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第1幕 始まり


黒姫達魔族との戦いから一年後、神界。
「ねぇ、神蘭。見て、見て」
普段着ている軍服ではなく、花の刺繍が入ったワンピースを着た鈴麗が一周まわってみせる。
「あ、うん。いいんじゃない?」
「って、また適当に」
神蘭の答えに、鈴麗が溜め息をつく。
すると、今度はそんな彼女の背後から態とらしい溜め息が二人分聞こえてきて、鈴麗は振り返った。
その先には、少し疲れたような龍牙と白夜の姿がある。
「何?」
「何って、まだ終わらないのか?」
「これじゃあ、何もないのに軍に詰めてる封魔とどっちが楽なのかわからないな」
「いいじゃない。ね、神蘭。神蘭?」
「えっ?何だ?」
鈴麗に話しかけられ、我に返る。
「もうさっきから何を見てるの?」
「ああ。・・・・・・あれだ」
答えて神蘭は店の一角を指す。
そこには色は異なるが、デザインは同じペンダントがあった。
「ペンダント?それも丁度五色ある」
「ああ。なんか気になってな」
「ふぅん。いいんじゃない?よし、買っちゃおう。皆でお揃いにしよう!」
「ちょっと待て!お揃いって、まさか・・・・・・」
良いことを思いついたというように声を上げた鈴麗に、龍牙が慌てて口を挟んでくる。
そんな彼の様子に、神蘭と鈴麗は顔を見合わせると、龍牙と白夜に止められる前に店員に声をかけた。
「すみません。これを五つください」
「はい。ちょうどだね、まいど」
金を支払い、店員からペンダントを受け取る。
受け取ったペンダントには、其々紅、蒼、翠、黄、紫の石がはめ込まれていて近くで見ると、どれもが綺麗に透きとおっていた。
「綺麗だね。私、黄色にしよう」
言いながら、鈴麗は翠、紫のペンダントも取っていく。
「で、龍牙が翠、白夜が紫」
手渡されるペンダントを二人が渋い顔をしながらも受け取る。
「ったく、何でいきなり」
「ふふ、いいじゃないか。改めて、繋がりをもってみても」
「私はいいと思うよ。別々で行動していても、自分一人じゃないって思えるしね」
そう言って、ニコリと笑う鈴麗に龍牙も白夜も諦めたように溜め息をつく。
「神蘭は紅でしょ。封魔にも後で渡そうね」
「ああ」
鈴麗の言葉に頷いた時、通信機が鳴った。
「はい」
『神蘭?他の三人は、一緒!?』
出ると、聖羅の慌てた声がする。
『非番の所悪いけど、すぐに戻ってきて!非常事態よ!』
そう一方的に言って、通信は切れてしまう。
「どうした?」
「何かあったの?」
「わからない。ただ軍に戻ってこいって」
返しながらも、違和感と胸騒ぎを感じる。
いつもなら、何かあった時に連絡してくるのは待機状態の闘神であり、今回の場合は封魔からの筈なのだ。
だから、彼からではなかったことに不安を覚えた。
2
「神蘭!龍牙!鈴麗!白夜!」
軍の本部に戻ってくると、通信と同じように慌てて、聖羅が走ってくる。
「聖羅様!一体何があったんですか!?」
「大変よ!軍本部で保管していた封印具が盗まれたの!」
「封印具が!?」
「ええ。それも魔神達を封じているものが」
その言葉に神蘭達は顔を見合わせる。
「よりにもよって、魔神のかよ?」
「もう、封魔は何してたの?」
「それはっ・・・・・・」
聖羅が何故か言いにくそうにする。
その時、幾つかの足音が聞こえてきた。
それに視線を向けると、総長と副総長、そして大剣を背負った青年がいた。
「戻ってきたか。丁度いい。お前達も白羅と行け」
「行くって」
「決まってるだろ。封印具を取り戻し、それを盗んだ奴を捕らえるためだ」
「・・・・・・その犯人は?」
「・・・・・・封魔よ」
「えっ?」
聖羅の声に、神蘭は彼女を見る。
「封印具を盗んだのは封魔。そしてその後、姿を消したの」
「何言って、そんなことある訳・・・・・・」
「でも、事実よ」
聖羅に言われて、唇を噛みしめる。
「とにかく、さっさと準備してこい。まさか、丸腰のまま行くつもりか?」
そう言う白羅の声に、神蘭達は無言でその場を立ち去った。
「どうするの?神蘭」
準備をするしたところで、鈴麗が聞いてくる。
「どうするも何も命令なら行くしかない」
「それはそうだけど・・・・・・封魔と戦うの?」
「それは・・・・・・」
「私は」
口を開いた神蘭を後の三人が見てくる。
「封魔から話を聞きたい。どうしてそんなことをしたのか。それで出来れば・・・・・・」
そこで口を噤む。
話で解決出来るものではないだろうが、武力で解決したくはなかった。
「・・・・・・私にはどうしても封魔が理由もなく、裏切るとは思えない。きっと何かあるんだと思う」
「・・・・・・そうだな。総長達がどんな人達か一番よく知ってるのもあいつだしな」
神蘭が言うと、白夜も頷いてそう言った。

