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二話

 とりあえず、近場のゴーストと戦闘を繰り返す。
 最初は何も出来なかったが、ゴーストを取り込んで少しずつ成長し、だんだんと色々と出来るようになり、行動範囲も広がっていった。
 物理攻撃が出来るようになるまでの我慢だ。
 とりあえず、雷撃はできるようになった。
 百体くらいゴーストを倒した頃だろうか。
 システムから連絡が来た。
――取り込んだ魂をポイントに変換しますか? ポイントを計算すると1ポイントになります。
 ポイントを減らしたいのに、そんな事をするわけがない。いや、強化に使えばいいのだ。
 時間は二十年。あまりにも長いのだから、少しでも楽しめる要素がないと損だ。
 私は、黙々とポイントを貯めた。
 7ヶ月。体もだんだん動いてくるようになったので、そろそろ訓練を始めようかと思う。
 近場のゴーストも大体狩り尽くしたし。
といっても、調節をしないと、あまり小さい頃から鍛えては成長が阻害される。1回限りの試行錯誤なので、慎重にやっていくしか無いだろう
それと、赤子の発達の順序が全くわからないので、しばらく病弱なふりをしていよう。
 どうやら、私の名前は「リュウココ」らしい。長い。
 どうやら私への興味は次第に薄れ、だんだんと妊娠したらしい私の継母に興味が移動しつつあるようだ。
 まあ、貴族が魔物退治に行けると思わないので、そのあたりは都合がいい。が、病弱と思われるのはいいが、異様と思われるのは困る。
 20歳までに殺されたくはないのだ。ここはおそらく異世界。
 ポイントを使い切る以外で死ぬとどうなるかはわからないのだ。
 幸い、新たな赤子が生まれるのだし、その子を参考にさせてもらおう。
遅れた子とみなされるぐらいは構わない。
それと、さすがにそろそろクリアしておかねばならない問題がある。
……言葉が全く覚えられない。わかったのは自分の名前ぐらいだ。

私はよく知らないが、赤子とは喋るのではないか?
最近、私に喋らせようとする意志を感じる。
ポルターガイスト現象を起こせるようになったので、書庫から本を出して読もうとはしているのだが、難しい。中国語っぽいことまではわかる。ちなみに表意文字に近いようだ。それだけ聞くと、漢字は元は絵から始まったのだし、なんとなくわかりそうなものだが、中国語はとにかく漢字、というか文字の数が多く、発音も難しいのだ。生半可なことでは習得できない言語である。
 まあ、訓練と勉強を並行して行なっていこう。
 妹弟という、赤子の演技の教師役も出来る事だし。





という事で、三年が過ぎた。
弟は二歳である。らいりゅうせん、というらしい。やっぱり長い。
弟の絵本の読み聞かせの時間を把握して、観察する事とした。
やはり演技の仕方の参考になる。
しかし、不安となるのが読み聞かせ対象の本の難しさだ。
らいりゅうせんよ、なぜわかる……!!
こちらの子供の知能が高いのだろうか。らいりゅうせんが天才なのだろうか。
それとも、これが本物の子供の強さなのだろうか。
勉学にさほど興味はないといても、未発達児と演技する事を決めていても、本当の意味で二歳児に劣るのは避けたい。
識字率がどうかはわからないが、貴族で会話も文字もわからないのが普通かというと、とてもそうとは言いがたいのではないだろうか。
一つ収穫がある。らいりゅうせんが、私が見えるようなのだ。
他の者からは気配が消せるのに。しかしこれで、とても情けないが、師事ができるようになった。
その後も、絵本を与えられたらいりゅうせんに絵本の読み方をレクチャーしてもらっていると、怪しい人物が入ってきた。
 怪しいといっても、こちらの人間の文化がわからない為、わからないのだが。
 しかし、黒尽くめの着物で顔も覆っていて、刃物を持っているのは異世界の基準に当てはめて怪しいのかが問題だ。
 男がらいりゅうせんに向かって刃物を振り上げる。
 そこに至って、私は雷を落とし、黒焦げにした。
 きょとんとして、その後泣き叫ぶらいりゅうせん。
 バタバタと音がして、大騒ぎとなる。
 私はゴーストなので、当然、らいりゅうせんがやったことになった。
 非常に喜んでいて恐れる様子がないので、どうやら私が雷を使っても大丈夫そうだ。
 大変に驚いているようなのだが、どの程度まで加減をすればいいのだろうか。









「侯爵様、侯爵様、おめでとうございます! 刺客を撃退なさいました!」

 側近が、笑みをたたえて侯爵の部屋まで駆け込む。

「刺客が来たのか!? 何がおめでたいのだ!」

「雷竜扇様が、自力で撃退なさったのです! もちろん、内通していた警備兵は直ぐに発見・拷問して背後関係を洗っています」

 その言葉に、さすがに侯爵は驚いた。

「あやつはまだ二歳だぞ!?」

「命の危機に際し、強力な雷撃を放ったようでございます。侯爵様、これは……」

「うむ。そうか……。跡継ぎは雷竜扇とした方がいいだろうな。竜虎呼には荷が重い……。引き続き警備をせよ。かなり早いが、雷竜扇には今のうちから制御方法を教えねばならぬ。教育を開始する」

「侯爵様、ご決断を……! 竜虎呼様は……」

「うむ……。だが、殺すには忍びない。そういえば、爺が処分の噂を聞いて、子供がいるだけ幸せなのに、と憤慨していたな。秘密裏に爺に下げ渡すというのはどうだろうか」

「それはようございます。薬仙子(やくせんし)も喜びましょう」

 側近は、深々と礼をした。

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