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合成実験

1
少年が運んできた二人の幼い少年をベッドに寝かせる。そして、二人の容態を診ていた沙羅がふと動きを止めて、眉をしかめた。
「これは!!……朔耶、この子達は何処で?」
「街の北側の入り口に倒れてたんだ」
朔耶と呼ばれた少年がそう返す。
「……そう。間違いないわね」
「間違いないって、何が?」
「これを見て」
沙羅が二人の少年の首もとを指す。
花音と風夜がその部分を覗きこむと、そこには【O-16】と【R-17】と書かれたタグがついていた。
「これは?」
「……恐らく、この街の北にある研究所から逃げてきた子達ね。可哀想に。このタグがつけられているなら、もう実験に使われてしまった後なのね」
「実験?何の実験なんだ?」
「……合成実験」
「えっ?」
「二つ以上の種族を掛け合わせて、別の種族を造りあげる。一人の研究者が始めた合成獣……キメラの実験よ。この二人は、その実験の被害者ね」
そこまで沙羅が言った時、二人の少年がほぼ同時に身動きする。
それに気付いて花音達が様子を窺っていると、彼等はゆっくりと目を開いていき、突然飛び起きた。
「黄兄さんっ!」
「黄兄!黄兄がっ……!」
二人して起き上がった所で、傷が痛んだのか動きを止める。それでも、また直ぐに動き出した二人に、花音は慌てて声を上げた。
「ち、ちょっと!」
「黄兄さんを助けないと……」
「黄兄だけじゃない。彼処にはまだ大勢の……」
花音の声が聞こえていないのか、扉へ向かおうとする二人の前に沙羅が立ち塞がり、ニコリと笑う。
「あなた達の気持ちはわかったわ。でも、今は駄目。ベッドに戻りなさい」
「そんな、早く……」
「戻りなさい」
繰り返し言う沙羅の笑みが深くなる。
それを見た二人は、何も言い返さず頷いていた。
「さぁ、じゃあお互いに自己紹介しましょう」
二人がベッドに戻ったところで、沙羅がにこやかに笑って言う。
「先に二人からね」
笑みを向けられ、二人はコクリと頷いた。
「俺は、紅牙」
「僕は、蒼牙」
「ふふ。良くできました。私は、沙羅。それから、花音に風夜、朔耶、この小さいのが私の使い魔の瑠璃よ。それで」
花音達を簡単に紹介して、沙羅が笑みを消す。
「貴方達、二人は北の研究所から逃げてきた実験体……違う?」
「……そうだよ。黄兄さんが逃がしてくれたんだ」
「だから、俺達は助けを呼んでこようと思って……」
そこまで言って、紅牙と蒼牙は花音達を見た。
「お願いです!僕達に、力を貸して下さい!」
「……だそうだけど?」
「えぇっ!?」
蒼牙の言葉を流すようにして、聞いてきた沙羅に花音は声を上げる。
「だって、私はどちらでもいいもの。でも、あなた達は目的があって来たのだから、どうするかは二人が決めていいわよ」
その言葉に紅牙と蒼牙がすがるような視線を向けてきた。
「……まぁ、話を聞いたらほっとくわけにはいかないよな」
「そうだね。……うん、わかった。協力するよ」
風夜と顔を見合わせてそう返すと、紅牙と蒼牙は表情を明るくした。
「決まったみたいね。……瑠璃」
「はーい。じゃあ、ちょっと調べてくるから、待っててね」
沙羅が瑠璃を呼ぶと、彼女はそれだけで何を言おうとしたのかわかったらしく、開いていた窓から外へ出ていく。
「あれ?何処に行ったの?」
「北の研究所に偵察にね。情報なしに行くのは危険だから、私達は瑠璃が戻ってきてから行きましょうか」
その言葉に花音達は頷いた。

暫くして瑠璃が戻ってきてから、花音達は合成実験が行われているという研究所まで来ていた。
「こっち、こっち!」
一度中を調べてきたという瑠璃が、花音達を案内するように飛んでいく。
「それで、他の人達が捕まっている牢は何処にあるんだ?」
「この先にある大広間の先だよ」
走りながら問い掛ける朔耶に、紅牙が答える。
「……にしても、妙だな」
「んー、そうねぇ」
「何か気にかかるの?」
花音の隣にいた風夜と沙羅に聞き返す。
「ここまでが順調すぎるんだよ」
「ええ、向こうにとって、私達は侵入者。何も妨害がないのは、おかしいと思ってね」
それを聞き、花音は前を走る朔耶と紅牙、蒼牙へと視線を移す。
彼等の先には、大きな扉があるのが見えた。
扉を開くと、そこが大広間だったらしく、広い空間が広がっていた。
中に入ると、部屋の中心に巨大な檻が置かれていて、その中から不気味な唸り声が聞こえてくる。
「何?この声……」
「ようこそ。招かれざるお客さん達」
花音が呟いた時、巨大な檻の後ろから一人の男が出てきた。
「あいつだ!あいつが皆を……!」
「皆を、……黄兄さん達を返して!」
「ん?……なるほど。お前達の仕業か、O-16、R-17。逃げ出しただけでなく、部外者を連れてくるとは、悪い子達だ」
声を上げた紅牙と蒼牙に、男はそう返し、懐から何かのスイッチのようなものを取り出した。
「これはこの檻の開閉スイッチだ。これを押した瞬間、檻は開き、私の最高傑作であり、失敗作であるキメラが解き放たれる」
「失敗作?」
「そう。強大な力は持っているが、理性を失った。一度出せば、止めるのは簡単ではない。だが」
言いながら、男がスイッチを押す。
「此処に入ってきた者を、生きて返すわけにはいかないのでな!出てこい、K-01」
「グアアァン」
開いた檻から出てきたキメラは、花音達の三倍はありそうな巨体だった。

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