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第15.5幕 試練

1
「えっ!?舞ちゃんが!」
「ああ。どうにか封魔が連れ出して、刹那が帰したらしいけどな」
驚いたように声を上げた花音は風夜を見る。
「でも、どうして舞ちゃんを?」
「……もし、天華の転生者が舞だったとしたら、覚醒する前に始末しようとしたってところだろうな」
「……そういえば、封魔さん、また呼び出されてたね」
「ああ。舞を逃がしたことがばれていなければ、いいんだけどな」
呟くように言った風夜が何か考えるようにする。
(……何だか嫌な予感がするなぁ)
花音はそんなことを思いながら、溜め息をついた。
その頃、封魔は麗玲と天奏のところにいた。
「……一体、今度は何の用だ?」
「呼び出された理由なら、わかってるんじゃない?」
「心当たりはないな」
「……白々しいわね」
答えた封魔に、天奏が苛立たしげな視線を向ける。
反対に麗玲は口元に笑みを浮かべて口を開いた。
「昨日、天華の転生者を捕まえてきたのだけど、一晩経ったらいなくなってたの。誰かが手引きして逃がしたみたいなんだけど、知らないかしら?」
「さあな。知る訳ないだろ」
「そうね。あなたはまだ私達に逆らうことはできない。逆らえばどうなるか、わかってるものね」
そう言う麗玲を封魔は睨む。
「……話はそれだけか。それなら」
「いいえ。本題はここからよ。……聖鈴と光麗の転生者が見つかったの。そこで、あなたと刹那っていう空間使いに協力してほしいのよ」
「!!」
その言葉に封魔は目を見開いた。
2
「刹那」
呼び出されていた封魔が戻ってくるなり、名を呼ばれた刹那が談笑していた彼女達から視線を外す。
「何だ?」
「また協力してほしいことが出来た。ついてこい」
その言葉に花音達は顔を見合わせる。
「……その様子だと、天華様の転生者を逃がしたことがばれた訳ではなさそうだな」
「……ああ。それより、少し厄介なことになりそうだ」
「どういうことだ?」
風夜が眉を顰める。
「……聖鈴様と光麗様の転生者が見つかった。その二人を捕まえておくつもりなんだろう」
(聖鈴に光麗……、どっちの名前も聞いたことがある気がする。何だか懐かしい……)
「花音、どうした?」
その時、雷牙が声を掛けてきたが、花音は何でもないと首を横に振る。
その様子を封魔と白鬼が見ていたのに、気付いて首を傾げると二人は小さく溜め息をついたのがわかった。
「……いや、何でもない。……そろそろ行くぞ」
「はいはい。……じゃあ、行ってくるな」
踵を返した封魔が歩き出し、苦笑しながら刹那がついて行く。
その二人を見送ってから、花音は白鬼へと視線を移した。
「白鬼さん」
「ん?」
「ちょっと聞きたいことがあるんです。……いいですか?」
言いながら、風夜達から少し離れた場所を視線で示す。
花音が聞きたいことは、まだ風夜達には秘密にしておいた方がいい気がしていた。
3
「それで何が聞きたいんだ?」
風夜達から距離をとった後、更に声を抑えた白鬼が聞いてくる。
「えっとですね……、神界の神子の中に光鈴って人がいたんですよね?どんな人だったんですか?」
それに白鬼は少し考えるようにする。
「……正直、あまり接したことはないから、知っていることだけでいいか?」
「はい」
「光鈴様は強い治癒能力を持っている方で、とても優しい人だった。自分よりも他人のことを優先するような人だ」
「……その人って、どうなったんですか?」
「……殺された。魔神族との戦いの最中にな。それ以外の詳しいことはわからない。誰が殺したのか、その時何があったのかもな」
「……そう……ですか」
呟きながら思いだしたのは、前に【光鈴】という名に動揺していた封魔の姿とその後の言葉だった。
ーー『俺と二人だけになるのも出来るだけ避けた方がいい』ーー
(あれはどういう意味だったんだろう?)
「……まだ何か気になることでもあるのか?」
聞こえてきた声に、まだ白鬼と話していた途中だったことを思い出す。
(ちょっと聞いてみようかな)
「封魔さんに聞いても同じようなことしかわからないですか?何か違うことを知ってたりとか……」
「いや、あいつにその頃のことを聞いても無駄だ」
「えっ?」
「その頃のあいつは、あいつであってあいつじゃなかったからな」
「……どういう意味ですか?」
「あいつが今のあいつに『戻った』のは、魔神族が封じられた後だからな」
白鬼の言葉に花音は知りたかったことを知るどころか謎が増えてしまった気がした。
4
数時間後、待っていた花音達の前で空間が歪む。
そこから出てきた封魔と刹那は、それぞれ気を失っている少女を抱き上げていた。
「……その二人がそうなのか?」
「ああ」
封魔に話し掛けながら、白鬼が刹那から少女を受け取る。
その少女の一人に花音は見覚えがあった。
4
数時間後、待っていた花音達の前で空間が歪む。
そこから出てきた封魔と刹那は、それぞれ気を失っている少女を抱き上げていた。
「……その二人がそうなのか?」
「ああ」
封魔に話し掛けながら、白鬼が刹那から少女を受け取る。
その少女の一人に花音は見覚えがあった。
「綾、ちゃん……」
「知り合いか?」
「うん。高校は違うけど、中学までは一緒だったの。……そっちの子は知らないけど……」
雷牙に答えながら封魔が抱いている方の少女を見て、もう一度、綾と呼んだ少女を見る。
「二人をどうするんですか?」
「……奴等に引き渡す。……この間、舞を逃がして少し疑われているからな。……悪いが、こいつらを助けることはできない」
「……その二人を奴等に渡したらどうなるんだ?」
「……さあな。ただ、魔神族にとっては自分達に協力する天奏と、自分達にとっても役に立つ光鈴様以外の神子は邪魔な存在の筈だ」
「……わざわざ見なくても、あまりいい予感はしないわね」
星夢が溜め息をつきつつ言う。
(綾ちゃん……)
花音は意識を失ったまま封魔に連れて行かれる二人を見送ることしかできなかった。

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