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二十話

 兄上は、神官課程で大変楽しくやっているようである。
 僕が幼い頃していたように、絵本など読んでもらっている。
 ふっしかし兄上がその程度のことで文字を覚えるはずが……と思っていたら、兄上がどや顔をして白紙の分厚い本を用意。辞書を作り始めた。
 そして、子供達はその辞書から兄上の言葉を覚え、会話している。
 兄上は少し落ち込んでいるようだ。
 しかも、子供達は兄上のことを兄上などと甘えた声で呼んでいる。
 兄上と意思疎通をし、にこやかに武術など教わっているさまはとても 微笑ましくない。
 いいさ、僕は兄上のゴースト、つまり兄上本体と仲良く旅をしているわけだし、と思っても、剣鬼や紅弓蝶や紅剣達がいるしな……。
 兄上、呼べば来てくれるけどさ。
 本気でいつも来てくれるので、皆驚いていた。
 弟の為なんだから当たり前と言ったら僕が引かれた。でも、うまくごまかせたようだ。
 兄上との旅は楽しい。
 兄上は色々な事を知っている。学ぶのは、大変な時もあるけど、やっぱり好きだ。
何故か三人が僕の弟子になっていたけど、連携も上手く取れるようになってきたと思う。
 
「雷竜扇、薬師の知識もあるんだな。応用課程クラスなんじゃないか?」

 紅剣達の言葉に、指を折って数える。

「薬師応用課程二年程度かな。執政、神官課程も基礎課程卒業」

「すげぇ……。なんでそんなに勉強するんだよ」

 剣鬼が呆れるが、僕は首を振った。

「軍人課程が余計なんだよ。僕は神官になりたかったんだ。でも、色々あってね」

「お兄さんが神官課程に行って、複雑?」

「いや、嬉しいよ。心からね」

 そんな会話を続けながら旅をする。
 一年後、軍人課程の二年目に入る。
 兄上のお陰で、実技は全く苦じゃなかった。筆記も直ぐに追いつけたし。
 何か、子供の一人が暗い。事情を聞くと、治癒術が消えそうらしい。
 それは、私の隣の席の子で、いつも一生懸命色々教えてくれた。医仙山(いせんざん)といい、今は没落したが、自分が神官として一族を立て直すのだと笑っていた子だ。
 ……。
 ――30ポイントを消費して、支援魔法の才能を与えます。
 翌日、子供が治癒術が復活したと転がるように駆けてきたので皆で祝った。
 少なくとも雨流夢酒語に使うよりは有意義な使い道である。
 誰に力を与えられたかはわかるらしく、医仙山は一層私に懐いてくれた。
 うむ、可愛い可愛い。子供は笑顔でいるべきである。
 医仙山は、ある日私に素敵なプレゼントを買ってくれるといった。
 なんでも、いいバイト先が見つかったのだそうだ。こんな幼い時から働くとは、たくましい。
 そして二日後、医仙山は幽霊となって私に抱きついてきた。
 うむ、素晴らしいプレゼント。
 後でゴーストと合流した時に食べよう。















 雷竜扇に泣かれた。









 医仙山よ、大切なクラスメイトである君を食べるなどとんでもない行いだ!
 何故わざわざ幽体をプレゼントなんて体当たりな真似を?

『殺されたの……。痛いよ……。苦しいよ……。お家帰りたい……』

 そうか、プレゼントではなかったのか。

「お家へ帰れば泣き止むか?」

 こっくりと医仙山と旅先の雷竜扇が頷いたので、私は、医仙山(霊)の手を引いて貴族の屋敷へと向かった。

「医仙山、返す!」

 ひたすら返してと門の前で言っていたら、中に案内された。
 若い貴族と、その側近が会話する。

【あれは侯爵家の出来損ないの息子か……】

【言葉を喋れないと聞きます。何があったとしても、告げられないでしょう】

【殺さぬよう気をつけろよ】

 おお、使うではないか、雨流夢酒語! とっておいて良かった、雨流夢酒語!
 だがしかし、嫌な空気を感じる!
 側近らしきものが鞭を取り出した。

『逃げて、兄上!』

 鞭が振り上げられた瞬間、側近の首を飛ばす。とりあえず、攻撃されたら攻撃してもいいよね。
 
「医仙山、返す」

 もう一度言うと、貴族が何か叫びだし、いっぱい現れたので武器を振り上げた奴から殺した。そして幽体を捕獲。自分のゴーストと合流したら食べよう。
 とにかく拉致があかないので、自分で探すことにする。
 医仙山がまとわりついて、とある部屋へ連れていく。
 何か、死体の山があった。
 









 いた! 医仙山!







 私は医仙山のボロボロの体に触れ、雷竜扇に治癒を頼む。私の体を通して、雷竜扇の治癒の力が発動し、傷は癒えていく。
 そこへ、貴族が追いかけてきた。

「竜虎呼! 癒えても食べない!」



『愚かなことを、傷を癒しても生き返りはしない、だって』

 おずおずと医仙山が訳してくれる。わ、分かっていたとも!
 ――50ポイントを消費して、反魂の術を行います。
 人の命って、意外と安い。
 生き返った医仙山の手を引いて帰る。何か貴族が喚いていてうるさかったので無視して黙って帰った。貴族相手だったので少しまずかったかもしれない。
 何か、あの貴族他国の貴族だったらしく、戦争になった。
 たかが無視した程度で戦争とは、人の心って小さい。

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