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三話

 ついうっかり一日オーバーした。クレイドルに連行され、待っていたセルウィにめちゃくちゃ怒られた。もう一度言う。
 セルウィにめちゃくちゃ怒られた。
 後、クレイドルがちょくちょく様子を見に来てくれる。
 抜け殻じゃなくなった俺はセルウィによく話しかけられるようになり、セルウィやクレイドルの周囲の者とも徐々に打ち解けていった。
 しかし、家事は思ったよりも大変だ。なにせ、洗濯が大変なのだ。
 後、毎日お風呂に入れない。しかし、大変なのはこの二点くらいだ。
 料理については、毎日が新しい発見なので楽しんでいるが、一日中頭か体を動かしているので疲労が凄い。直に慣れるんだろうが……。
 
「紅茶が美味い……。やはり平民と貴族じゃ食料一つとってもだいぶ違うな」
「そうは言っても、後悔はしていないんだろう? 毎日が凄く幸せそうだ。……周囲に一線を引いているのは相変わらずだが」
「あ、わかるか?」
「決定的に信頼してないのが丸わかりだ。というか、踏み込もうとすると人間不信だからとストレートに言って遠ざけるらしいじゃないか。話すようになったのは進歩だがな。不足していることはないか?」
「まだ一般人生活始めたばかりだからなぁ。不足といっても、よくわからないな。ああ、クレイドルはちょくちょく様子見に来てくれるから助かってる。ちょっと様子見に来過ぎな所もあるけど」
「クレイドルとは仲良くなれそうか?」
「んー……俺って人を見る目がないんだよ。だから、人を信じるのは怖い。俺を助けて、貴族に復活させて、取り入ろうなんて奴も近づいてくるだろうしな。セルウィの事も信じてるわけじゃないし」
「へぇ?」
「セルウィなら裏切られても仕方ない、とは思ってるけどな」

 面白そうに目を光らせたセルウィは、翻って少し目をさまよわせた。
 そうしていると、新緑の瞳が年相応に見える。
 いつもは頭良さそうでなんか年上に見えるからな。

「それは……怒るべきか礼を言うべきかわからないな。しかし、そこまで人が嫌いか? 過去、何があった?」
「何がっていうか……なんていうかな。価値観を共有できる奴に会ったことがない。決定的に合わない。俺にとっては皆亜人みたいなものなんだよ。理解出来ないし、するつもりもない。色々あったって言えばあったな。たわいのない当たり前な事ばかりだけど、俺にとっては溶けこむのが無理だと思うほどには決定的だった。その意味じゃ平民も貴族も変わりはないけど、平民だったらある程度好き勝手しても許されるからな。まだ生きやすい方法を模索できる。とりあえず、商人でもやって金を稼ぎつつ、研究しながら生きようかなと思ってるんだが、売り物が問題なんだよな。鍛冶とか細工とか考えたが、弟子入りにはどう考えても遅すぎるしなぁ……」
「お前、俺の従者になるんじゃないのか?」
「え?」
「え?」

 しばし見つめ合い、セルウィは俺の口を引っ張った。

「いひゃい、いひゃいセルウィ」

 ひりひりとする自分の頬を撫でて、俺はセルウィを見上げる。

「セルウィ、よく考えろ。自分の国で貴族生活に馴染めなかった俺が、隣国の貴族の中で生きて行けるわけ無いだろ」
「愛の力でなんとかしろ。そういえば、研究って?」
「あー。俺、小さい頃から魔法に憧れてきたんだ。けど、教わるのはくだらない攻撃呪文ばっかだろ? 色々試してみたいんだよ。魔法にはもっと色々な可能性があると思う。それに、農業とか、色々調べてみたいことはあるんだ。平民だと、大規模な実験はできないだろうが……そもそも貴族だと勝手な行動は認められないからな」
「そんな事は無いと思うが。つまり研究費用を出せばいいんだな」
「いいのか?」
「意地だ。ラーグを理解したい。ラーグの見るものを見てみたい」
「ダーリン!」
「ハニー!」

