッ!」

 呻くことしかできない。

 フェラリーが僕を心配して駆け寄ってきた。

「がああああああああッッッ!!!」

 できるだけ叫んで痛みを緩和させようとする。
 僕を抱き上げたフェラリーの手が一瞬で血に染まる。
 もうダメかもしれない。

「フェラリー……あとは……たの……」

 僕はフェラリーに今後を任せたと伝言を頼み……

『パタンッ』

「アーツさんっ、アーツさんっ……」

 彼女は泣き叫ぶ。まだ2日程しか出会ってから経っていないと言うのに。
 本当にいい子だ。





 まぁ、僕「不死」スキル持ってるから死なないんだけどねっ!

 刺さっている光の矢を思い切り引っこ抜く。途端に一際強い光を放ち、魔力へと還元する。
 痛みはあるが死ぬ気は全くしない。

 フェラリーがほっとしたような、それでいて気恥ずかしそうな顔をしていた。
 そりゃあ相手が死んだと思って泣き叫んだでたのにそれが間違いだったのだ。
 僕だったらその場で泣き崩れる。三日三晩ベッドから出れない。

 驚くフェラリーを尻目に、僕は再び国王と向かい合う。
 国王はさほど驚いた素振りを見せない。恐らく「超感覚」によって強化された聴覚でしっかり心臓の音を聞き取っていたのだろう。

 国王は僕が光の矢を避けれないと踏んだのか、再び放ってくる。
 しかし、同じ過ちを二度繰り返すほど俺は愚かじゃない。矢を放つ直前の、魔力を込める一瞬で矢がくるタイミングを予測。矢を避けつつ接近し、諸々の魔法で速度と威力を強化した拳を叩き込む。
 国王は吹っ飛んでいき、壁にぶつかった。恐らくもう意識はないだろう。

 ささっとフェラリーに縛ってもらう。

 こんなことをしたら犯罪に当たるが、今回はエルフ達の奪還をするという大義名分があるから問題ないだろう。
 それに、平和な国として通しているこの国にとってあのようなことをしていたとバレることは致命的だ。
 とにかく、今回は犯罪として捉えられることはない。

「「ふぅ」」

 実際は矢ぶっさされて、その後顔面を殴り返しただけなのだが、やたらと長く感じた。そして疲れた。
 さっさと国王を起こして交渉して帰ろう。そんなことを思っていたときだった。

「フェラリー、ドゴーン様に何してるのよ!」
「そうだ! よりによってドゴーン様を縛り付けるなんて頭おかしいのか?」

 国王の後ろで黙ってことの顛末を見ていたエルフ達が口を開いた。
 しかし、それは無理やり連れてこられたことに対する怒りや助けに来たフェラリーへの感謝ではなく、国王を縛ったことへの非難。

「……え?」

 フェラリーは何を言われたのかわからない、という顔をしていた。
 僕には何となく理解できた。
 つまり、国王の「カリスマ」がそれほど強力だったということだ。無理やり連れてきたエルフを手懐けてしまう程度には。

 立ち尽くしている僕達に魔法が殺到する。
 僕は盾を張りながら呆然としているフェラリーを抱えて走り出す。

 こうして僕、フェラリーチームVSエルフ軍団の王城鬼ごっこが幕を開けたのだった。

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