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十二話

雷竜扇の軍事訓練である!
 争いごとが苦手な雷竜扇が戦闘できるはずがない。今回は、本当の殺し合いなのだ。
 そして、ヒーラーを魔法剣士的道に蹴落としたのは私である。これさえ乗り切れば執政課程に行くので、今回だけ手助けしよう。
 それで私の罪はノーカウントである。終わりが良ければ全ていいのだ。
 それに、偉い文官なら、刺客に狙われたりもするだろう。私はそれを見越して戦う方法を学ばせたのだ。
 さて、雷竜扇に最高の装備を与えなくては。
 ひょろい雷竜扇でも装備でき! どんな衝撃も殺し! 尚且つ切れない。
 普通、防弾チョッキと防刃チョッキは別物である。戦いの面で、硬ければそれで良し!というのはありえない。だが、今回はあえて両立させる!
 そして、私が用意した装備を雷竜扇に着せて、戦闘訓練で馴染ませる。
 うむ、似合う。似合うぞ雷竜扇。戦場でも絶対に見逃さない事間違い無しだ。これは一生ものだな。孔雀もお前の前には霞むだろう。
 この素材の良さを全面に出した作りには、もう一つ意味がある。
 俺はこいつを殺せる強さというアピールだ。だから、貰ったというのは少しズルなのだが、まあ一回出るだけなら構うまい。
 おお、前方に剣鬼発見。

「雷竜扇、その服!?」

 案の定、一生懸命話しかけてくる。なんとか話題を探そうと必死なのだ。

「ミスターがくれた」

「ミスターって竜虎子か」

 剣鬼は必ず私の事を引き合いに出してくる。そうしないと雷竜扇が流すからだ。剣鬼は友達になりたいのだろう。だが、こういう事は自分で気づくものだ。私はにょにょして見守ろう。

「いつも言っているけど、僕にとっては大切な人だから、いつもありがとう」

「竜虎子家の竜虎呼か。養子になって、学校に来た」

「おい、そのへんにしとけ」

 お友達と仲良くしているようで私は嬉しい。
 私はにこにこしてその様子を見ていた。
 



 さて、狩りである! カラフルな鎧、突き出た牙の装飾、その様はこの上なく派手。まるで、身を隠す必要など存在しないとでも言うように。
 順調に強い獲物は逃亡し、雷竜扇は鹿を狩ることが出来た。
初めてで鹿を仕留めて解体する雷竜扇の才能に空恐ろしさを感じる。
私でも、初めてで解体は出来なかったであろう。
獲物を刺しただけで興奮し、メッタ刺しにしてしまったものだ。人によっては吐いて眠れなくなるものもいるらしいというのに。

「ぎゃあああああああああああ!!」

「ね、今、剣鬼じゃない!?」

「そうだね」

 紅弓蝶が心配そうに声の方をみる。

「見に行きましょう!」

「今行くけど、これ食べてからね。紅弓蝶、これは軍事訓練なんだ。全員受からないんだよ」

 なんと。この訓練、人数制限があったのか。そして腹が減っているのか、雷竜扇。雷竜扇が友人の安否より空腹を気にするなど初耳だが、よほど自分の仕留めた獲物を食べるのを楽しみにしていたのだろう。携帯食は持たせてあるし。
 だが、当然ながら紅弓蝶は納得出来ないらしい。私も当然だと思う。

「そんな……! 私、行ってくる」

「僕は僕、君は君だ」

「雷竜扇、だったら皆一緒に……」

「君の食事、皆が食べないであげるとでも思ってるの?」

 これだけ大きいんだから、女の子一人の分くらい残してやればいいのに。
 まあ、ここは変則的だが助けてやろう。それほど鹿を食べたいのであれば。

『助けてこようか?』

 雷竜扇は首を振る。何故だ。
 
「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 そこに、更に声が聞こえる。
 軍人課程の中では一番強い、紅弓蝶の兄、紅剣達(こうけんだつ)の声だ。

「行くよ」

 雷竜扇はすっと立って、声のした方に足早に向かった。
 なんという心変わり。紅剣達の事は、雷竜扇は嫌いかと思っていた。言い合いしている時もあったし。
 戸惑いがちにチームの皆が追ってくる。
 拓けた場所まで来ると、羽の生えたライオンが暴れていた。
 大怪我をした剣鬼がぐったりとしていて、紅剣達が必死に剣鬼に近づけまいと応戦している。弱いなー。
雷竜扇が小声で言ってくる。

「憑依を!」

『うん、戦い方を教えてやる』

「お願いします」

 そして、私は前に進み出る。

「雷竜扇! おいっ紅弓蝶を連れてきたのか!? さっさと逃げろ、馬鹿!」

 すっと腰を低くして、私は走る。
 軽くサクサクと切る。装備もいいし、この程度なら補助呪文の助けも雷術も必要ない。
 雷竜扇、さあ私を褒めるのだ!
 全てのライオンを倒して、紅剣達と剣鬼、転がった生徒達の体を診る。
 そして私は憑依を解いた。

『治癒を。傷が深い。薬では足りない』

「僕の分も食べていいですよ」

 ……!!? え!? 私は何か聞き間違えたか!? お前も魂を食べるのか!?
 

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