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第六話 ふざけんなクソ女神 (2)

 
「何言ってるの? あなたに能力なんて付与してあげるわけがないじゃない?」


 もう俺は何がなんだかわからなかった。


「いやいやいや、そんなのおかしいだろ。テンプレというものを知らないんですか?」

 復調した俺は思わず強い口調でそう自称女神に問うた。が、

「あのね、能力付与には天界から回数が制限されてるの。あなたのような特に何か優れてるわけでもない人間にあげられるほど余ってないのよ?」
「は!?」

 という、なんともそんなふざけたことを言ってきた女神に俺は思わず腹を立ててテーブルに身を乗り出した。


「しょうがないじゃない。そういう決まりなんだから——」

 俺を宥めるようにしてきているがそんな正当な理由もなく納得できるわけがないだろ。
 チート能力を付与してくれないんだったら、こいつはなんのために俺をここへ呼んだ?
 牢屋から俺を出すため。じゃないよな? まさか俺に頼み事があるとか?

 それからしばらく、一通り理由を考えてみたが、俺の頭にはそれらしものが浮かばなかった。

「……じゃあなぜ俺をここに呼んだんだ?」
「そ、それは……。ほら! い、一応のために転生された理由とかを教えてあげようかなっと思ってね!!」

 当然浮かぶ疑問を尋ねてみると、彼女は少し考えるようにしたあと、まるで今思いついたことかのようにそう言う。
 どうもこの自称女神、何かを隠しているようだな。とその挙動不審な態度から俺は感じた。

「そもそも、なんで俺が転生されたタイミングで俺をここに呼ばなかったんだ?」
「っえ!? ……まぁいや私も忙しかったから〜」

 忙しかったから? どうやら女神も何か訳ありのようだし、きっと自分の都合でたまたま今呼び出されただけで、少なくとも牢屋から俺を出そうとして呼んだわけではないようだ。
 オドオドとしながら引きつって笑ってるあたり、やはりこいつは何か隠しているなと俺は確信する。

「おい女神。お前何か隠してるだろ?」

 俺がそういうと女神はビクリと体を震わせた。
 こいつは完全な黒だな。


「最初に言っておくが、お前の頼みなんて一切聞かないからな」
「えええ!?」
 さっきの俺よりも凄まじい勢いで身を乗り出す女神に、一応、その理由を言って納得させる。


「勝手に異世界に飛ばして、最低限のサポートをしてくれるわけでもないし能力もくれない。お前は俺の望むものを何一つくれてないんだ。そんな奴を手伝う義理がどこにある?」
「ふざけんじゃないわよ!! 牢屋から出してあげたじゃない?! それにあなたの現状も説明してあげたんだから! お茶だってあげたし!」

 必死に恩を売ってきているがどれも俺から頼んだことじゃないし俺の知ったこっちゃない。


「いいか。お前が俺の望む何かをくれるって言うなら取引してやるがな、俺の夢と希望を踏みにじったお前なんか俺からしたらどうでもいいんだぞ」

「…………」

 ようやく黙ったかと思えば今度はジト目で俺を見てきている。
 精神攻撃か? だがなそんな攻撃、常日頃から『気持ちわる。キモオタがこっち見てんじゃねーよ』と実の家族から言われてる俺からしたら屁でもないわ! ほんとちょろいなこいつ。

「あなた、山田栄一(やまだえいいち)とかいったわね。つまり栄一は神に逆らうと言うの?」
「な、何をするつもりだ?」

 あまりに弱かったので余裕の勝利を確信していたら、こいつが自称神であるということを忘れていた。
 こいつほど職権乱用という言葉が似合っているやつを俺は他に知らない。

(ふざけんじゃねーよ。そんな未知の力で俺を言いなりにしようってのか!? 最初から俺に選択肢なんてなかったんじゃねーか!
 いったいどんな酷いことを——)


「そうね……。全力で嫌がらせしてやるわ!!」

「……へ?」
 思わずアホみたいな声を漏らしちまったじゃないか……。こいつはもしかして——
 そう思って詳しく聞いてみる。

「ぐ、具体的には何をするんです?」
「あなたの読んでる小説やアニメのネタバレでもしてやるわ!」

『ふっふ〜ん。どうだ? 参ったか?』と言わんばかりにその豊満な胸を張ってドヤ顔をこっちに向けてきている女神を見て、なんだか残念なものを見てしまったとやるせない気持ちになってきた。
 俺の思った通り、こいつは正真正銘の馬鹿らしい。
 なんとか思考を誘導したら能力くらいもらえるんじゃないか?

「ところで女神様。なんで直接俺を殺すとかしないんです?」
「女神がそんなことできるわけないじゃない! この空間では人は死なないし、私はこの空間からは許可なく出られないのよ!」

(あぁそうか。つまりこいつには何もできないのか)

 そうとわかったら安心だ。
 ……でもこいつの能力を使えばやれるんじゃないか?

「例えば女神様が転生させた刺客を、俺が魔王だとかいうことにして送り込んだりはしないんですね」
「馬鹿ね。そんなことが天界にバレたら私はいったいどうなることか……。もうすでに危ういのに」

 何かトラウマでも思い出したのか自分の体を抱きしめてそういっている女神を見てなんだか本当に可哀想に思えてきた。
 まぁ俺に対する悪意はなさそうだし、話だけでも聞いてみるか

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