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6話

『姉』

家に近づいてきて空を見上げると夕方と昼のどちらにも区別されない儚さに思わず溜息が出るような風流人ではない私達は海の話で盛り上がっていた。決行が決定した後、「海も楽しみだけど、巷で有名な恋愛映画にも行こうよ」「うんっ」といった勢いで次なる予定もできた。

恋愛映画と耳にしたときの縁《えん》は何やら思案しているような表情だったが、それはプラス思考かつポジティブシンキングで受け取っていいのかな。妄想していたのかな。「お姉ちゃん、髪についてるよ……ポップコーン」と柔和な物腰で軽やかに取って自然のままに口に運ぶ縁、とか期待しちゃっていいんですかね。縁も妄想するなら私も妄想返しだ。映画のフィクションより私達のフィクションなリアルの方が栄華だぞ。ええがなええがな。私のハートを奪って良いではないか良いではないか、縁がな。のーもあ、縁が泥棒。逮捕しちゃうぞっ。逮捕してください。逮捕だけじゃなく、他にも色々してください。もっと、もっとください。……まったく、乗りに乗った心情ってのは理解の国境を土足で踏み越えてくれるね。誰だこんな破茶滅茶な思考回路をしているのは。私だ。
私のように、束縛されない、束縛されたい誇りの精神を持ちたまえ。きっとサイズで表記するところの、中、のアルファベット版になれる。ド真ん中。……流石に冗談です。多分。

帰路を終えて我が家に着くと、相変わらず出発した朝と変わらない建物のままだった。日常の象徴だ。朝縁とるんるんお出かけして、昼は窓際でちょっと小粋なランチ、夕方はてくてく二人の愛の巣に帰る。夜は安らかに幸せな行為、つまり睡眠をする。そんな毎日がここ最近の日課なわけだ。去年までは縁は小学生だったから朝と夕方の毎日は削られて、昼の日課は皆無だった。だから今は恵まれているのかもしれない。そもそも縁が生きているだけで恵まれているか。縁に感謝。

住居のドアを開ける時は、今から縁と何しても自由なんだという解放感をひしひしと意識する。家という境目は外からの熱視線なのか何なのか知らないけどお構い無しに送ってくるうっすら真っ白な目、を遮ることができる。物理的にもそうでなくとも安全第一な造りだな、家ってのは。と心中で建築業界に携わってみつつ、家に入る。

ちなみに縁と何しても自由、とは言ったけど縁に何してもいい自由、とは趣きが違うよねと思った。でも、そうしてもいいのか?試してみるか。

ちょうど先に玄関で靴を脱ぎ終わった縁に、こちょこちょ攻撃を仕掛けてみる。こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ。

「びゃっ!?んあっ!あ、んっ……っ、あっ……お、おねぇ……ちゃんっ?」

油断しているのが丸分かりなほど背筋をびくっと震わせて反応する縁。
その縁の身体の既知の柔らかさと、私の新鮮な試みが作用して、重なって。

あ、やばいこれ。止まんないやつだ。

「お、お姉ちゃんっ……んぁっ!……ど、どう、してっ……んっ」

突然の襲来に疑問を隠せない縁。しかし私は更なるくすぐりで問いかけさえ隠してみせる。攻撃の手をやめないっ。

「……んっ……あっ……はぁっ……はっ、んんっ……………」

くすぐりくすぐりくすぐり。どう?どう?うんうん、可愛いね。可愛い声だね。しかも、艶美。もっと、出して、いいんだよ?ほら、ほら。こんなところは、どうかな?さわさわ。

「ひゃ、ふぃあぁぁぁっ……はっ、はははははははっ!!!」

違うポイントを攻めたら今度は艶やかさから面白さに変わった。体の笑いのツボを押したのかな。ぐりぐり。
大好きな縁に触れて触れて触れて。触れまくって、楽しい。これが自由だ。自由、最高。

その後も約三十分間縁を弄っていた。あんなところやそんなところまで私のテクニシャンを及ばせていた。おかげで縁は悪くない表情でぐったりしている。それで思い知ったことがある。

何が大事かって言ったら、冗談と本気の境目だよね。

つい本気で湧いてきちゃった。

そして夜に続く。

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