 俺とセルウィは抱き合って、ついで笑った。
 となると、学生卒業までに成果を出して俺が使えるってところを見せなきゃな。
 というわけで、一年かけて図書館を制覇した。
 かなり頑張った。
二年目。
 一ヶ月目。俺はひたすら本を書いて過ごした。
 二ヶ月目。俺はひたすら料理をして過ごした。
 三ヶ月目。俺はひたすら地面に落書きして過ごした。
 四ヶ月目。俺はひたすら縫い物をして過ごした。
 五ヶ月目。俺はひたすら工作をして過ごした
 六ヶ月目。俺はひたすら踊りと歌を練習して過ごした。
 そして! 七ヶ月目のその日! 俺、始まった!

「ラーグ! 落ち着け! 落ち着いて下がれ!」
「俺は……鳥! 今太陽に向かって羽ばたく時!」

 わかる。俺の金髪が太陽の光を反射してめっちゃ輝いているのがわかる。
 風が気持ちよく吹き付ける。これは羽ばたく絶好の機会。

「聞け! くっ誰かシーツを持って来い! ラーグを受け止めるんだ!」
「とうっ」

 鳥のコスプレをした俺は、羽を広げて屋上からダイブする。
 魔力を感じ取れる人間ならば、不可視の大きな翼が広がったのがわかるだろう。
 鳥のコスプレはイメージの補助兼衝撃干渉装置にすぎない。

「馬鹿っラーグ!」

 セルウィが駆け寄ろうとして周囲に取り押さえられる。顔色が遠くからみてわかるほど真っ白になっていた。
 俺はゆっくりと滑空しながら落下していき、鳥を模して大きく膨らんだ着ぐるみの腹の辺りが地面にザザーッと接触・滑り、パタリと翼が落ちて止まった。
 そう、ちょうどセルウィの足下だ。
 しばし、沈黙が落ちる。

「ぴよ! ぴょぴょぴょぴょぴょ!」

 とりあえず鳥の鳴き声を真似てごまかしてみる。びくっとセルウィ達が震えた。
 よっこらせと俺は起き上がる。
 さすがに鳥のように舞い上がれはしなかったが、墜落死しなかったのだから成功といっていいだろう。
 まずは落ちる速度を緩め、飛距離を伸ばす事から始めていけばいい。
 空を飛ぶというのはわかりやすい成果だと思うんだ。
 卒業までにはこの飛空呪文を完成させる予定である。

「あー、腹の布が破けてる。繕い直さないとダメだな。今日は実験終わり。おつかれー」






 思えばセルウィに殴られたのは初めてかもしれん。
 腰だめの力の入った一発を貰いました。そして泣かれた。
 最初は毎回説教を受けたが、毎日一回放課後ダイブしていたら風物詩になりました。
 セルウィは根負けして何も言わなくなったが、ダイビングの後に地面に横たわる俺を踏むようになった。わりと痛い。
 これなんだが、最初は順調な滑り出しかと思ったが、なかなか進まなかった。
 攻撃呪文に関しての研究は進んでいるのだが、他があまりにも進んでいなさすぎるのだ。そもそも、攻撃呪文以外の魔術自体が進んでいないので、割りと手探りである。
 一回失敗して怪我した時、セルウィにめちゃくちゃ怒られてしまった。
 八ヶ月目。今回は複数人必要なので、セルウィも巻き込んで見ることにする。

「えっとだな。俺がカモーンカモーンと言ったら、一人がこの魔法陣の欠けた場所から入る。で、俺の真似をしてくれ。それを繰り返し、準備が整ったら俺が魔法陣を閉じる。そうしたら、踊りながら俺の唱える呪文を繰り返してくれ。後は空気を呼んで行動して欲しい」
「妙な魔法陣だな……まあ、屋上からダイブするよりいいが。攻撃呪文ではないんだな?」
「そうそう。まあ、やってみようぜ」

