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第四話 精霊との契約

 僕はスキル「過去視」を、「創造」によって創りだした。

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過去視:視界のみを過去に遡らせる。
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 つまりこのスキルの効果は、今僕の視界に映っている場所の過去が見れるということだ。このスキルを使えば御神木を誰が燃やしたのかがわかる。
 だけどひとつだけ問題がある。 
 どうやって2人を誤魔化そうか。
 キーだけならスキルを教えてしまってもいいのだが、さすがに初対面の竜族に自分の手の内を晒してしまうのは危険な気がする。

「どうしたのじゃ?『創造』を使えば一発だろうに」

 ……何かスキルバレてるし……。

「どこでそのスキルのことを知ったんだ……?」

 僕はジト目で彼女を見ながら聞く。

「竜族にはそういうことをできる奴がいてのう。それよりもさっさと使え」
「はぁ、そういうことなら……」

 僕は「過去視」を発動する。

 徐々に見えている光景が遡っていく。

 ん? 人が火から出てきた?
 しばらく待っていると火から人が出てきた。つまり、徐々にさかのぼっているのだからその人は自ら炎の中に入っていったということだ。

 ……どういうことだ?

 更にしばらく見続けると火の中から出てきた火が老人の手の中に返っていった。そして後に火は残らない。老人が炎を吸い取ったみたいだ。
 これから読み取れることはひとつ。老人が手から火炎を放ち、御神木を燃やしたということ。
 犯人はその老人で間違いないだろうが、その老人がもう既に火の中なのだから情報調査はできない。

「残念じゃったな」
「はい……」

 竜族の幼女がそう言ってくる。
 本当に残念だ。調査ができないということは竜族の里に行けず、上位精霊と契約できないということだ。

 ……ん? なんで竜族の幼女がもう情報調査ができないということを知っているんだ?

 もしかしてこの幼女のスキルが関わっているのだろうか。

 まずは鑑定で竜族の幼女を見る。

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名 前:レヴィ・ドラゴニア
性 別:女
年 齢:121
種 族:竜族
職 業:未設定
スキル:「魔法適性(時空)」
種族スキル:「人化」
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 うーん……。「過去視」と同じ効果が得られたり僕と視界を同調したりはできなそうだな。

 しばらく無言で考え込む。

 そして頭に浮かぶひとつの閃き。

 僕は新しいスキルを「創造」する。

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魔力視:視界に映る魔力の流れを見ることができる。
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 魔力というのは体内に存在し、それを変換すると魔法になる。そして魔法を撃つと少なくない量の無駄な魔力が外に放出される。
 「魔力視」を使うと、この無駄に漏れ出た魔力から魔法を使った形跡を読みとれるのだ。

 「魔力視」に「過去視」を組み合わせて過去の魔力の流れを見る。
 老人が放った魔法以外にも魔法が使われた形跡がある。

 僕はニヤリと口元を上げる。
 これでようやくひとつの仮説が完成した。

 僕の仮説はこうだ。
 レヴィは仲間の竜族で御神木を燃やせるほどの魔法適性を持ってるやつを連れてきて、この木を燃やさせた。
 そして、その竜族に火の中に入って行かせ、その中でレヴィのスキル「魔法適性(時空)」を使い転移。
 僕たちがきたところで現れてこれを解かせる。
 自演ってやつだな。

 レヴィが手掛かりがなくなったことを知っていた理由と過去の魔力の流れを考えるとこれくらいしか思いつかない。

 あくまでも仮説であり証明したわけではないので、少々不安に思いながらもこれをレヴィに伝える。

「その通りじゃ、よく解けたのう」

 やはり合っていたらしい。情報量の少なさからかなり補完して組み立てた仮説だったから正直不安だった。

 彼女が言うには強力なスキルを持ったやつがいるということを感知した竜族は監視役を送ったそうだ。
 そして、僕が御神木に来るということを監視役が知り里に報告。
 先回りして僕を試したということらしい。

 そして恐らく試すだけでなく強力な駒を味方に付けたかったのだろう。
 竜族は個々の戦闘力は高いが、長寿故に数が少なくめったに生殖行為を行わない。
 他の種族と戦争などが起きたら、最悪絶滅の可能性もあるのだ。
 だからわざわざ犯人を見つけたら竜族の里に招くなどと言ったのだと考えられる。

「さあ、犯人を見つけたから竜族の里へ行かせてもらおうか」
「ああ、わかっておる。っとその前に……」

 しっかり燃やした御神木を元に戻しておくのも忘れない。
 御神木を元に戻したあとで僕達は竜族の里に転移した。

 ……「魔法適性(時空)」って本当に便利な能力だなあ。僕も後で創っとこうかな。
 因みにこのときの僕は「魔法適性(全)」に含まれていることを忘れているのであった。

 ▼

 僕逹は竜族の里に行き、翌朝、日が昇るまで客人として盛大に歓迎された。
 人間の街では到底食べることのできないような珍しい食べ物がたくさん出て、僕もキーも満足だ。

 そして翌日、いよいよ精霊と契約するために森へと出発した。
 精霊は人の魔力を探り、自分と契約しても良いと思った者とだけ契約する。
 ここからは完全にキーひとりにかかっている。

「さあ、この辺の木から好きな物を選ぶが良い」

 キーは無言でしばらく立っていたが、やがて一本の木を選んで触れる。

「ふむ、良い木じゃ。見る目はあるようじゃの」

 レヴィがそう言うのだからそうなのだろう。

 触れたまま目を閉じ、しばらくするとキーと木が光に包まれた。

「むう、何という魔力じゃ」

 「魔力視」を使わなくても分かるほど濃密な魔力が森中に溢れる。

 しばらく経つとその魔力が全てキーに収束されていき、光が徐々に弱まっていく。

 こうしてキーと上位精霊との契約は完了した。

 ▼

「じゃあまたな~」
「ばいばいレヴィちゃ~ん」

 僕とキーは僕の「魔法適性(全)」に含まれるスキル「魔法適性(時空)」で帰ることにした。
 ここでレヴィとはお別――

「――いや、わらわもついて行くぞ?」
「「へ?」」

 僕とキーの声が見事にハモった。

 こうして僕達のパーティーにレヴィが仲間に加わったのであった。

 はぁ、ギルドに何て言い訳すれば良いんだろう……。

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