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六話

 あははははははははは。
 ぐちゅぐちゅと殺した魔物の口内を剣で抉る。
 牙を取り出して加工しよう。鎧のアクセントにいいだろう。
 ふと、周囲を見る。魔物の死体が山となっている。
 まだまだ、まだまだ、まだまだまだまだまだまだ狩りたいが、とりあえずはこれらを全て素材化してしまおう。
 皮を剥ぎ、骨と牙、爪と角を利用する。肉や内臓は薬になるものは加工し、それ以外で食べられるものは干し肉にして薬仙子へのおみやげとしよう。
 しかし、雷竜扇はいい弟である。あれの掛けた支援呪文のお陰で、身長の二倍ほどもある獲物を解体場に引っ張り込むことが出来た。
 だがしかし、この辺の魔物も飽きてきた。リアルなのはいいが、かろうじて歯ごたえがあるがスリルを味わえない程度の強さなのだ。強力な雷竜扇のサポートがあるのも大きいだろう。更に強力な魔物がいる場所へ、そろそろ移動するべき時なのかもしれない。
 
「竜虎呼やー」

「ああ、師よ。いつものように好きなものを持って行って構いませんからね。それと、そろそろ移動します。師よ、これ以上強い魔物のいる場所は貴方はついてこない方がいい。お別れです」

「竜虎呼よ……。そなたの顔が見れないのは寂しい。だが、親が子の道を邪魔してはならぬな……。たまには人里に降りて連絡をしてほしい」

「師よ、ありがとうございます。私は今、とても楽しい。この世界を初めて愛し、ずっとこの世界で生きていたいと思えるようになりました。そして、実際に生きていけるのは師の知識のおかげです」

「うむ、うむ。竜虎呼よ。お主の幸せを、心から祈っておるぞ」

「そうだ、師よ。また、色々と鉱物など欲しい物があるのですが」

「お主の願いなら、なんでも叶えてやろう」

 武具や鎧等の加工方法ならわかる。伊達にマゾいVRMMOを巡っていない。
 それに、ポイントで買い取れる物リストにも入っている。
ただ、物をコンパクトに持ち運び出来る魔術は欲しいな。
 今の所、雷竜扇に付与した召喚術をゲートがわりに使って色々自宅の物置に放り込んでいるが、雷竜扇が物置に行かないとならないし、何かと不便だ。
 仕留めた魔物の魂は私の物になるらしいので、魂を売っぱらってポイントに変えているのだが……。人間の魂であるゴーストは美味しい獲物であったらしく、魔物相手だとさほど溜まらない。高位の魔物だと、わりと美味しいのだが。
 滞在用のポイントも貯めないといけないし、大変だ。
 

ぐちゅっ




ああ、牙が取れた。早速加工しよう。








「薬仙子様、いつもありがとうございます」

 深々と店の者は頭を下げる。薬仙子に高級な薬を幾つも売ってもらったのだ。その上、手に入りにくい魔物の干し肉や様々なことに利用できる鱗や牙等を貰えば、頭も下がるというものだ。短期間で、この店の品揃えの良さは噂として広がり、客の増加を見せてきたとなれば尚更だ。

「うむ、よいよい。全てはわしの息子の手柄なのじゃから」

「しかし、薬仙子様のご子息は素晴らしいお方ですね。その武に比類するものはないでしょう」

「ほっほっほ! そうじゃろう、そうじゃろう。わしがあの子を見出したんじゃ。わしは知っておった。あの子は優秀じゃと。ちょっと……野生化するとは思わんかったがのう……」

 薬仙子は肩を落とす。

「ですが、あの方こそまさしく武神に愛されし子です」

「その子の為に、今回の代金を全て使って最高の鉱物をプレゼントしたいんじゃが、良いかね?」

「薬仙子様になら、貴族向けの品も惜しみなくお出ししましょう。それと、魔物相手にこんな事を言うのは初めてですし、自分でも信じがたいのですが……どうか、絶滅させないようにお気をつけ下さい。魔物の中には貴重な薬になるものもありますし、生態系が崩れます」

「……うむ。わしもなにかそんな気がしてきた。しかし、ああ見えて、獲物が見えたら意識せずに襲いかかるような子じゃからのう……」

 薬仙子は、苦笑いをするのだった。

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