 俺は校庭に割りと大きめの魔法陣を描いていた。精霊なり神なり悪魔なり魔獣なりに訴えかける術のごった煮である。そもそもそれらの違い、俺にはよく理解できなかったし。
 俺は魔法陣の欠けた部分から入り、くるくると魔法陣の内周を回りながら魔法陣を起動していく。
 そして、術を唱え、セルウィに向かって両手で手招きした。

「カモンカモーン」

 セルウィが入り、優雅な所作で踊りながら魔法陣を起動し、取り巻きに手招きする。

「「カモンカモーン」」

 やがて取り巻きも全て魔法陣に入る。それでも俺は魔法陣を閉じない。
 いつのまにやら集まっていた見物人が、え、俺らも参加しろと? と困惑した時。
 俺達がカモンカモーンと更に言ったその時。
 虚空から現れた小さな犬が魔法陣に駆け入ってきた。
 何事も無く踊りを続行する俺。

「カモンカモーン」

 犬も尻尾をふりふり招く。可愛い。
 すると明らかに風っぽい半透明な人が魔法陣に入ってくる。
 次は火。
 おおおおおお、大成功ではないか! 周囲の人間は非常に驚いている。
 とりあえずこんなもんだな。そして俺が踊りながら魔法陣を閉じようとした時、俺はいきなり足元を雷撃に吹っ飛ばされた。
 いきなりの事に皆ビビるが、俺は踊りを続行する。ただし、閉じる踊りではなく招く踊りだ。
 そして雷っぽい人が入ってくる。
 さて、魔法陣を閉じ……ようとすると、足元が凍る。また妨害か!?
 そんなこんなで、魔法陣の中がきつくなってきた頃ようやく閉じることが出来た。
 ぐ、制御が大変になるのは俺なんですけど。
 まあ、神聖っぽいのも邪悪っぽいのも魔獣っぽいのも精霊っぽいのも来ているのでいいか。
 くるくると舞いながら呪文を続行。皆に繰り返してもらう。
 ノリはコンサートです。
 そして俺は呪文の制御に必死です。
 ふわり、と魔法陣の中で踊る者の衣装が変わっていく。
 俺の術の制御で、犬含めて全員に厨二な服を着せてます。
 幻の応用です。何かのアニメでみた、実体を伴った魔力の服みたいなのを作ってみたいが、いかんせんそんな呪文は存在しないので、手探りである。
 その代わり、弱い攻撃呪文を応用して、周囲を火の粉や雷などで飾る。
 いつのまにか、音楽が鳴っていた。魔法陣の外で人外っぽい人が楽器を鳴らしてくれているのである。
 俺は特に気合を入れて、七色の羽根を生やしてみた。
 しばらく踊って、魔力を色鮮やかな光として解放する。
 終わりの合図として、俺がお疲れ様―と言いながらすごい勢いで拍手すると、皆拍手した。
 やー。すげー疲れた。けど楽しかった!
 俺の前に、何人か立つ。

『召喚は叶いました。それで、貴方の目的は何ですか?』
「え。一緒に踊ろうって。術の実験目的もあったけど」
『望みはないのですか?』

 俺は少し考える。呪文が非常に少ないので、語彙を増やしたい。すげー増やしたい。実際、今回の術もかなり大変だったのである。ただ一緒に踊ろうぜってだけの術なのに。俺はもっと術を楽しみたい。そんな欲望が溢れ出した。けれど俺は首を振る。チートはもう貰っているし、元貴族だし、資金もあるし、恵まれ過ぎだよな。

「今願ったら、皆で集まって楽しい気分に水差すからやめとく。ありがとな。また遊ぼう」
『望みは遊びに使える語彙ですか。よろしい』

 ちょ。
 俺の頭によってたかって人外が手を突っ込む。凄い絵面だ、これ。
 溢れる情報量に、俺は正気を失った。








「……はっ!? ここは一体!?」
「セルウィ様のお部屋です。延々と意味不明の歌を歌っていたから心配しました。もう一ヶ月になります。セルウィ様を呼んでまいります」
「あー。ごめんな、クレイドル。また説教かぁ……」

