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第8幕 予兆

1
「……っ……。はあ、はあ……」
「麗香!どうしたの?」
隣で眠っていた麗香が飛び起きたことに気付いて、舞はゆっくりと身体を起こす。
電気を付けて様子を伺うと、彼女の顔は少し青ざめていた。
「何か顔色が悪いけど、気分でも悪くなった?」
舞が聞くと、それには首を横に振る。
「ううん。……ちょっと怖い夢を見ただけだから、気にしないで」
「そう?なら、いいんだけど……」
「本当に何でもないから。それより、起こしちゃってごめんね」
苦笑いしながらもそう続ける麗香に、舞は納得はしていなかったが、追求することもなかった。
次の日、朝早くに目が覚めた舞が外に出て街の中を散策していると、広場で知り合ったばかりの女性がぼんやりとベンチに座っているのが見えた。
「えっと、神蘭さん?」
この何日かで多くの人と出会った為、少し自信がなかったが、思い出して名を呼べば彼女は振り返った。
「……確か、舞だったか。花音の後輩だと言っていた……」
「はい。あなたも花音先輩のこと、知っているんですね?」
「ああ。一年前の戦いの時に知り合った。……自分に害を与えた者も受け入れ、信じ抜く強さを持った優しい子だよ」
「……でも、本当に間違ったことをする人にまで協力するとは思えません。
先輩が一緒にいるかもと思っていたあの封魔って人はこの街を襲い、麗香を狙ってきた。……あの封魔って人は、本当はどんな人なんですか?」
「……それを聞いてどうする?」
「私は裏切る前の彼を知りません。だから、少しでも情報を知りたい。その上で、判断します」
「そうか……」
呟くと、神蘭は少し寂しげな目をしながら話し始めた。
2
「封魔は私達が闘神になる前からの闘神で、一時は私達の上司でもあった。今は大切な仲間だ」
「それがどうして向こうにいるんですか?」
「……わからない。何も話してくれないからな。……最も元から何でも一人で抱え込んで解決しようとするところがあったのを、余計に他人に頼らせないようにしてしまった原因は私達なんだろうけど」
「何かあったんですか?」
「……ああ。前に花音には話したことがあるんだが……」
「あ、いた!」
神蘭が話し始めようとした時、そう声が聞こえ、麗香が走ってきた。
「もう……、起きたらいないから探していたんだよ。こんな所で何を話してたの?」
「えっ?……うん。ほら、この間襲撃してきた封魔って人、いたでしょ?その人のことを少し聞いてたの」
「ふぅん。……敵のことなんて気にしなくていいんじゃない?知っていいことなんてないよ。……敵は倒す。それだけでしょ?」
「ちょ、ちょっと、麗香!」
少し様子がおかしい気がして、麗香に声を掛ける。
「……敵は倒す……か」
まだ封魔のことを信じていたいのだろう神蘭の前であまり言わない方がいいだろうと止めに入ったのだが、しっかりと聞こえていたらしい神蘭が呟いたのにハッと彼女を見る。
「えっと……、神蘭さん……」
「……大丈夫。気にするな。……麗香の言ったことは間違いじゃない」
「えっ?私、何か言った?」
神蘭が呟くように言ったことに、麗香がきょとんとする。
「麗香、今言ったこと覚えてないの?」
「……うん。何か変なこと、言ってた?」
本当に記憶にないといった様子の麗香に、舞は戸惑ったように神蘭を見る。
彼女も舞と同じように、麗香のそんな様子に少し困惑しているように見えた。
3
「……成る程な」
屋敷に戻った後、飛影に麗香のことを話すと、彼はそう呟いた。
「何か思い当たることがあるの?」
「ああ。……少し影響が出始めたようだな」
「影響って何の?」
「……そうだな。そろそろ話しておくか?【麗玲】という名を覚えてるか?」
「それって、確か……」
花音に会う為にこの世界に来る前、最初に襲われた時のことを思い出す。
「その麗玲って人がどうかした?」
「麗玲は奴等……、魔神族の神子。そいつは、かつて神界の神子との戦いで命を落とした」
「……うん」
話を聞きつつ、何故か胸騒ぎがした。
「だが、奴は再び生を得た。……転生したんだ」
「!!……まさか、それが……」
呟いた舞に、飛影は頷く。
「そうだ。……麗玲の転生者は麗香。だから、魔神族は奴を狙う。……魔神族の神子は、覚醒すれば世界を滅ぼすこともできるからな」
ガタッ
飛影が言った時、部屋の外に誰かいたのか、物音が聞こえてくる。
それが気になり、舞がドアを開け周りを見回すと、僅かだが誰かが走り去っていくのが見えた。
「今の……!」
「……聞かれたな」
「っ……、追い掛けなきゃ!」
呟くように言い、舞は走り出した。

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