「ここだ。ここにも封印具の一つが納められている」
白羅が言って、ある建物の前で立ち止まる。
すると、中から爆発音が聞こえてきた。
「行くぞ」
白羅が言って中に入っていき、神蘭達も後を追う。
中に入ると、そこを警備していたのだろう兵士達が呻き声を上げて転がっていた。
「おい、大丈夫か?」
「しっかりしろ!」
龍牙や白夜が声をかけるも、痛みに呻くばかりで反応はない。
その時、更に奥の方から戦闘音のようなものが聞こえてくる。
「「「「「!!」」」」」
それを聞いて神蘭達が奥まで来ると、ちょうど何人かの兵士達が吹き飛ばされたところで、倒れる兵士の中で一人よく知る人物が背を向けて立っていた。
「封魔!!」
呼び掛けた神蘭の声に振り向こうともせず、封魔は台座に置かれている封印具に手を伸ばす。
その時、横で床を蹴る音がして、神蘭が気付いた時には白羅が背中の大剣を抜き、此方に背を向けている封魔へと斬りかかっていた。
「・・・・・・っ!」
振り返った封魔が大剣を自身の剣で受け止める。
「「ぐっ!」」
力は互角なのか、どちらもかなりの力を込めているように見えても拮抗状態に陥っているようだった。
そんな状態だからか、白羅が加勢しろというように見てくる。
それでも徐々に武器の違いからか、それとも此処に来るまでに戦闘があるかないかの違いからか、封魔の方へ傾いていくのを見て、神蘭は光弾を放つ。
だが、それは封魔を攻撃する為ではなく、二人を離す為のものだった。
「封魔・・・・・・!」
うまく距離をとった二人を見て、再度封魔に声をかける。
だが、彼はそれに答えようとしないで、手首につけていた腕輪を外した。
「はあああっ!」
そのまま、再び斬りかかった白羅に向けてエネルギー弾を放ち、壁まで吹っ飛ばす。
「ぐあっ!」
そして、ずり落ちていく彼を確認して腕輪を付け直すと、封印具に向き直り、それを手に取った。
「これは貰っていくぞ」
「封魔!」
言って姿を消そうとした封魔に、神蘭は咄嗟に持っていたペンダントを投げつける。
「お前が何故こんな事をするのか私にはわからない。でも、信じてるから」
此方と話をしようとしない封魔に、それだけは伝えたくて叫ぶ。
その言葉と受け止めたペンダントを見て、封魔は僅かに目を見開いていたが、それでも何も言わず姿を消してしまった。
4
「そうか、逃したか」
本部に戻り報告を済ませると、総長はそう呟いて黙り込んだ。
「・・・・・・やむを得まい」
そのまま少し思案するように閉じていた目を開き、総長が口を開く。
「全軍に告げろ。早急に封魔を見つけ出し、奪われた封印具を取り戻せ。抵抗するようなら、裏切り者として抹殺しろ」
「はっ!」
「「「「「・・・・・・」」」」」
総長の言葉に白羅だけがすぐに反応を返す。
「・・・・・・どうした?お前達聞こえなかったのか?」
反応を返さない神蘭達に、総長がもう一度言う。
「封魔を抹殺しろ!彼奴のしたことは許されることではない。よいな?」
「「「「「御意」」」」」
苛ただしげな声に、神蘭達はそう返すしかなかった。
「・・・・・・すまないな」
「いえ・・・・・・」
報告の後、神蘭は一人、封魔の自室を訪れていた。
封魔の部下である星夜に立ち会ってもらい、何か手掛かりはないかと探しにきたのだが、そこは今まで訪れた時に比べても、片付けられていた。
「でも、俺は信じられません。あの人が軍を裏切るなんて」
「星夜・・・・・・。何か心当たりはないのか?何でもいいんだ。何か・・・・・・」
神蘭が言うと、星夜は少し考えてから首を横に振った。
「.・・・・・・わかりません。ただ」
「ただ?」
「少し様子がおかしかったのは確かです。特に星蓮様が訪ねてきてから」
星夜の口から出てきた名に、神蘭は目を見開く。
《星蓮》ーその人物は、神帝の側近の者だった。

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