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一話

 最悪だ。
 私は赤ん坊の状態でため息をついた。
 このゲーム、どうやら赤ん坊から始めるらしい。おまけに、とことんリアルだ。
 一応、システムじみた物はあるらしく、ある程度の調べはついた。
 考えを纏めるために、わかっていることを列挙しよう。
 一つ。このゲーム、二十年は出れないらしい。その分のポイントは保護されており、売買できないようになっている。
 二つ。この家は何か貴族っぽい家であるらしい。
 三つ。あまりにも世界がリアル過ぎる。
 四つ。ポイント購入の代金が魂である。自分のでも他者のでも構わないようだ。
 五つ。この体ではゲームが出来ない。
 一から四まではどうでもいいが、五つ目が大問題である。おのれ、悪魔め。
 私が1日でも魔物退治を我慢できると思ったら大きな間違いなのだからな。
 なんとかこの、ゴミなゲームからのログアウト方法を考えながら有用なポイントの使い道を漁っていると、幽体離脱とそれに関連する物が見つかった。ようするにゴースト系モンスターへの転職、という事だろう。とりあえず、これで戦闘能力は得られるだろう。確か、魔物もいると言っていた。
 これだな。ポイントも大きいから、ログアウトまでの時間を最大限短縮できる。
 ポイントを使い切らないと、現実世界には戻れないのだ。
 …………しかし、ポイント消費が大きすぎる。百ポイント超がザラだ。…………典型的な詐欺だな。
――30ポイントを消費して、スキル幽体離脱を手に入れます。
――50ポイントを消費して、幽体離脱した霊体をゴーストモンスターと化して戦闘能力を付与します。種族ボーナスとして、雷属性がつきます。
 そして、ふよふよと私は浮かび上がった。
 ……ゴースト化しても赤子のままか。このゲームは本当にゴミだな。
 とにかく、私は外へと向かい……屋敷を出たところで力尽きた。
 ちっ体力は赤子か。しばらく魔物を探しに行くのは無謀だな。
 幸い、近場の霊を喰らうことは可能なようなので、精力的にゴースト狩りを行うか。
 とりあえず、私は声を上げて食事を要求するのだった。








「侯爵様…………。竜虎呼様は、呪われているのでは……。怖いのです。泣かず、笑わず、ただ食事とおむつが汚れた時のみお声を上げるのです。まるで、呼びつけるみたいに」

 侍女が、不安げな顔をして問いかける。だがしかし、侯爵は取り合わなかった。

「何ということを言うのだ。あれは青蓮の忘れ形見だ。滅多なことを言うものではない。……いずれ、あの子は我が一族を率いる当主となろう。赤子の時からその自覚があるのなら結構ではないか」


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