 俺は落ち込んだが、プリプリしたクレイドルは慰めてくれなかった。
 九ヶ月目は探求を休養させられた。セルウィに泣いて怒られれば仕方あるまい。
 嘘だ。なんか、神官やら魔術師やらに押しかけられ、質問と非難の嵐にさらされて缶詰だったのだ。
 なんか、もっと良い物を貰えということなのだが。そんなの俺の勝手じゃん。
 魔法陣と使っていた呪文についても問い詰められた。うるせーお前ら人の努力をかっさらうんじゃねーよ。
 という事で、俺は鬱モードに入って閉じこもった。
 十ヶ月目は欝月間である。
 抜け殻のような状態で、鳥の雛のようにセルウィが口に運ぶ食事を食べる。

 十一ヶ月目。
 セルウィが全力で庇ってくれたこともあり、ようやく人の波が引いた。
 現金な者で、人の波が引いた途端、俺は元気を取り戻した。
 俺はやるぜ俺はやるぜ!
 という事で、鳥の着ぐるみ再出陣。
 屋上から飛び立った俺は、見事他の棟の壁に激突し、テラスに落ちた。セルウィにめちゃくちゃ怒られた。

 十二ヶ月目。
 新たに得た語彙を駆使して、予め登録した気障な言葉とポーズで周囲に花が散る術を獲得。
 登録した言葉は「イエスロリータノータッチ」「変態紳士ラーグ、只今参上」「美しい……」とか。
 セルウィの笑いを取ることに成功したので大成功である。


 三年生になった。
 てってってー。とうっ
 今回は新入生の頭上を飛んで見ることにする。
 入学式の為に集まってくる生徒を見据え、屋上から飛び降りる。
 生徒達から上がる声。
 今日こそ、舞い上がりたいものだ。
 二、三度高度を若干あげることに成功したが、やはり落下は止められない。
 俺はゆっくりと滑空し、別棟を華麗にカーブで避けて、腹からずしゃっと着地した。もちろん、いつもの鳥の着ぐるみである。

「ぴよっ! ぴょぴょぴょぴょぴょ!」

 意味もなくバタバタしてみる。
 眼の前に、ドン引きした我が国の王子、シェスジラートがいた。護衛の腰が引けている辺り、我が国の警備体制は大丈夫なのだろうか。
 護衛は王子を立てにしてはいけない。これ、豆知識な。
 まず、変な鳥に驚いた顔。そして、それが俺と知って驚愕した顔。そして、困惑した眼差しが突き刺さる。
 俺は立ち上がり、右翼を持ち上げた。

「楽しい学園生活を! イエスロリータ、ノータッチ!」

 魔術で周囲に薔薇をバラマキ、そして翼を広げてダッシュ……しようとした所を、捕まえられる。

「自然は大切に! 鳥も大切に!」

 バタバタと羽ばたくが、シェスは意外と力がある。全く逃げられない。

「たわけ。随分楽しい学園生活を送っているようではないか。噂は聞いている。公爵が心配していたぞ」

 炎のような激しい赤の髪に、深紅の瞳。性格は生真面目で苛烈で、俺はシェスが苦手だった。

「楽しんでいるんだからいいではないですか」
「ふざけるな。私も混ぜろ」

 ……はい?
 
「後ほど教室に行くからな」

 そういってシェスは入学式会場に向かってく。えええええ。あんな性格だっけ?
 奴も猫被っていたのかな。

 まあいい。

 俺はよちよちと式場へと向かった。遠目に、何か驚愕した様子の数人が見えた。
 式が終わり、教室に戻ると、言葉通りシェスとその取り巻きがやってきた。
 他にも数人、一年生がやってくる。
 
