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歴史の変わった日

「一児の親だ!」
「一児の親だな!」
「俺の血、亜人製造器だ!」
「亜人製造器だな! ……どういう事だ?」

 走るのをやめ、セルウィは問うてくる。

「さっきの、決め手は血みたいだった。俺似が出来たって事はそういう事だ」
「そうか……。つまり、怪我が出来ないのか!?」
「むしろ積極的に作るけどな、亜人。実験しないとだし」

 そうして、俺は腕を組んだ。

「多分、魔力炉自体の成功はすると思うんだ」
「何故?」
「過去への転移が……」

「聖女ラーグ! 貴方をお招きさせていただく!」

「ごめん、気のせいだった。失敗確定だわ」

 突如現われた翼の生えた者達がラーグとセルウィに襲いかかった。

「なっ!!」

 とりあえず、反転する。

「逃げるのか、ラーグ!」
「こいつらあの赤ちゃんの子孫確定だから、そっちを人質に取る!」
「させるか!」

 その時、更に乱入者が訪れる。

「ラーグ様!」
「セルウィ様に何を! 下郎!」

 セルウィの取り巻きと、俺のもと取り巻きだった。
 鳥達は撤退していく。

「ラーグ様、良かった」
「お前ら、なんで? もう俺は……」

 取り巻き達は、頭を下げる。

「申し訳ありません! 我らのことが負担となっていることを知って以来、影ながら控えさせていただいたのですが、困っていたようなので差し出がましい真似を致しました」
「お、おう……」

 深刻なストーカー被害が発覚した。
 ……感謝、すべきなんだろうな。これって。

 俺はセルウィに視線をやる。
 セルウィは視線を泳がせた。これは知っていたな。
 俺は、頭を掻いた。

「あー、ありがとう。俺を連れ戻すんでなければ、その、影に控えなくてもだな……。その。従者はいらんが、友達はいる!」

 俺が叫ぶと、取り巻き達は涙を流した。

「そういえば、ラーグ様。先程、一時の親と叫んでいましたが……」

 俺とセルウィは視線を交わした。
 一児が出来ちゃった時点で、隠すの無理だよな。これ。
 ベビー用品だって、何を買えばいいのかわからない。
 俺達は、すなおにげろりする事にしたのだった。


 そうして、午後には俺達は謁見の間にいた。ついでにワイトレイトもちょこんとセルウィに寄り添っている。


「まあ、まあまあまあ! シェスとラーグが、子供を作っただなんて! 不潔! 不潔よ!」
「むしろかつてなく清らかな仲だと思います。母上」
「血が異種族を産みだすだと……?」

 王妃と陛下は怪訝な顔をしており、俺とセルウィはただ静かに頭を下げる。
 
「本当の姿とやらを見せてみよ」

 マーゴ達が、後ろで姿を変えた気配がする。陛下は大きく目を見開き、王妃は口をパクパクさせる。

「それで、その腕の中の子が、2人の?」
「ぱーぱ!」

 パタパタと羽を動かし動く幼児を抱っこしたシェスを、王妃は手招く。
 王妃は、そっと幼児を抱き寄せた。

「名は?」
「まだ決めてません」
「ばーば!」
「まあ、まるで伝承にある天使のよう」

 王妃は、愛しげに羽の生えた子供をあやす。
 そして、王妃は目を瞑った。

「わかりました。貴方とシェスの結婚を認めましょう! 貴方、婚約者のベリーには十分な保証を」
「お待ちくだされ!」

 思わず変な口調になった。

「それはおかしい!」
「何がおかしいのです。ディスジラートを私生児にするつもりですか」
「シェスと愛し合ってません!」
「王族貴族の結婚に愛などいりません!」
「お、おう……おう? いや、でもおかしい! シェス、シェスも何か言って!」
「あ、ああ、いや。子供がいて国益になればなんでも良いんじゃないか?」
「生粋の王族がここに! えっでも血って実の子と認めて良いのか!?」
「似てるし。要するに、ラーグがセルウィに世界統一させたって事だろう。セルウィの嫁にするのは国益的にまずいと思うんだ」
「それもおかしいって言いたいけど、思いの外正論だった!?」

 俺は、自分が何の力も無いなんて謙遜するつもりはない。
 前世では博士号を取っていたし、今世でも前世の記憶の価値やスペックの良さは否定するつもりはない。

「で、でもセルウィ。どうしたら良いと思う?」

 俺はセルウィに問う。

「対処法はあるが……」
「じゃあ、すぐそれをしてくれ!」
「良いんだな?」

 セルウィは俺が頷くのを確認すると、セルウィは俺の手を引っ張り、魔法で自分の腕と俺の腕を傷つけた。
 血が、ワイトレイトにしたたり、新たなる鳥人の子供が産まれる。

「出来ちゃったのでラーグの愛人になります!」
「なんと!」
「できちゃったなら仕方がありません」
「ということで、ラーグが帝国に来られないなら僕が行こう。そもそも皇帝になるかもしれなかったと知られて生きて帰れるはずもないしな」
「え、えええええええええええええええええ!!??」

 そうして、俺が戸惑ううちにとんとん拍子に話が纏まり、正妃に愛人がいるのはまずいということになった。結果、シェスが正妃、セルウィが側室になった。ただし、実権はシェスと。

「いや、おかしいだろう!? 俺に王様なんて勤まるわけ……!」
「難しいことは私が全てしよう」
「ラーグは研究だけ考えていれば良いし、今まで通りサポートするよ」

 それでも、とセルウィは言う。

「どうしてもというのなら、他の方法でも良いが」
「じゃあそれ! ……ちょっと待って。聞いてからにする」
「史実通り、聖女になれば良いんじゃないか? 聖女は勤まったわけだし、血から人を生み出すんだから十分神話だろう」
「それ以外で!」
「過去でも改変するか?」
「それもなぁ……」

 んー。

「研究だけで良いのか?」

 セルウィとシェスは頷く。
 えーと。
 聖女改め、王様になりました!
 多分、国民が大混乱だな……。納得するの、貴族と婚約者さん?

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