「では、まず飛び方を教えろ!」
「いいけど。一ヶ月準備に必要だ」
「絶対だぞ!」

 シェスが去っていくのを見送る。
 それを見ていた数人が、勢い込んで俺に話しかけたりペタペタ触ってきたりした。

「貴方がラーグ様ですか!? それで、貴方がセルウィ様!?」
「男!? 翼は!? 偽装している様子もないが、初の天使族って話は」
「馬鹿な、私の祖先はこの二人では!?」
「花が開くような美貌っていうか、花を魔術で出しているだけだったとは……! 歴史とは興味深い!」

 なんだなんだ?
 俺が若干引いていると、全員orzした後に作戦会議とか言って去っていった。
 なんなんだろう、あれ。
 
「んー……最近、私達のことを調べている者がいるらしい。目立っているからしょうがないと思っていたが……調べるか?」

 セルウィが少し難しい顔で問う。
 俺はしばらく考えた後、首を振った。

「今はいいや。けど、困ったことが起きたら頼む」

 それより、王子でも出来る飛空呪文を考えないとな。
 一ヶ月ほど忙しくしていたが、休み時間にセルウィに聞いた所、あいつらは図書室に入り浸ったり色々俺の事について調べたりしているそうだ。
 
「やだ、ストーカー? 怖い、ダーリン……」
「そうだな、全員孤児院出の上に、成績が凄まじくいいそうだ。飛び級もあると言っていた。……少し用心したほうがいいかもしれない」
「マジで? 俺なんて価値ないじゃねーか」
「……もしかして、得やすいと思っているのかもしれない。ラーグが公爵家の血筋なのは変わらないし、今のお前は守護する者がないからな。気をつけたほうがいい」

 やだなぁ。
 そんな事を考えながら鳥スーツを持ってセルウィと屋上で待つ。
 何故か王子とその取り巻きだけでなく、奴らも来た。

「んじゃあ、空を飛ぶ呪文を教えます。後、落ちても大丈夫なように守護石を作ったので身に付けてくれ」
「守護石?」
「んー。俺が作ったお守り。恐らく世界初!」

 えっへんと胸を張る。
 いまいち反応が芳しくなく、皆首をかしげているが、孤児院出という彼らは違った。

「これは……随分と原始的で稚拙な」
「当たり前でしょう、これが世界初なのですから。しかし、最初の開発者はユースティかと言われていましたが……」

 やだ……。こいつら未来人みたいじゃない……。まさかね。
 タイムトリップとか、早々あるわけがない。
 術を教えると、彼らはそれで本当に飛べるのかとグダグダ言ってきた。
 ええい、お前らもやれ、やるのだ!
 というわけで俺は無理やり着せてみせる。
 着ぐるみは複数用意していたんだよな。
 
「さあ、いざ飛ばん! ていやっ」

 俺は率先して飛んでみる。
 地面に着陸した俺は、立ち上がって身振りで呼ぶ。
 意外にも、孤児院出の奴らはすぐに屋上から飛び降りた。
 ……え?
 その内の一人が優雅に旋回して降りる。俺は思わずぽかんとそれを見つめた。
 他の三人も、綺麗に着地した。
 三人が何か慌てて駆け寄る。

「ちょ、空気読んでくださいよ! さっきのラーグ様の飛行を見ていなかったんですか」
「あんな無様な真似が出来るか、それに多少は技術のテコ入れをした方が……」
「試行錯誤から産まれる技術もあるのです、神の忠告を忘れましたか!」

 なんか取り込み中だな。でも、一般人ではない感じだ。

「俺の事なら気にするな。俺はもう貴族ではないし、自分よりうまく飛べたからって責めたりしない。コツを教えて欲しい」

 俺は着ぐるみを着てえっちらおっちら奴らに話しかける。
 その時、シェスが飛んだ。取り巻き共が慌てている。
 上手く飛べずに落ちるが、守護石が発動してシェスジラートを優しく下ろす。
 その後、セルウィが怒りのオーラを発しながら来た。

「なんで私が怒っているかわかるかい、ハニー」
「さっぱりだな、ダーリン」
「あんな手段があるなら最初から使え!」

 セルウィに叱られて、俺はごまかすために羽ばたいた。
 駄目だった。

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